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追い剥ぎ
僕は凪浪公園に入りそばにあったブランコにとりあえず座った。逆さになった下弦の月が僕を眺めている。蛾は公園の電灯を隠すように群がっていてそれ自体が昔からの伝統かのように林立している。全ての灯りに蛾。サイレンの音は時折大きくなっては小さくなる。晩秋であるかのように乾燥した夜空には星が見えていた。
「これが呪いなのか…母が言っていた。」
僕は背中を曲げて地面に正対しながら吐き捨てる。
「迷うと言うか何と言うか…分からなすぎて実感がないと言うか。」
どうしようもない、と僕は続けて言う。その言葉に希望は含まれていない。サイレンの音が大きくなる。凪浪公園は未だ影一つ。
「母さんはこれを知っていたんだろう。たぶん。」
僕はポケットから紙片を取り出す。の父信介に向けられた母の手紙の一端だろう。僕はそれを大切に眺めながら顔を上げる。
「そう言うことかよ。」
そうイライラした声色で吐き捨てる僕の前に影一つ。逆光で顔も見えないけれど息遣いは聞こえた。
「航平、家が燃えた。」
その響きが僕の耳に届くと共にブランコから崩れ落ちる。目を大きく開いた僕は動揺を隠せない。
「家、いや父さん?雄介じゃ…」
父は訝しげな声色で言う。誰だそいつは、と。




