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そして少年はヒーローになった  作者: 夢乃間
かつて少年だった
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断ち切る

 化け物に向かった矢先、突進する化け物とは別に、尻尾が横にしなった。


 そうして次の瞬間、化け物の体は尻尾に力負けする形で転倒し、しなりを効かせた尻尾が僕の横っ腹に直撃した。


 痛い、なんてものじゃない。


 何も感じない。

 息が出来ない。

 立ち上がれない。     


 自分が今四つん這いの状態で、すぐ傍に化け物がいると分かっていながら、指先一つ動かす事さえ出来ずにいる。あの尻尾の一撃。しなりを効かただけでは出せない威力がある。それに尻尾の攻撃を繰り出す時、化け物自身も力負けしていた。それほど尻尾の重量が凄まじいのだろう。


 なんにせよ、あの尻尾の攻撃だけは避けなければいけない。二度目は意識を保てるかどうか自信が無い。


 ようやく体の感覚が戻ってきた所で、化け物は痛めた僕の横っ腹を蹴って転ばせた。仰向けになった僕を押し潰そうと飛び込んできた所を間一髪で避け、今度は僕が化け物の背に乗った。背中を何度も殴り、起き上がろうとすれば後頭部を殴って地面に寝させ続ける。このまま繰り返して弱らせ、至近距離からのプラズマ光線で―――


「危ない!!!」


 レンさんの叫び声が聞こえるや否や、尻尾で背中を強打され、化け物の上から弾き飛ばされてしまった。


 背中の痺れと息苦しさを覚えながら見ると、化け物の尻尾は意志を持つかのようにうねっていた。普通の尻尾の挙動ではない。


 化け物は立ち上がると、片足で地面をこすった。突進する気だ。


 しかし、前進しようとする体とは違い、尻尾は左右に揺れ動いている。おそらくまたしなりを効かせた尻尾の攻撃を繰り出すつもりだ。


 突進か。

 尻尾の攻撃か。

 どちらでくるつもりだ?


「ミズキさん!!! プラズマン第十三話です!!!」


 プラズマン第十三話。話数を言われても、観たのはもう何年も前だし憶えているわけ……いや、そうか十三話か!


 僕に向かって走り出す化け物。正面か、左右のどちらかの攻撃かは分からない。


 けど、僕に向かって来ている。技を当てられる距離に来る。


 プラズマ光線。バリア。この二つの技を出せたんだ。なら、あの技も使えるはず。使えなければ負けて終わりだ。


 化け物の尻尾がしなりを効かせて振り被った。自身の尻尾に力負けした化け物は転倒し、勢いをつけた尻尾が放たれようとしている。振り被った方向からして、来るのは最初に喰らった左側。


 尻尾の攻撃が直撃する刹那、僕の左腕は反応していた。プラズマ光線の時とは違い、今度はエネルギーを左手から前腕に纏わせ、剣の光波にした。


「斬った!!! プラズマブレードの完全再現だ!!!」


 尻尾を切断し、あとは胴体だけ。立ち上がろうとする化け物の背に乗り、首元にプラズマブレードを当てた。


 一瞬。ほんの一瞬だけ、躊躇いが生じた。理性を失ってるとはいえ、この化け物も元は人間。このまま倒してしまっていいものか。


 しかし、僕には人間に戻す力は無い。


 ただ、戦う力しかない。

 

 心に生じる迷いを断ち切るように、僕は化け物の首を切断した。

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