落ちろイレギュラー! 私たちの邪魔をするな!
天王寺未来という人物が人に好かれるような性格とは思えない。なぜ彼女がそこまで大事にするのか率直に不思議だ。
「前にも言ったが生徒会には表向きとは別の真の理由がある。その目的があるから私たち生徒会の幹部は繋がっているんだ」
そういえばそんなことも言っていた。部外者には教えられないことのようだが。
「でもね、正直私は違う。そんなのあってもなくてもどっちでもよかった。クラス替えとかでたまにあるだろ? 一度も話したことないのに見ただけでなんか自分と気が合いそうだなって思うこと」
「あいつがそうだって? 言いにくいんだがあんたの感性もそうとう歪んでるぞ」
「ふ。なんでだろうね。私だってよくは分かっていないんだけどさ。でもね、これも言っただろ? あいつ、たまに寂しそうな顔をするんだ。自分を悪者にしてまで頑張って」
夕日のオレンジ色と濃い影が作り出す寂寥とした空間で、深優はかすかに笑ってみせる。
「私まで離れたら、あいつ一人じゃんか」
普段はきつい性格のくせに、天王寺のこととなると優しさを見せる。そのアンバランスは奇妙でもあり、信也には納得できるものじゃなかった。
「その優しさをどうして他の人にも分けられないんだ! あいつが一人になったってそんなの自業自得だろ、ランクが低いというだけで押さえつけられる人たちにはなんの非もないだろ!」
その優しさは不平等だ。贔屓しているとしか言えない。
「そうだね。否定はしない。でも、これが私の決めたことだから」
歪な優しさを自覚して、けれど深優は変わらない。
「お前のような存在が出てくるのは確かにあいつのせい。だからこそ私たちがいる」
そう言ってブーツの先でトントンと廊下を叩く。戦闘の構えを取り、冷たい視線を熱い瞳に変える。
「ここから先は行かせない、イレギュラー」
生徒会の四天王、真田深優が再び立ち塞がる!
「ランクD、ブラック・スワン!」
両足の強度を上げるアーク。それにより深優は跳躍し飛び蹴りをしかけてくる。すぐにソードマスターの剣で受け止める。
「室内じゃ長物は振り回せない、この間合いなら私のブラック・スワンが有利!」
「ち」
深優の言う通り。廊下では剣は振り回せない。壁や天井に当たってしまう。出来て防御や突きだけだ。その隙に深優は蹴りの連打で押していく。まるで足技がジャブのようだ。
信也は深優の上段蹴りを屈んで躱しアークを変更する。
「ガンスリンガー!」
青のジャケット姿に変身するなりスタングレネードを取り出す。ピンを外し深優の足元に置く。そしてすぐに耳を塞ぎ反対側に飛び込んだ。これで深優の身動きを止められるはず。
「同じ手を二度もくらうか!」
が、深優は足元に置かれたスタングレネードを足首で掴むと窓ガラスに向け放り捨てる。ガラスを割り外へと捨てられたスタングレネードは発光するも威力は減退しており効いていない。
「エレメント・ロード!」
すぐに起き上がり風を巻き起こす。近づかれたらまずい。この敵に接近戦を許しては駄目だ。
「蹴り飛ばす!」
しかし押し返すはずの風はそれ以上の勢いの蹴りによってかき消されてしまう。
「ファイア!」
「無駄!」
次に炎を出すも同じ。アスファルトすら踏み抜く深優の脚力に打ち消される。
「くらえ!」
「ソードマスター!」
再び接近戦となる。深優の足技はソードマスターのそれと対等だ。足は鋼鉄のように固く風のように速い。剣の取り回りが悪いこの場所では反撃しようにも思うように剣が扱えず押されていく。
「落ちろイレギュラー! 私たちの邪魔をするな!」
「お前たちが邪魔をしなければな!」
剣技と足技のぶつかり合い、それとは思えぬ轟音が夕日の廊下に何度も響く。
「これほどの力を持ちながらやることが直感で選んだ女子の言いなりか?」
「だったらなんだ? 私がそれでいいと思ってるんだ、私の勝手だ!」
「それが間違ってるんだよ!」
深優の放つ上段蹴り。それを刀身で受け止め信也は叫ぶ。
「お前が本当にあいつのことを心配してやれる友人だっていうのなら、どうしてあいつを一人にさせるようなことをするんだよ!」
彼女の足を押し返す。この勝負は負けられない。自由を手に入れるため、そして彼女を否定するためにも。
「こんなことしてあいつに友達ができるわけないだろ! ずっと一人だぞ? お前それでいいのかよ!」
深優の表情が歪む。




