表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の子Ⅱ  作者: ありり
番外編
42/50

番外編 シャイン7歳②

子供たちは後ずさりながら、シャインを見ていた。


誰も近づこうとしない。


さっきまで笑っていた顔は、今は恐怖に変わっている。


「……化け物」


誰かが小さく呟いた。


そして子供たちは一斉に森の奥へ逃げていった。


シャインはしばらくその場に立っていた。


何が起きたのか、自分でも分からない。


ただ胸の奥に、まだ怒りが残っていた。


やがてシャインは歩き出した。


頼まれた買い物をしなければならない。


母が待っているからだ。



市場に着くと、いつものように人が行き交っていた。


人間、エルフ、魔族。


それぞれが自分の商売をしている。


シャインは母から渡されたメモを見ながら、必要なものを買った。


パン。


乾燥肉。


薬草の束。


買い物を終えると、森の道を通って家へ戻る。


だがシャインの頭の中には、さっきの出来事がずっと残っていた。


あの風。


あの突風。


怒った瞬間に起きた。


まるで――


怒りそのものが魔法になったようだった。



家に帰ると、母が食事の準備をしていた。


「おかえり」


優しい声だった。


シャインは袋を差し出す。


「頼まれたもの、全部買ってきたよ」


母は中を確認し、微笑んだ。


「ありがとう」


だがシャインはその場を動かなかった。


母が気づく。


「どうしたの?」


シャインは少し迷ってから言った。


「母さん」


母が振り向く。


「ぼくの父さんって……」


言葉を探す。


「どんな人?」


母の手が止まった。


部屋の空気が少し重くなる。


母はゆっくり言った。


「どうして急にそんなことを聞くの?」


シャインは答える。


「今日、言われた」


少し俯く。


「ぼくの父は人間だとか、魔族だとか」


「だからぼくはエルフじゃないって」


母は何も言わない。


シャインは続けた。


「でも、それより……」


自分の手を見る。


「変なことが起きた」


母の眉がわずかに動く。


「変なこと?」


シャインは頷いた。


「怒ったんだ」


「母さんのことを悪く言われて」


声は小さかった。


「その時」


少し息を吐く。


「風が吹いた」


母の顔が変わる。


驚き。


そして迷い。


シャインは続けた。


「すごい風だった」


「ぼく、何もしてないのに」


「でも……」


言葉を探す。


「怒りの気持ちが、そのまま魔法になったみたいだった」


母はしばらく黙っていた。


何かを考えているようだった。


だが、何も言わない。


代わりにゆっくり近づき、シャインを抱きしめた。


強く。


「母さん?」


シャインが戸惑う。


母はただ言った。


「大丈夫」


それだけだった。


シャインは母の腕の中で考えていた。


自分は何者なのか。


なぜ、あんな力が出たのか。


答えは見つからなかった。



次の日。


シャインは集落の図書館へ向かっていた。


森の中央にある、小さな建物だ。


古い本がたくさん置かれている。


もしかしたら、自分の力のことが分かるかもしれない。


そう思った。


だが図書館の前に着いた時、足が止まった。


昨日の子供たちがいた。


そして今日は、昨日よりも多かった。


シャインを見ると、一人が言った。


「また来たぞ」


別の子供が睨む。


「ここはお前の来る場所じゃない」


昨日までとは違う。


言葉だけではない。


はっきりとした敵意だった。


一人の子供が地面から石を拾う。


そして――


投げた。


石はシャインの肩に当たった。


鈍い痛みが走る。


「出ていけ!」


子供が叫ぶ。


「ここはエルフの場所だ!」


別の子供が言う。


「お前みたいなやつが来るな!」


胸の奥で、感情が揺れた。


怒り。


そして悲しみ。


その二つが、胸の中で混ざる。


すると――


力が湧き上がる。


昨日と同じ感覚。


感情が、そのまま力になる。


その瞬間だった。


もう一人の子供が石を拾う。


「もう一回やれ!」


腕を振りかぶる。


石が飛ぶ。


だがその瞬間。


シャインは手を動かした。


風が起きる。


鋭い突風。


石は途中で弾かれ、地面に落ちた。


子供たちは息を呑む。


シャインは立っていた。


昨日とは違う。


今度は――


自分の意思で風を起こした。


周囲の葉が揺れている。


その様子を、遠くから大人たちが見ていた。


森で働いていたエルフたち。


その目に浮かんだのは驚きではない。


恐怖だった。


「……あの子」


誰かが呟く。


「やはり普通じゃない」


シャインはその視線に気づいていた。


胸の奥が冷たくなる。


この瞬間から――


集落の大人たちもまた、


シャインを恐れるようになっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ