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まず真田深優から

「まず真田深優から。彼女のアーク、ブラック・スワンはランクDの足を強化するものだ。実際に戦ったことがあるから分かるが彼女の能力は強い。彼女に単純なスポーツで勝とうとするのはまず無理だろう。サッカーも然り、単純なマラソンや競争、団体競技に持ち込んでも足の強さは大きなアドヴァンテージだ。野球なら送りバントからの盗塁、野手ならほとんどの球を取られる。個人競技でも難しい気がするんだよな、重量挙げは足で持ち上げそうだし腕相撲に持ち込んでも足で押してきそうだ」

「じゃあどうするんだよ」

「彼女に勝つ方法はないの?」

「信也君」


 説明を聞けば聞くほど真田深優という女性を倒すのが如何に難しいか、それだけが伝わってくる。


「大丈夫、俺に案がある」


 不安がるみんなではあるが信也は自信を覗かせた。


「彼女が身体能力に優れているなら頭脳戦だ。競技科目にクイズ大会を入れよう」

「クイズ大会?」


 信也からの提案に少なくない困惑の声が零れた。


「で、でもだぜ? 運動会ってクイズ大会ってどうなんだ?」

「聞いたことないわね」

「前例はないかもしれないがそもそもアーク大運動会っていうのが史上初なんだろ? それに会長も言ってたがこの企画はアークの理解を深める目的もあると言っていた。その機会はすべての者に与えられたともな。クイズ大会で活かせる異能もある以上、これが駄目というのはおかしい。それに運動会といっても借り物競争とか単純な身体能力の比較じゃない競技だってあるんだ。クイズ大会だってありだろ。障害物競争なんだし。これも一種の障害だ」

「な、なるほど」

「柔軟な発想だわ」


 信也の説明に困惑しつつもみんな納得していく。運動会にクイズ大会。なかなかない組み合わせだが筋は通っている。無理矢理だろうが押し通せる。


「信也君よくそんなの思いつくね、普通の人には無理だよ。一般社会を真っ当に生きている人には思いつかない思考だよね」

「なんでお前の誉め言葉はいちいち蔑みを感じるんだよ」

「クイズ大会、いいかもしれないわね。特にランクD相手に対等な勝負ができるというのは有効だと思うわ」

「はい」


 信也は頷いた。


「これならブラック・スワンも関係ない。完全にフェアな勝負だ。有利には立てないが逆に不利になることもない」

「いいなそれ!」

「ええ、それなら勝てる気がするわ!」


 三木島は早速ホワイトボードに書き込んでいく。とりあえず一つだ。


「次は小田原奏音だ。彼女のアークはランクBドッペルシャドー。自分の影を操り、相手の影と接触させることで身動きを封じる異能だ」


 四天王の一人である小田原奏音。見た目こそ幼い彼女だがそのアークは生徒会幹部に相応しい強力さだ。


「これも団体競技、個人競技にもおいても有用だ。彼女が野球やサッカーに入ってきたらぞっとするぜ。重量挙げにしても相手はそもそも持ち上げられない、勝ち確だ。だが、彼女の能力は分かりやすく言えば相手の妨害、自分の強化じゃない。これは自分の力だけで達成不可能なことは不可能ということだ」

「あの、細かく説明してくれるのは有難いんだがもっと具体的かつ分かりやすく教えてくれないかな?」

「ああ、ごめん。俺の説明ってなんか回りくどいよな」


 分かりやすく説明しようとしているのだがそれが返って分かりづらい。悩ましいものだ。


「端的に、彼女じゃ突破できないものを用意してやればいい。俺の見立てが正しければ、パン食い競争だ」

「え?」

「え?」

「やったー! パン食い競争だ!」


 信也の一言は衝撃となって会議室を伝播し一人を除いて驚いている。


「神崎君、パン食い競争って、あのパン食い競争?」

「ええ。彼女は言っちゃ悪いが背が低い。普通の位置にぶら下げられたパンも食えないと思いますよ。背の低さはドッペルシャドーじゃカバーできない。仮に誰かの補助があってくわえられたとしても第二の案もある」

「第二の案?」

「プランBだー!」


 姫宮は相変わらずのウッキウキで反応している。


 信也の言う第二の案とはなんなのか。信也は自信満々に言い放つ。


「パンを激辛カレーパンにする」

「…………」

「…………」


 衝撃を受けた会議室が今度は凍り付く。


「激辛はあんまり好きじゃないな~」


 あれほどわくわくしていた姫宮も萎え萎えだ。


「一応聞くけど、激辛にする根拠は?」


 若干呆れた顔をしつつ三木島が聞いてくる。答えはだいたい察しがついているが念のためだ」


「ふ」


 それが分かっていないのは信也だけだ。未だ自信を信じて疑わない態度でずばり言う。


「彼女は子供っぽい。ならば味覚も子供仕様、辛いものは苦手なはず!」

「…………」

「…………」


 分かってた、そんな冷めたような空気が漂った。


「なんで信也君ってところどころでバカなの?」

「ああああ!? じゃあなんだったら良かったんだよッ」

「まあ、検討しておきましょう。それにパン食い競争の案自体はいいと思うわ」


 ホワイトボードに二つ目の案が追加される。

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