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怪花
太陽はその陽光を地平に隠し、電灯の光が街を支配し始めた。凪浪公園のブランコの前、動かない影が一つある。辺りを見渡すように首を動かす横長の影はじっと固まっている。そして足音を奏でる細長い影がもう一つ、凪浪公園の丘で直立していた。
月が顔を出す。
蛾を模した衣装が露わになって、乱雑に生やした髭が風に靡く。靡くほどに長いその顎鬚を掌で舐め回す男。男は丘を下ってブランコに佇む同胞に歩み寄る。足音は一音、呼吸は二音。
ようやく寂れた影の肩を捕まえて男は信介、と連呼した。ただ低い雑音が彼の口で反復される。増長された名前は暗い夜の公園に繁茂する。彼らの囁きは木々のざわめきに掻き消され、月は彼らを指差さない。遂に月が顔を隠した時、公園には大きな闇が落ちる。しばらくするとそこは、寂れた鎖が鳴るだけの公園に変貌していた。




