295.救出劇
話を総合すると、こういうことらしかった。
今朝、例の四人組は狩りに出かけ、傷付いた魔狼の仔を見かけて、自分たちだけで狩ろうとした。
魔狼は、平原に生息する魔物の中でも強敵である。
“魔獣”ではなく、歴とした“魔物”なのである。
ワタリと違って、冒険者ギルドのパンフレットにも大きく載っている。
普段の彼らには、決して手出しできないレベルの魔物──というか、手出ししてはならないと教えられているはず──なのだけれど、欲が出たのだろうとのことだった。
魔狼は積極的に縄張りから出ることはないけれど、遭遇すれば魔法やスキルを使った攻撃を仕掛けてくる。
中堅の冒険者でも、複数人での対処を推奨されている、警戒すべき魔物だ。
それだけに、狩ることができればヒーローになれる。
魔狼とはいえ幼体であるし、傷付いて弱っている。
自分たちでも倒せるだろうと考えてしまったのは、無理からぬことと言えた。
そして、魔狼の仔に止めを刺そうとした四人は、獲物を横取りしたと見做されて、追いついたワタリの群に襲われた。
最初に魔狼の仔を襲ったのはワタリであり、魔狼の仔はワタリから逃げようとして、人里近くまで来てしまったらしいのだ。
見回りからの報告を総合した結果、そう結論付けられた。
村では“掃除当番”以外にも“見回り当番”や“見張り当番”などがあり、普段から魔狼をはじめとする危険な魔物の動向には注意を払っている。
見回りに出ていた当番の者が、魔狼の群が何かを探して移動するところを目撃していた。
行き先を突き止めようとしたところ、ワタリの群に追われて逃げる、少年らと魔狼の仔を発見したそうだ。
魔狼の群は、行方不明になった仲間を探して移動していたのだ。
そうこうするうちに、傷付き弱った魔狼の仔が、スキルを使って仲間を呼んだ。
スキルや魔法を使えるのは、魔狼が魔物であることの証である。だからこそ強敵に分類されているのだ。
仔狼に呼ばれた魔狼の群は、瞬く間に少年らを見つけ、幼い仲間を傷付けた仇敵として、猛撃を加えた。
魔狼にとっては魔物であるワタリも、獣人族も、仔を傷付けたものは等しく敵である。
少年らは恐慌状態に陥り、逃げ出した。
こともあろうに、真っ直ぐ、村に向かって──。
自分たちが知っている、一番の安全地帯に逃げ込もうと考えたのだ。
とんでもない悪手である。
当然ながら、魔狼の仔を横取りされて怒ったワタリは少年らを追いかけ、魔狼の群はワタリと少年らを追いかけ、村へ向かって逃げ帰る少年らを追った魔物たちは、同じく村を目指して爆走することになったのだ。
多少なりとも頭の働く者なら、そのまま村へ逃げ帰ることなど考えはしない。
魔物に追われた状態で村に帰れば、集めた魔物を村に押し付けることになるからだ。
魔物に村の場所を教えて、わざわざ襲撃させるようなものである。
寸前で気づいて、見回り当番と傭兵団員たちで押し返し、どうにか魔物の進行方向を変えさせたところだ、と副団長のケリーさんは言った。
どうりで魔物の姿が見えないはずである。
「広域殲滅魔法でも使わない限り、あの数を全て倒すのは無理だ。が、そんな大規模魔法を使ったら、ガキどもも巻き込まれて全員死ぬ」
そもそも獣人族の中には、攻撃魔法を使える者などいないのだ。
そんな経緯もあって、リオンとクロスが相談を受けていたのだろう。
「四人のお父さんたちは、助けに行こうとしたのでは……?」
怪我をして戻ってきているということは、魔物と交戦したのだろう。
それならば、見捨てられないという言葉も意味が通る。
「ああ、あいつらな。見回りの連中から話を聞いて飛び出して行ったんだが──」
どうもこうもない、とケリーさん。
「あの子らにして、あの親ありという感じだ。俺たちが苦労して追い返した魔物の群に突っ込んで行って、途中でワタリに突かれて逃げ帰ってきたところだ」
いったん魔物を追い返し、小休止できるかと思ったところで、あのバカ親父どもをワタリから救出するという、しょーもない仕事をやらされる羽目になった、とケリーさんは愚痴った。
「どうせ見捨てるなら、好きにさせてやりゃあよかったのによ。親子共々さァ、」
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