あんたの全力の友情、それはこんなものなのかよ?
「お前が本当にあいつの友達ならするのは服従じゃない、あいつにこんなやり方止めるべきだって説得することだろ! お前はあいつが嫌われ者のままでいいのか?」
「だから、私たちは」
「知らねえよ! お前たちがどんな理由でこんなことしてるかなんて。だけどこんな方法は間違ってる、他の方法だってあるはずだろ!」
信也の叫びが深優の心を殴りつける。彼女の足でも信也の言葉までは止められない。
「あいつも、お前も、間違ってるんだよ!」
深優の意識が一瞬固まった。それにより体も動きを止めわずかながら隙ができる。
「はあ!」
信也は前に一歩踏み出し片手で彼女を押す。重心がずれていた彼女は耐えられず後ろに引きずられた。
「これくらいの距離ッ」
離れたのはせいぜい数メートル。彼女なら一足で超えられる距離だ。むしろ飛び蹴りを放つため深優は大きく踏み込み信也に迫る。
「仲間なら、注意するのも役目だぜ」
その様をじっくり見ながら信也はつぶやく。
「ガンスリンガー」
アークを変更しガンスリンガーとなる。深優がここに到着し攻撃を加えるまで一秒もない。コンマの世界。
だがそれだけあれば十分だ。
信也の手はすでにガンホルダーに添えられている。それを抜く。撃つ。目にも止まらぬ早業、コンマ三秒のクイックショットは彼女の足に見事命中した。
「があ!」
彼女の軌道がずれ信也の横を通り過ぎていく。そのまま廊下にうつ伏せに倒れ信也は拳銃をくるくる回してからガンホルダーにしまった。
「かすり傷だ。その足じゃ満足に戦えないだろうがな」
「くそ!」
悔しそうに廊下を叩く。信也は振り返るがここからでは彼女の表情は見えず大きな影を作っていた。
「あんたの気持ちは理解した。だが、俺は先に行かせてもらうぜ」
視線を正面に向ける。彼女を倒したのなら長居は無用。
「あんたがあいつを一目見た時から気に入っているように、俺もあいつは一目見た時から気に入らないんでな」
「ふん」
信也は歩みを始めようとするが、そこで思い止まった。
「それともう一つ」
「?」
背中越しに彼女に声をかける。何かと深優は痛みに耐えながら顔を上げた。
「あんたは苦手だけど、嫌いじゃないよ。一目見たときからな」
「ふん!」
嫌そうにそっぽを向ける。そんな反応に信也は反対に口元が上がる。彼女は変わらない。その強情なところがいつしか気に入っている自分がいた。
「これがお前の全力か?」
そこで声を掛けられた。振り返るが彼女は俯いたままだ。
「ああ。全力っていうのは個人の力だけじゃない。みんなと協力して挑むことだってようやく分かった。俺からも言わせてもらうよ」
敵でありライバルのような彼女に親しみを込めて送る。
「あんたは全力なのか? あんたの全力の友情、それはこんなものなのかよ?」
「…………」
「サンキューな。感謝してる」
それを最後の言葉にして信也は走った。真田深優。彼女はいい人だ。だからこんなところで止まって欲しくない。彼女なら正しい道を選べると信じている。そう祈るように廊下を走っていった。
それでも戦いはまだこれからだ。信也は表情を引き締め廊下を走り続ける。
階段を上り次の階にたどり着く。ここもバリケードが張ってありまたも廊下を通っていかなくてはならない。
それで廊下に出るが、素通り出来るはずもなくそこには見知った二人が立ち塞がっていた。
「来ましたね、イレギュラー」
「しつこいわよ新入生、さっさと帰りなさい」
「二人か」
瑠衣と奏音。二人の四天王が信也の行手を阻んでいた。
「しつこいのはどっちだよ、何度も俺の邪魔してきやがって。ほら、お前らから言われた課題をやってきたぞ。そこ通せよ」
「ここは立ち入り禁止になっています。知っているはずですイレギュラー」
「押し入るなんて感心しないわよ」
「課題提出しに来たことのどこが悪いんだよ、どうせ俺に来て欲しくなかったから封鎖したんだろ? 相変わらず強引なやり方だな」
「あくまでも憶測でしょう」
「勝手に想像されて批難されても困っちゃうんだけどな〜」
「困ってるのはどう考えても俺だろう! ったく、水掛論だな」
「それならどうします?」
「決まってるだろ」




