人間の味方 農家の敵
『速報です。本日夕方頃、再び巨大生物が現れたようです。現れた二体の内、一体は別種のようで、もう一体は昨夜と同じ姿をした巨大生物のようです。えー、ここで取材に向かったリポーターと中継が繋がっています。中村さん?』
―――。
『はい、中村です。こちらが映像に映っていた現場で―――あ、ちょっと!』
『おい、宇宙人野郎!! 昨日も今日も田んぼ荒らしやがって!! 次また田んぼ荒らしやがったらな、俺ら農家一同でテメェのチン―――』
―――。
『……えーっと。現場では、怒りの声が後を絶たないようです。次のニュースに移ります』
あの爺さん、何を言いかけてたんだ? チンって、あのチン? だとしたら、化け物より怖いんだけど。
けど、とりあえずホッとした。今日の戦いで出た被害はほとんど無いみたいだ。まぁ、農家の怒りは増す一方だけど。
「凄いね。父さんも帰ってくる時、この騒動を聞いたよ。ミズキは安全な場所まで逃げれたかい? 怪我は?」
「大丈夫。学校にちょっと用があって残ってたんだ。あの場所は学校から離れてたし、結果良かったよ」
「そうか。何度も携帯に連絡したんだけど、充電切れてたのかい?」
「え? あ、ああ! 学校に居る間は、電源切ってるタイプだから! それで気付けなかったかも―――じゃなくて、気付けなかった!」
心配してくれる親に嘘を重ねるなんて罰当たりだ。
けど、本当の事を言えば、もっと心配にさせてしまう。だからこれは仕方がない嘘なんだ。
「それにしても、似てるな~」
「へぇ!? に、ににに似てるって、誰が!?」
「しらばっくれるなよ。この昨夜と同じ巨大生物の見た目。めちゃくちゃプラズマンに似てるよな!!」
「……アァ、ソユコト」
「まったく一緒じゃないけど、なんか似てんだよね~! 本物はもっとスタイリッシュだけど、こっちはこっちで宇宙人感が増してミステリアスな良さがある! 父さんこっちのプラズマンも好きだな!」
父さんは携帯で流してる動画を眺めながら、一人で勝手に盛り上がっている。その巨大生物が、自分の息子が変身した姿だと知る由も無く。
それにしても、そんなにプラズマンに似てるかな? 昔観たきりで、記憶が曖昧なのもあるけど、少なくとももっとヒロイックな姿をしてたはず。というか勝手にプラズマン扱いしてるし。
「しかし、現実は小説より奇なりとはまさにこの事だよな。まさかプラズマンがテレビから現実の世界に現れるなんて!」
「それプラズマンじゃないよ」
「そりゃあ見た目は違うさ。けど、父さんには分かる。このプラズマンも、人間を守る為に戦っているって! 姿は違えど、プラズマンと同じヒーローだ!」
「父さんまで……そんなに言うなら、もしかしたらプラズマンの公式が動くかもね。また再放送をするか、まったく新しいシリーズを作るとか」
「おぉ!! それは激熱だな!! 頑張ってくれよ、こっちのプラズマン!! 僕の最推しが再び輝くチャンスなんだ!!」
「輝いてるのは名前だけじゃん……」
「なんか言ったか~ミズキ~?」
プラズマンについて語る父さんの姿は、凄く久しぶりだ。昔は、母さんが生きてた頃は、幼い僕に半ば強引にプラズマンの知識を教え込んでいた父さんに母さんは苦笑いを浮かべては、たまに叱ってた。シュンとした父さんが可哀想で、僕が父さんを庇ってあげたっけ。自分の父親の情けない瞬間の思い出だけど、母さんが生きていた大切な思い出だ。
父さんのプラズマンの話に付き合っていると、リビングの扉が開いた。僕も父さんもそっちの方へ視線が向くと、そこには首にタオルを下げた裸のミチコさんがリビングに入ってきていた。
「パパさん、少年。風呂いいよ~」
「「キャァァァ!!」」
「どしたの?」
「ありゃ、ありゃりゃりゃ!? と、とと父さん、あの、あれだ! 部屋に居るから! な!」
「パパさん入らないの~? ……部屋行っちゃった。随分と慌ててたけど、どしたのかな?」
「胸に手を当てて考えてください! すぐ分かると思うので!」
「胸にって、こう?」
ミチコさんは僕の右手を掴むと、自分の胸を触らせた。今朝、顔に押し当てられた柔らかさとはまた違う感触。手の平で触った方が、なんかエッチな感じがする。
「どう?」
「どうって……! そんなの……柔らかい、です……」
「スケベ。そういう意味じゃないよ。あの光線撃つ時、右手だけでやったよね? 痛んでるんじゃないかなって」
「あ、あぁ、そういう……ちょっと痺れてるだけで、別に大丈夫ですよ」
「そう……ねぇ、少年」
ミチコさんの顔が近付いてくる。椅子の背もたれの所為で避けられない。
また、キスされる。
「君、誰かに尾けられてるよ」
「……え?」




