準備
「僕は…」
「お前はずっと俺にいじめられてきた。俺がカシウスだとも思ったんじゃないのか?」
「僕はただ整理がついていないんだ。」
「それは…」
雄介は言葉を止めた。
「それはもう時間がないから…さ。」
「全部俺たちのせいだから。狙い続けていた対象が勘違いだったとか、な。」
僕は一度考えるのをやめた。ふっと息を吸ってから吐いた。首を揺らして肩を上下させた。低い唸り声をあげて雄介を再び視界にとらえた。
「おい、どうした。はは。航平。」
「なあ雄介。僕の母親はまだ生きているか?」
「笑えねぇ冗談だな。それ。」
雄介は笑って応えた。客間から僕たちは去った。僕は携帯電話を取り出した。
「航平。何するつもりだぁ?」
「ただ…僕たちの味方になってくれる仲間を呼ぶ。あんたはどうせカシウスの対象をミスった償いで追放されてるんだろ?」
ふっと笑う雄介。僕は2階の自室に雄介を招待した。
「どんだけ本あるんだよ。」
「ギリシャ神話にヘブライ神話。ケルト神話まである。お前、だからあんなに詳しかったのか。」
僕は笑って頷く。
「お前ら一家、やっぱり頭おかしいな。」
僕は机にしまっていた装置を取り出してみせた。雄介は目を丸くして言った。
「ユーグリティーここにあったか。」
「ああ。あと、麗花を呼んだ。」
「信介は?」
「父さんか…当たり前だ。呼ぶよ…」
しばらくして呼び鈴がなった。二人は順に到着した。2階の僕の部屋で皆が集まった。まだ日は沈んでいない。家中の布団をかき集めた。
麗花は少し恥ずかしそうにしながらも母親の布団だったそれにくるまっていた。けれど…
父は雄介のことを覚えていなかった。
雄介はそれをこう予想していた。
「誰かが俺と信介の関係を断とうとしたのかな。そんなことできる奴もそんなことわざわざする奴もほとんどいないだろうけどぉ。」
目の奥がしっかりと笑っている雄介。彼も僕も薄々気づいていることではあった。そして麗花はあの盆の日から変わって、悲壮な顔をしていた。肩は震えて、僕の声も届いていないようだった。
けれどこれで四人。主要メンバーは揃っている。カンパンを食べながら僕らは夜を越した。




