表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の子Ⅱ  作者: ありり
番外編
45/50

番外編 シャイン12歳①

シャインは十二歳になっていた。


母が亡くなってから、数年が過ぎていた。


だが、その年月がシャインの心を癒すことはなかった。


むしろ――


胸の奥に沈んだ感情は、時間とともに深く、濃くなっていった。


孤独。

怒り。

悲しみ。

そして憎しみ。


それらすべてが、シャインの力となっていた。



シャインは理解していた。


自分の力の正体を。


それは魔法ではない。


感情だった。


怒りは力を強くする。

悲しみは風を鋭くする。

憎しみは空気を震わせる。


感情そのものが力になる。


だが、それだけではなかった。


シャインは気づき始めていた。


自分の感情だけではない。


他者の感情にも触れることができる。


怒りを抱く者がいれば、その怒りをさらに膨らませることができる。


悲しみに沈む者がいれば、その悲しみを深くすることもできる。


逆に――


感情を抑え込むこともできた。


まるで心そのものを掴むように。


シャインはその力を、静かに磨いていった。



だが、その力が向かう先は決まっていた。


自分たちを迫害したエルフたち。


そして――


父。


神。


感情の神。


もし父が自分を見捨てなければ。


もし神が人々を守る存在であるなら。


母は苦しまずに済んだ。


シャインの胸の奥には、確かな憎しみがあった。


神への復讐。


それが、シャインの生きる理由になっていた。



ある日。


シャインは森の奥を歩いていた。


その時だった。


空気が変わる。


冷たい気配。


圧倒的な存在感。


シャインは足を止めた。


「……来たか」


小さく呟く。


次の瞬間、目の前の空間が歪む。


そこに現れたのは、一柱の神だった。


人の姿をしているが、その気配は明らかに人でもエルフでもない。


圧倒的な神気が、周囲の空気を震わせていた。


神はシャインを見下ろす。


その目に浮かんでいるのは警戒だった。


「お前か」


低い声。


「この土地で、神の気配を持つ者というのは」


シャインは黙っていた。


神は続ける。


「エルフでありながら、神の力を持つ存在」


「放っておけば、災いになる」


神の手に光が集まり始める。


「ここで始末する」


その言葉に、迷いはなかった。


シャインは静かに目を閉じた。


そして、小さく笑う。


「……そうか」


次の瞬間。


空気が震えた。


神の殺意。


その感情が、シャインの中に流れ込む。


怒り。


敵意。


そして、わずかな恐れ。


シャインはそれを感じ取った。


そして――


触れた。


神の感情に。


「そんなに怒っているのか」


シャインの声は静かだった。


だがその瞬間。


神の表情が変わる。


心の奥に、何かが流れ込む。


怒りが膨らむ。


悲しみが混ざる。


疑念が広がる。


シャインは神の感情を操っていた。


「な……」


神の声が揺れる。


感情が制御できなくなる。


怒りが暴れ、恐怖が広がり、心が乱れる。


神は攻撃しようとする。


だが手が震える。


心がまとまらない。


シャインはゆっくり目を開いた。


その瞳は、冷たかった。


「神も……」


小さく呟く。


「感情に縛られているんだな」


エルフも、人間も、魔族も。


そして神でさえ。


感情から逃れることはできない。


シャインはさらに力を込める。


神の心の奥へ。


深く。


深く。


触れる。


神の瞳から光が消えた。


膝をつき、倒れる神。


静かな森。


風だけが揺れている。


シャインは立ち尽くしていた。


「……」


目の前に倒れているのは神。


神。


本来なら、決して届かない存在。


だが今、その神が壊れている。


シャインの手によって。


シャインは自分の手を見る。


指先が、わずかに震えていた。


「……俺が」


小さく呟く。


「壊したのか」


胸の奥に、奇妙な感覚が広がる。


恐怖。


そして――


わずかな高揚。


神すら壊せる力。


その事実が、静かにシャインの心を満たしていく。


「……なるほど」


シャインは静かに笑った。


「神も、壊れるんだな」


息はしている。


生きている。


だが――


瞳は空虚だった。


精神は完全に崩壊していた。


シャインはその姿を見下ろした。


そして理解する。


自分はもう、ただのエルフではない。


神にすら届く力を持っている。


いや――


神すら壊せる力を。


森の風が静かに吹いた。


シャインは空を見上げる。


神々はきっと気づくだろう。


この力に。


そして自分を狙うだろう。


だがシャインは静かに言った。


「なら」


その声は冷たかった。


「俺が神になる」


感情の神。


その座を奪う。


そして――


すべてを壊す。


この世界も。


この神々も。


そして父も。


シャインは歩き出した。


父の元へ。


決着をつけるために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ