表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の子Ⅱ  作者: ありり
番外編
47/50

番外編 シャイン12歳③

神殿の空気は張り詰めていた。


シャインの周囲に渦巻く感情。


怒り。

悲しみ。

憎しみ。


それらがまるで嵐のように神殿の空気を震わせている。


感情の神はその様子を静かに見ていた。


そして心の中で思う。


――まさか、ここまでとは。


――まさか、こんなにも早く対立するとは。


シャインはまだ十二歳。


だがその力は、すでに神の領域に届いていた。


このままでは、止められない。


感情の神は静かに息を吐いた。


そして――


シャインの心へと入り込む。


神にしかできない力だった。


心の奥へ潜り込み、戦意を奪う。


怒りを沈める。


それが感情の神の本来の力だった。


だが――


その瞬間。


感情の神の動きが止まる。


そこにあったのは、


想像を超える感情だった。


憎悪。


深く、濃く、重い。


まるで底の見えない闇のようだった。


母の死。


孤独。


迫害。


捨てられた記憶。


それらすべてが、シャインの心を満たしていた。


その感情の深さに、


感情の神は一瞬怯んだ。


その瞬間だった。


シャインの目が開く。


「……今さらだ」


低い声。


怒りが爆発する。


空気が震える。


シャインの周囲から、まるで魔法のような力が溢れ出す。


怒り。


悲しみ。


憎しみ。


その感情が、そのまま力になっていた。


シャインは父へ向かって手を振り上げる。


次の瞬間。


見えない衝撃が走る。


感情の神の身体が弾かれる。


神殿の柱が砕ける。


石床が割れる。


神の身体に傷が刻まれていた。


感情の神は体勢を立て直す。


そして応戦する。


神の力が神殿を満たす。


だが――


シャインの力は、それを上回っていた。


憎悪の感情が、圧倒的だった。


神の攻撃は届かない。


シャインの力だけが、神殿を支配していた。


感情の神は理解する。


――勝てない。


だが、問題はそこではなかった。


もしこのままシャインが感情の神になれば。


怒り。


憎しみ。


悲しみ。


負の感情だけが、この世界を支配する。


その時。


世界の均衡は崩れる。


感情の神は静かに目を閉じた。


そして決意する。


――ならば。


最後に残された手段は一つだけだった。


感情の神は、ゆっくりシャインを見た。


そして言った。


「……そうか」


その声は静かだった。


「そこまで憎んでいるのか」


シャインは答えない。


ただ憎しみの瞳で父を見ていた。


感情の神は小さく笑う。


「ならば」


「最後に一つだけ残してやろう」


その瞬間。


神の身体から光が溢れた。


神の力。


感情そのものの力だった。


シャインが眉をひそめる。


「何を――」


次の瞬間。


光はシャインの身体へと流れ込んだ。


いや、


溶け込んだ。


感情の神自身が。


命をかけて。


シャインの心の奥へ。


神の声が響く。


――感情とは。


――怒りだけではない。


――憎しみだけでもない。


――喜びも。


――安らぎも。


――希望も。


――それもまた、感情だ。


光が消えていく。


感情の神の姿は、ゆっくりと崩れていった。


そして消える。


この世から。


完全に。


神殿は静まり返った。


シャインは立ち尽くしていた。


胸の奥。


そこには相変わらず渦巻いている。


怒り。


悲しみ。


憎しみ。


だが――


ほんのわずかに。


小さな光が残っていた。


温かい感情。


それが何なのか、


シャインには分からなかった。


神殿の空気が震える。


世界が反応していた。


神が一柱、消えた。


そして――


新しい神が生まれる。


シャインはゆっくり顔を上げる。


その瞳には、


深い闇が宿っていた。


だが、その奥には


ほんのわずかな光が残っている。


シャインは静かに呟いた。


「……俺が」


その声は低く、冷たい。


「感情の神だ」


その日。


世界に、新たな神が誕生した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ