震撼
「前に渡したあの紙片の中身を読んだか?」
「読んでいない。あれはすぐに指紋だけ抜き取って源蔵爺に渡した。」
「今、源蔵爺は?」
僕の尋ねに雄介は立ち上がって応えた。
「なぁ源蔵爺は一体どうしたんだ?」
「なぁ。」
雄介の声色が一気に低くなった。
「もういいか?」
雄介は僕を睨んでそう言った。
「もう、細かいことはもう良いだろ?」
「核心は掴んだ。」
「もう時間がない。」
「お前も気づいているはずだ。」
「これはもうすぐ終わる。」
僕は雄介の言葉を聞いていた。声は出なかった。
「カシウスは別世界の子だよ。そう、語り部だよ。」
「語り部?」
雄介はため息をついた。
「自分の言ったことや願ったこと、それらで世界を改変する力を持つ呪いを持った奴ら。通称語り部。」
「世界と運命を共にする個体。」
「これまで何十億年生き、数多の生命の命を育み奪ったこの世界と同等の権限を持ち、侵食も破壊も自由にする個体。」
僕は口が動かない。雄介は僕を睨み続けたまま言う。
「呪いというかもう神超えてるんだよ、イレギュラーだよ。」
「それがカシウスの正体か?僕と同じ呪いの。」
「お前は違う。」
「お前はただ呪われた人間だ。」
「カシウスは生死を司る神。そして呪われた語り部の複合体だ。」
「何でそんなこと知って…」
「死神と世界最強の語り部のハイブリッド。」
「バカなことするよほんとに。それで何が救えるっていうんだよ。」
「お前の窓についている風鈴。美しいよな。綺麗な音色だよな。」
「今日さっき飲んだ湯呑みに入った麦茶。本当に美味しいよな。」
「お前がよく行く白狼公園。それにこの本だらけのお前の家。」
「みんな美しいし大事なモノだよな。」
雄介の言葉に僕は首を静かに頷いてみせた。
「それが全部存在ごと否定されて消える。」
「カシウスはこの世界を無かったことにしようとしてる。」
「俺には意味がわかんねえ。」
「俺はこの世界に生まれて育ってきた。」
「お前と同じ、小学校にも中学にも高校にも通った。そして大学でお前ら両親と仲良くなった。」
「お前の母親の書いた本を探すために父方の祖父に頼った。」
「源蔵爺のことか?」
「ああ。それにお前と出会い、カシウスを探すのに奔走し、公園で昼寝したり野宿したり。酒を飲みながらほっつき歩いて職質されたこともあったな。」
「こうやって親友の子供とヒソヒソ話もしたし。」
「何が言いたい?」
「俺はただ…
「ただこの世界が大好きなんだよ。」
「だから…
「カシウスは許せない。」
雄介の拳は震えていた。




