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20/24

姉弟

 商店街通りを歩いていると、電気屋のガラスの内側に置いてあるテレビで流れるニュースに足を止めた。


『本日早朝。またも巨大生物が出現しました。今回現れたのは、恐竜のような見た目をしたこちらと、これまで現れてきた巨人です。この二体の巨大生物は町から離れた場所で戦いを始め、巨人が生き残りました。今週三度目となる巨大生物同士の争い。壊された建物や負傷者が続出する中、この巨大生物同士の争いの対策を求める声と、巨人が町を守ったと語る少数がいるようです。いずれにせよ、突如として始まったこの巨大生物同士の争いに、終わりはあるのでしょうか?』


「それは僕が聞きたいよ」


 まだ三度目と思っていたが、今週だけでもう三度目なんだ。こんな非現実的な出来事、生きてる間に一度でもあるかどうかすら分からない出来事が一週間の内に三度。


「ミチコさん。あと全部で何度戦えばいいんですか?」


「知らんよ」


「知らんって……」


「君は何も考えず、ただ害獣と戦ってればいいの」


「こっちは命懸けなんですよ?」


「大丈夫大丈夫。死にそうになったら、またアタシが助けたげる」


「そういうわけじゃなくて。大まかな目標が無ければ、やる気が削げるって言ってるんです」


「う~ん……じゃあ、こうしよう!」


 前を歩いていたミチコさんが僕の方へ振り返ると、ギュッと僕を抱き寄せた。


「害獣を倒す度に、こうして抱いてあげる」


 顔に当たる柔らかな感触と、優しく頭を撫でる安心感。エロとかそういうのじゃなくて、求めてるものを与えられた嬉しさから頬が緩む。


 ミチコさんの腰に回しかけた両手をプライドで止め、断腸の思いでミチコさんから離れた。


「……僕の財布の金を使いきったのを無かった事にしようとしてませんか?」


「……エヘッ!」


「……はぁ。もういいですよ。ミチコさんにお金を渡しちゃ駄目っていう授業料だとします。本当は全額返してほしい所ですけど、そんな余裕―――」


「ナイナイ」


「さっきも見せられましたけど、それムカつきますね! 反省してるんですか!?」


「してるって! あの時さ、後から隣の台に来たオッチャンが滅茶苦茶当ててさ! じゃあ隣の台にしとくべきだったって反省してるよ! チクショウ!」


「そういう反省の仕方じゃなくてですね! お金はもっと大事に使うって事です! ギャンブルなんかで使っちゃ、一瞬で無くなっちゃいますから!」


「少年。パチンコはギャンブルじゃないよ。やってれば何か知らないけどお金が増える娯楽だよ!」


「減ってるじゃありませんか!! もうミチコさんはパチンコ禁止!! 仮に自分でお金を稼いでもやっちゃ駄目です!!」


 僕がそう言うと、ミチコさんは凄くショックを受けた様子になった。もしかしたらそう見せてるだけで、内面は気にも留めてないのかもしれないけど。


 それから家に帰るまでの間、ミチコさんは【パチンコ禁止】を撤回するよう訴えながらベタベタとくっついてきた。その際に、腕や背中や後頭部に柔らかい感触を押し当てられたが、頑張って表情を強張らせて堪えた。


 家に帰ると、玄関の扉に鍵が掛かっていた。父さん、まだ帰ってきてないのか。足元のシートの裏から合鍵を取り出し、家に入った。


 空腹と喉の渇きを覚えながら冷蔵庫の中を見た。出来合いの物や残り物は無いけど、紙パックのオレンジジュースがあった。コップに一杯注ぎ、一気に飲み干した後、もう一杯注いでリビングに持っていった。


 リビングではミチコさんがソファに寝っ転がってテレビを観ていた。この人が住み始めてまだ数日なのに、このくつろぎよう。居候という身分を忘れてるんじゃないか?


「お! 少年、気が利くね~!」


「あ、ちょっと!」


 僕が持ってたオレンジジュースを奪い取ると、遠慮も無しに一気に飲み干した。そうして空になったコップを僕に投げ渡すと、またテレビの方へ関心を向けた。


「アッハハハ! この人間、面白い事言うよ! 少年の事、地底人だって決めつけちゃってさ!」


「そりゃ、事情を知らないと、地底人とか宇宙人とか勘繰る人はいるでしょ」


「だからってさ! こうも自信満々に言うもんだからさ! 人間って、どうしてこうも狭いのかね!」


「狭い?」


「少年が言うように、コイツは何一つ知らない。なのに、勝手にああだこうだと語っちゃうんだよ?」


「それは……個性ってものでしょう。それにこの人はタレントです。こういう風に騙るのが仕事なんですよ」


「え!? 嘘ついて金稼げんの!? オッシャ少年! アタシもこれで稼ぐぞ! そして集めた金で今度こそ一攫千金―――」


「ミチコさんには無理です。あと、パチンコは禁止です」


「……頑固だね~」


 ソファに寝っ転がるミチコさん。


 その隣に立つ僕。


 僕は空のコップを手にしながら、しばらくその場に留まってテレビを眺めた。 

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