まるで皇帝、生きる厳格なランク至上主義者だ
それに三木島が食いつく。同級生だが知人でもあるのかずいぶん親しげだ。
「ちょっとちょっと、珍しいじゃない。今回はラッキーだったけど」
「たまたまよ、たまたま」
三木島のからかいに時雨はぷいとそっぽを向く。
そんな二人のやり取りを見ても気を緩めることなく、天王寺の緊迫した表情が空間を引き締める。
「時雨の言う通りだ」
席を立つ。立てかけてあった刀を取り机の前まで移動する。
それだけで弛緩しかけた雰囲気が緊張を取り戻す。彼女は他とは明らかに違う。まるで皇帝、生きる厳格なランク至上主義者だ。
「ここでお前を退かせることなど容易なことだ。だが、それで反対派は納得するのか? いいや、別の者が糾弾に来るだけだ」
「え!?」
時雨が驚きながら天王寺に振り返る。それに驚きみなが彼女を見た。
「? それは、まあ」
時雨の驚きは不可解だが天王寺の言っていることは尤だ。それは部長たちも同じ気持ちだった。
別に天王寺はなにも変なことは言っていない。ここで信也が敗れてもみんなが納得するはずもなく解決するとは言えない。
時雨が驚いたのはそこではなく、これから起きる先のことだ。
「未来、本気なの?」
「決めていたことだ」
「えっと、ちょっと待って。うん。大丈夫、なんとか出来そう」
「そうか」
「おい、ニュータイプ特有の一般人お断りな会話は止めてくれ。俺たちにも分かるように話してくれないか」
「そうだそうだ!」
「安心しなさい新入生、私だって分からないわよ」
当人たちでは成立しているようだが傍からでは意味が分からない。それは奏音や瑠衣も同じはずだが慣れているんだろう、信也ほどの困惑はない。
「今言った通り、ここでお前を倒したところで根本的な解決にはならん」
「だろうな」
勇み込んだもののこれで本当に解決するかというとそれは難しい。とはいえこれくらいしか手段がないのも事実。
「そこで私から提案だ。我々生徒会、そしてお前たち反対派全員で勝負をし、そこで優勝したものが決定権を持つ」
「全員で勝負?」
「そう」
「おいおい、全員って」
内容がまったく想像できない。そもそもそんなことが可能なのか。しかし天王寺は自信満々に、高々と言い放つ。
「ここに、アークアカデミア史上初、アーク大運動会開催を宣言する!」
天王寺は拳を持ち上げた。
「アークアカデミア史上初!?」
「ラーメン大食い大会!?」
「姫宮」
「はい」
信也は隣に並んできた姫宮に振り返らず言う。
「そんなことは言ってない」
「うん」
信也に注意され姫宮が下がる。それはそれとしてすごいことが飛び出してきた。
「大運動会って、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「簡単なことだ。ありたいていに言えば障害物競争を各ブロックに分かれ行い、進出者でまた競い合う。そうして優勝者を決める。ただし、これが普通の障害物競争と違う点はアークの使用が可能ということだ」
それは当然といえば当然のことだ、アークアカデミアの運動会となればそうなる。
「それじゃ便利なアークホルダーが有利じゃねえか!」
「当然だ。お前も理解しているではないか、誰かがランク至上主義と謳わなくても世界はランクで決まるようにできているとな」
「それはッ」
自分で言っておきながらそれはランク至上主義を暗に肯定する発言だ。それを指摘され反論する言葉が出てこない。
「そうではないと、ランクで決まるわけではないと言うのなら証明するんだな。このアーク大運動会で」
これはそのための勝負。アーク使用可能の場所で勝利してこそ証明できる。
ランクだけがすべてではないと。
「競技の内容は?」
「それはまだ未定だ。大運動会運営委員会を設置しそこで決定する」
「…………」
天王寺から提案された大運動会。とはいえ突然のことで信也にはどうすればいいか分からず、それに自分一人で決められるものではない。




