表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして少年はヒーローになった  作者: 夢乃間
かつて少年だった
PR
16/24

かつてヒーローに憧れた青年

 レンさんが運転する車に乗って森の中を抜けると、町の方では既に化け物が暴れ回っていた。二足歩行の恐竜のようで、尻の所に太い尻尾が生えてる。やはり壊す事が目的なのか、目についた建物を次から次へと壊している。


「今度はオーソドックスな見た目だな~! 良い壊しっぷりだ!!」


「笑えませんよ、そういう冗談……!」


「ミズキさんも、彼みたく周囲の事なんか気にせず戦ってくださいよ!」


「彼……そうか。元は、人間なんだ……!」


 僕が巨人に変身するように、あの化け物も人間が変身している。今回だけじゃない。前も、その前の化け物も、元は人間。それを倒した……いや、殺したんだ。


 人殺し。


 その言葉が、深く胸に突き刺さった。


「あれ? どうしました?」


「……爆散した化け物は、どうなるんです?」


「そりゃあ、死んでますよ」


「……残骸とかから、元の人間が見つかったりとかは?」


「残骸……そういえば、今まで残骸なんて残ってなかった。妙だな。これまでの爆散からして、欠片が散らばってるはずなのに……」


 人間。化け物の姿になって、自我を失ってるけど、あれも人間なんだ。


 駄目だ。


「……戦えない」


「え?」


「……倒せば、あの化け物になってしまった人を殺してしまう」


「そんな今更―――」


「アナタは他人事だから言えるんですよ、そうやって!!!」


 胸が酷く冷たい。凍ってしまったかのようだ。


 怖がってる。【倒す】ではなく【殺す】になる事を知ってしまったから。


「ミズキさん……」


 突然、車が停まった。化け物がいる町まで、まだ距離がある。


「……俺、昔はヒーローに憧れてました。みんなを守るヒーローになって、悪者を倒す。小学生の時に出された将来の夢にも、そう書きました。けど……中学に上がってから、周りと上手くいかなくて。中学高校でいじめの標的になって、大学でも友達が出来ず、就職も上手くいかなくて……みんなを守るヒーローどころか、みんなから疎まれる人間になってしまいました」


 レンさんは完全にハンドルから手を離すと、背もたれに体を預けながら、化け物が町で暴れる様を眺めていた。


 その表情は、どこか嬉しそうに見えた。


「見てくださいよ。町が滅茶苦茶に壊されてる。善人も、悪人も関係なく。みんなアレに滅茶苦茶にされてますよ。きっと町では今頃、みんな我が身可愛さで、助けを求める声なんか聞こえないフリをして逃げ惑ってる」


 そうだ。化け物が暴れれば暴れるほど、沢山の人が怪我をして、死んでしまう人だっている。戦う力を持たない人間は逃げるしかないんだ。


 それなのに僕は。


 戦う力を持ってる僕は!


「……車を走らせてください」


「戦わないんじゃ?」


「あの化け物も、元は人間。今回だけじゃない。僕はもう、二人の人間を殺してしまった人殺しだ……けど! だけど!! そうして守ってきたんだ!!!」


 凍っていた胸の内の奥から熱が込み上げてくる。迷う僕の背中を押すように、僕を奮い立たせる。 


「誰かが人の平和を壊そうとするなら、僕は止めたい!! 例えそれが、人間だとしても!!」


「おぉ……! 本物だ……!!」


 居ても立っても居られず、車から降りた。昂る熱が、僕の体を内から焼き焦がそうとする。


 痛みはない。


 あるのは、使命感だ。


「例え他人から忌み嫌われても、僕は巨人の力を使う! そして守ってみせる!!」  


 左胸を強く叩き、巨人に変身した。


 すると、化け物は僕が現れた事に気付き、真っ直ぐ僕の方へと向かってきた。ここには何も無い。化け物がこのまま町から離れてここまで来れば、周囲の被害は考えなくて済む。


 ふと、後ろを振り向くと、レンさんが車から降りて僕を見上げていた。


 化け物の足音が近付いてきたのを耳にし、正面へ振り返って化け物に向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ