超絶最強の激辛カレーパンってなんだよ!?
だが他の人たちからすればそうではない。この距離は無理だ、術がなければそれまでだ。そこには反生徒会派の仲間たちもいるが一人ずつ信也が運んでいては時間がかかる。
「そうだ! 網だ! 網を持ってきてくれ!」
信也の言葉にそうかと最初の障害物を数人がかりで運んでくる。網の橋を台に固定していく。それから信也は網の反対側を風で運ぶと同じように端を台に固定した。これで橋の完成だ。これなら他のみんなも来れるはず。信也は一人目が橋を渡っているのを確認してから走り出した。
出来上がった橋に我先にと人が殺到する。だが大勢が乗ると橋が崩れてしまう。そのため順番待ちだ。アークを持たない者たちはこの橋を渡るしかない。
姫宮もそのうちの一人なのだがこのままでは時間がかかってしまう。自分の番が来るのは当分先だ。それを待っていては差が広がるばかり
「ぬあああああ! 待てなあああい!」
姫宮は勢いのまま列から出ていった。そのまま台の端に立って下を見てみるが、高い。数メートルの距離。落ちれば怪我は必至。向かい側を見るもそれもかなりの距離がある。
だが、人体でいけない距離じゃない!
踵を返し歩数を数える。そして再び振り返り身を構える。
「おおっと! ここでも姫宮選手、まさか自力で跳ぶつもりでしょうか!?」
「なにぃ!?」
司会の声に信也の足が止まる。あの距離は走り幅跳び超高校生級の距離だ、落ちればただでは済まないというのに。
「止めろ姫宮!」
叫ぶが時遅く姫宮は走り出した。
「うおおおお! 羽ばたくために私はここにいますう!」
「自動翻訳みたいな変なこと言ってる!」
姫宮は跳んだ。助走でつけた加速のまま、姫宮は跳んだ!
『おおおお!』
風を感じ、宙を走り、その足は向かいの台に着地した!
「よっしゃあああ!」
ガッツポーズ! 不可能と思われた距離を見事突破してみせた!
「姫宮選手すごい! 普通にすごい! このような言葉をこの場で言うことになるとは思いませんでした! アーク大運動会にあってある意味異様! 姫宮選手、とんでもない大ジャンプだ!」
「これがアイドルの力ぁああ!」
「すごいけど違う!」
姫宮は台に着地するなり観客にポーズを取ってアピールしている。真田もすごいが姫宮もすごい。アークが売りの運動会でアークを使わない姫宮にどんどん注目が集まっている。
姫宮は台を下り信也のところまで走る。これ見よがしな顔を近づけてきた。
「いぇーい、信也君見てた? ねえねえ、どうよどうよ?」
「うん、すごいよ。あとうざい」
それで二人は次に障害物へと走り出していった。
一流のアークを持つ少年と今までの努力で突破する少女。対照的ではあるが並んで走る様は不思議と似合っていた。
「次はなんだ?」
「なんだろうが突破してやるううう!」
信也たちの目の前に次の障害は見えてくる。
天井からいくつもの紐がぶら下がりその先になにかが括りつけられている。一目瞭然、単純明快。それは明らかにあれだった。
「パン食い競争だああ!」
「喜び過ぎじゃない?」
姫宮ご要望のパン食い競争だ。だがそこにはすでに深優がいる。普通の人ならジャンプしてようやく食べられる位置だが深優ならそれも問題ない。余裕でジャンプして口でくわえるだけだ。
「くそ、俺たちも急がないと」
「待て! それは私のパンだぞ!」
「全部食べる気!?」
「ふん、こんなものすぐに突破しすぐに先にいってやる」
真田は軽々と跳び目の前のパンを食わえる。紐から引きちぎり着地した。こちらに走ってくる信也と姫宮を見ながら得意げにそれ食べる。
「!? ぐあああああ!」
「なんだ、なにが起きたんだ!?」
が、直後その場にうずくまる。口を抑えながら悲鳴を上げだした!
「あああ! ここで快走していた真田選手にアクシデント! どうやら今食べたのは超絶最強の激辛カレーパンだ!」
「超絶最強の激辛カレーパンってなんだよ!?」
「説明しましょう! そこにぶら下がっているパンはただのパンではありません! アークアカデミアの料理クラブがすべての技術を集め作った世界で最も辛いカレーパンを目指したカレーパンなのです!」
「ぐうううう!」
どうやら真田が食べたカレーパンはそれだったらしく口を抑えながら聞き取れない声を漏らしている。あまりの辛さに体を振り回している。尋常じゃない素振りに医療班がタンカーともに駆けつけ真田はそのまま運ばれてしまった。
「真田選手残念! ここでリタイアです!」
「え……マジ?」
カレーパンを食べただけでタンカー案件。やばすぎる。
「いやいやいや、どんだけ辛いんだよ! てか大丈夫なのかよ健康面に多大な悪影響があるように見えるんだけど!?」
「頑張ってください!」
「ふざけんな!」
司会も取り合ってくれない。とんでもない事態だ。こんな病院行きになるようなパンを食べなければ進めないとは。
信也が立ち往生していると他の生徒がやってくる。真田の悲劇を知りながらも食べるしかない。恐る恐るもジャンプしてパンに食いついた。
「~~~~、ん? なんだ、全然辛くないじゃん!」
が、なんでもないのか平然とパンを食べ終え先に行っていく。
「そうか、全部じゃないのか」」
超絶最強の激辛カレーパンはランダムだ。運任せで食べていてはもし外れを引いた時のダメージが大きすぎる。とてもリスキーだ。
「ならば、パラレル・フュージョン!」
信也の姿がコック帽を被った料理人の姿になる。相手が料理ならそれに精通した自分で対抗するしかない。信也はジャンプしながら匂いを嗅いでいく。
「うーん」
「どう信也君?」
「正直よく分からん。ルーが生地に覆われてるのもあるがジャンプした一瞬だけで嗅ぎ分けろっていうのがな」
これで激辛カレーパンを嗅ぎ分けろというのは難易度が高い。だが諦めない。他のみんなが自爆覚悟で突撃し歓喜と阿鼻叫喚の中一人続けていく。
そんな信也を姫宮は見守っていたが時間がかかっている。待っているだけではダメだ。自分でも出来ることがないか。
「もしかしたら規則性があるのかもしれない……」
信也も姫宮も自分を信じ答えを導き出す。
「「これだ!」」
そしてパンに食いついた!
二人同時に着地する。揚げたパンのサクッとした食感とカレールーの旨味。おいしい。スパイスの辛味はあるが激辛なんてものじゃない。正解だ!
「よっしゃああ!」




