よし! 天王寺、今から君の武器適性検査を行う!
「だからこそ生徒会は責任が重く、なにより危険なの。人気がないっていうのもそれが理由。未来ちゃんは、本当にいいの?」
生徒会は危険な仕事だ。アークを持った荒くれ共、そういうのを相手にしなくちゃならない。この学園の存亡すら私たちに掛かっていると言ってもいい。
「大丈夫です」
時雨の顔を真っ直ぐと見つめ言い切った。危険なのは分かってる。それを知った上で入会を希望したのだ。
「むしろ、ますます気持ちは強くなりました。私が経験したこと。あれはたまたまじゃなかった、他の人も体験している。ならそれは止めなくちゃいけない。ここは特別な場所だけど、それは力がすべてって意味じゃない。異能を持っていたって人は社会的な生活が出来るんだって、私たちアークホルダーが証明しないと!」
決意の表明が部屋に響く。時雨は微笑んでくれた。
「そう。覚悟は十分ってわけね」
「はい!」
「ごめんなさい、水を差しちゃったわね」
「いえ」
心配してくれるのはこの人が本当に優しいからだ、その気持ちは嬉しい。その心配を蹴ってまでここにいるからには天王寺は頑張らないといけない。
「私はおすすめしないけどね」
「真田さん」
振り返る。真田は了解を組み歓迎とは思えない表情で目を瞑っていた。
「覚悟だけで務まるものじゃない。てか、戦えるの?」
その目が見る。彼女の質問にはいと即答したい。
だけど、言われてみればどうすればいいんだろう? ランクがA+ということで漠然と役に立てるだろうと思っていた。けれどもしかしたらそうじゃないかもしれない。
「会長はどう思ってんのよ、そこんとこ」
花音がゲームをしながら聞く。この人は相変わらずゲームばっかりしている。
「そうだな」
聞かれた会長は両足をガニ股のように広げるとスッと立ち上がる。カップも傾いていない。それを手に取り机に置いた。うまい! それが出来るのになんで最初からしなかったのか。
「天王寺のアークはランクA+のパラレル・シフトだ。+が意味する通りディメンション・エスケープも出来る。これは瑠衣と同じだな。この時点で回避能力に長けていることが分かる。なのでそこはいいんだが、問題はどうやって攻撃するかだな」
会長から始まった講義に自然と身が引き締まる。異能の先達からの言葉だ、集中して聞かないと。
「逃げてるだけじゃ戦いには勝てないからな」
「ちなみに瑠衣さんの攻撃方法とは?」
自分と同じA+の瑠衣がどうアークを使っているのかは興味がある。そこにヒントがあるかもしれない。
「私はこれですね」
そう言うと瑠衣はナイフを空間転移で取り出し見せてくれた。
「相手の攻撃はディメンション・エスケープで避け、ナイフが攻撃手段です。これなら近接戦も出来ますし投げればそのまま遠距離攻撃になります。投げたナイフもアークで手元に呼び戻せば使い回せます」
「すごい!」
オールレンジ攻撃、というやつだろうか。それに回避能力もあるなんて。
「どうだ天王寺、参考になりそうか?」
「そう、ですね……」
考える。彼女のアークとその運用方法は理にかなっている。特に使い回せるというのは無駄がなくて感動的ですらある。
でも、天王寺はちょっと違った。
「瑠衣さんの戦い方はとてもいいと思います。ですが、私のとは勝手が違うのでそのままとはいかないかと」
「というと?」
瑠衣も同じランクA+だが扱う次元が違う。だからかいくつか違うのだ。
「瑠衣さんは投げたナイフを使い回せますが私は出来ないんです。私は自身を別の並行世界に移動させることは出来ますがそれだけです。なのでナイフを投げてもそのナイフを回収しようとしたら私自身が直にその場に行って拾うしかないです」
「それは面倒ねえ」
奏音の言う通り、面倒だ。それなら捨てると割り切った方がいい。
「自身を並行世界に移動できる、ですか。これを活かした攻撃方法、私はパッと浮かびませんが皆さんはどうですか?」
「んー」
瑠衣の呼びかけにみんな考えている。でもなかなか名案は出てこない。
「もう銃でよくない?」
「俺と被ってる」
「知ったことじゃなくなーい?」
「せっかく人手があるのに被ってたら多様な状況に対応できないだろ、バラけてるのが好ましいんだよ」
「じゃあどうするつもりよ?」
「うーん」
神崎会長ですら頭を捻っている。もしかして役立たず?
「五次元は三次元より高位だけど、だからといって使いやすいとは限らないわけね」
「ごめんなさい……」
「ううん! そんなことないんだけど! ごめんなさい、そんなつもりじゃ!」
時雨の何気ないセリフに心が痛い。
「会長? どーかした?」
「いや……」
「?」
皆いろいろ考えてくれるがこれといったものは出てこない。自分のアークなのに、自分で出せないことに情けなさを感じる。
「ま! 考えて出てこないなら仕方がない。天王寺!」
「はい!」
いきなり大声で呼ばれびっくりする。
「物は試しだ、これからなにが合うかいろいろためすぞ!」
「今からですか?」
「今からだ!」
会長は席を立ち天王寺以上にやる気満々だ! 決断が早い。
それから二人は弓道場をお借りして武器を試すことになった。的の前に立ち天王寺と会長が並ぶ。会長の足元にはさっきかき集めた様々な武器が転がっている。
「よし! 天王寺、今から君の武器適性検査を行う! 気合い入れていけよ!」
「は、はい!」
なにもかも急だけどやるしかない! 頑張れ自分!
会長が武器を手渡してくる。
「まずはムチ! やってみろ!」
「えい!」
パチン!
「いったああ!」
振るったムチが後頭部に!
「次! 弓!」
弓を構え的を狙う。
「これなら銃でよくないですか!?」
「次! ハンマー!」
「重くて持てないですぅううう!」
「次! チェンソーとホッケーマスク!」
「これジャンル違くないですうう!?」
「次! 金属バット!」
「だから武器じゃないです!」
「次! 鍋のふた!」
「遊んでますよねえええ!」




