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自分を信じる、可能性、か

 次々と試していくがなかなかいいのが見つからない。というか後半ただのネタとしか思えない。 


 天王寺は疲れ果て俯いてしまう。両膝に手を当て腰を大きく曲げる。


「そろそろ日も暮れてきたか」


 放課後から始めたのもあるが空は夕暮れの赤味が増し周囲も薄暗くなってきた。


「今日はここまでにするか」

「はい、すみません……」


 そう簡単には見つからない。会長にお手伝いしてもらったのに申し訳ない。


「謝ることないさ」


 すると会長は正面に立ち、その場で膝を突いた。顔を上げるとちょうど同じ位置に会長の顔をがある。


「天王寺のアークはすごい」

「でも」

「諦めるには早いだろ?」


 なかなか合った武器は見つからない。戦い方も分からない。みんなで考えても、武器を試してみても。


 だけど、神崎会長は微笑んだ。


「人には無限の可能性がある。天王寺。特にお前はそうだ。そのアークは五次元に干渉出来るランクA。それが秘めている可能性を諦めるな。今は信じて、答えを見つけていけばいいさ」


 そう言うと会長は立ち上がった。見上げる彼は夕日に照らされて、明るかった。


「帰るか」

「……はい!」


 それで、生徒会二日目は終わっていった。


 着替えが終わり帰路につく。帰る時は辺りは暗く街灯の光が夜道を照らす。天王寺は歩きながらずっと同じことを考えていた。


「自分を信じる、可能性、か」


 自分のアークはすごいんだろうと漠然と思っていた。実際には高すぎる次元操作に扱いが分からず手間取っている。


 そんな自分に会長が言ってくれた言葉。可能性があること、それを諦めず信じ続けること。

 普段の振る舞いはいい加減なのに、不思議とその言葉は勇気をくれた。


「うん」


 答えの見つからない暗い道。街灯の下、彼女は小さく笑うのだった。


*

 次の契機が来たの早かった。翌日、あれも違うこれも違うと考えながら登校し正門に着いた時だ。


「入れてくださいよ!」

「ああ? 誰に言ってるんだ?」


 正門の端、一人の男子生徒が二人に絡まれている。それは天王寺にも絡んできたあの二人組だった。


 また懲りずにやってる。あの時の悔しさが蘇る。でも不安や恐怖も同じくらいあった。自分にどうにか出来るのか?


 そんな弱気な自分を即座に叱責し奮い立たせる。自分はなんのために生徒会になった? こういう時、今度は守る番だからじゃなかったのか?


「そ、そこの二人組!」


 すくみそうになる脚を無理やり動かして、天王寺は二人の前に立った。


 不良の二人と男子生徒が私を見る。


「なんだお前は」

「私は生徒会です、そこの彼を離しなさい!」


 生徒会らしく、ビシッと思い描いた姿で言う。


「生徒会だ?」

「おい、こいつ以前のやつじゃないか?」

「そうだ、あの時の!」


 二人は近づきその間に男子は逃げていった。


「お前が生徒会? 気に入らねえ、お前なんかの言うことなんか聞くかよ。俺はランクD! 俺が従うのはこの力だけだ! グレイト・アーム!」


 不良の一人、アークで強化した右腕が天王寺を掴もうとする。掴まれたら逃げられない。ただでさえ体格が違うのにアークで強化されてるなんて絶対に無理。


 向けられる暴力に緊張し、体が固まる。


 けれど。


 遠ざけてきた恐怖に足を踏み入れる。


(私は、これから逃げちゃ駄目なんだ!)

「なんだ?」


 掴もうと伸ばした手が空を切る。目の前にいた女子は消えて後ろに下がっている。そのことに彼らは困惑しているが、彼女に待つつもりはない。


「私はランクA+、パラレル・シフトを発動!」

「ランクA+だと!?」


 アークを発動した天王寺は別の並行世界へと移動する。それは不思議な感覚だ。


 まるで万華鏡のトンネルを走る感覚。空間はいくつもの次元がパッチワークのように連なり場面を映している。それはどれも正門の様子ではあるが中身は微妙に違う。その中から平穏な次元に入り、その次元に現れる。直後またアークを発動、並行世界の万華鏡から元の次元を選び入っていく。この時どの場所に出るかは選べる。そのため今度は彼らの背後に現れた。


 彼らから見れば天王寺のやってることは空間転移だ。だが正確には並行世界を経由して元の次元に戻っているだけ。その時現れる場所を好きに選んでいる。言わば二度手間の空間転移。正直手間を考えると瑠衣より大変だ。


 でも自分にはこれしかない、これをやるしかないんだ。


「次元の操作? こいつ、ほんとにランクAだっていうのかよ」

「馬鹿な。俺がお前より下なわけあるか!」


 ランクの差は一目瞭然のはずだが認められない。高すぎる自尊心が傲慢となり冷静な判断が出来ていない。


 彼の攻撃をディメンション・アークで躱していく。力が強い、それも右腕だけの攻撃だ。回避は問題ない。しかし逃げてばかりでは勝てず平行線だ。


 何度も躱し、何度も別の並行世界を見る。万華鏡を眺めつつどうすればいいのかを思案する。


(え?)


 その中に意外なものを見た。


 ある次元で、もう一人の私は不良に向かって殴りかかったのだ。他の次元では反対方向から殴った私もいた。


 それはあまり効果のあるものではなく、勝ち目の薄い攻撃だ。でも、その私は私よりも勇敢だった。


 こんな私もいるんだ。今の自分は逃げ回っているだけなのに、さらに恐怖に踏み込み立ち向かう私が並行世界にはいる。


『可能性を諦めるな。自分を信じろ』


 彼女たちの姿に会長の言葉が重なる。


 自分も彼女たちのようになれるだろうか。あんな果敢に挑む私に。


 そこで思いつく。彼女は私だ。私とは違うけど、それでも私なのだ。


 いける、かもしれない! 閃きが確信となって背中を押す。


 天王寺は元の次元に戻り不良たちの前に立つ。


「くそ、ちょこまかと!」


 消えたり現れたりする彼女にイラついている。


「いつまでも逃げてんじゃねえ!」

「そうですね」

「?」


 天王寺のセリフに相手の顔が不思議そうに歪む。


 彼女はもう逃げない。それはあんな安い挑発に乗ったからじゃない。


 果敢な幾人の私に、勇気を貰ったからだ。 


「はあああ!」


 走る。自分よりも大きい男の子(ひと)に目掛け。

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