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迷ってばかりじゃ何も変わらない

 今回の化け物は前のと比べて強そうに感じない。だからといって、簡単に倒せる相手だとも思えない。


 不気味。そう思ってしまうのは、やはり特に目立つ渦。あれが一体何の役割を持つのか見当もつかない。


 おまけに今回は町の中。前の田んぼ道と比べて、気にすべき所が多過ぎる。周りの建物に人は残っているのか。未だ停まったままの車に人が乗っているのか。化け物に向かっていこうにも、それらが気になって動けない。  


 そんな僕とは裏腹に、化け物は構わず前進を続けている。今の所暴れる様子は無いが、いつ周りの建物や足元の車を破壊しだすか分からない。


 光線で一気に決着をつける。それが身動きが取れない中で、化け物を唯一倒す方法だ。微調整までとはいかずとも、十分な力を両腕に溜めないようにしないと。全力で放てば勝てるが、それでは化け物を爆散させてしまう。そうなっては、周囲に被害を与えてしまう。そうならない為に、わざと威力を落とす。


 胸の内から両腕に力を流し込み、両腕を突き出して光線を放った。放たれた光線の感じからして、前の時よりも上手く威力を落とせている。これなら、化け物を爆散させずに無力化出来るかも。


 放った光線は化け物へと直撃した。


 直撃したはずだった。


 化け物はまるで光線を喰らっていないかのように無傷だった。威力を落としたとはいえ、直撃したのなら何かしらの反応があるはず。それが無いとなると、おそらく、あの渦が原因だろう。


 その僕の予想は当たっていた。化け物は自らの体を震わせると、電子音のような鳴き声がどんどん高くなっていく。


 嫌な予感がしたのと同時に、それを防ごうと僕の体は僕の思考よりも先に動いていた。


 化け物の鳴き声が止まった矢先、渦から光線が放たれた。


「やれるか!?」


 光線が直撃する間際、前に突き出していた両手から青白いバリアが展開し、多少後退りしてしまったが、光線の直撃を防ぐ事が出来た。


 あの渦は、僕の光線を吸収して、それを撃ち出す事が出来るのか。となれば、威力は関係なく、光線で決着はつけられない。


 やはり向かっていくべきか? 


 しかし、もしも足元の車を踏み潰して、その車に人が乗っていたら? 


 組み合いになって、僕か化け物のどっちかが建物にぶつかってしまったら?


 迷う僕に構う事無く、化け物はゆっくりと前進してきている。あと数歩先に、車が二台停まっている。このままだと、最悪見殺しにしてしまう。かといって、まだ戦い慣れていない僕が周囲の被害を考えながら戦う事が出来るのか?


(少年)


「ッ!? ミチコさん!? いつからいたんですか!?」


(ずっとさ。アタシと少年は一心同体。それなのに、君とアタシとでじゃ、大分考えに違いがあるね)


「どう戦えばいいですか!?」


(素直に教えを乞う姿勢は百点。けど、どう戦うかは君次第だよ)


「答えになってませんよ!?」


(あーあ。少年がチンタラしてる所為で、あの車踏み潰されちゃうよ)


 見ると、化け物と車の距離があと一歩先まで来ていた。


 間に合うかは分からない。

 この判断が間違いかもしれない。

 もっと他に良い方法があるかもしれない。

 

 けど、迷ってばかりじゃ何も変わらない!


 意を決し、僕は化け物に向かって駆け出した。化け物の足の裏が車に踏み下ろされる直前で、化け物に体当たりをして後ろに倒れさせる事が出来た。足元の車を建物の屋上に一時避難させ、起き上がろうとしていた化け物の上に飛び乗った。


 パンチをしようとした瞬間、化け物の渦が怪しく蠢いた。刹那、光線を吸収された事が思い出され、振り下ろしかけていた拳を止め、化け物の上から離れた。


「アイツ、吸収出来るのは光線だけじゃないかもしれない!」


(かもね。ねぇ、少年。目が後ろにもある生き物っているかな?)


「こんな時に雑学クイズですか!? もっと危機感を―――って、ん? 後ろ?」


 抱いた疑問を晴らす為、鈍い化け物の攻撃を避けながら、後ろに回り込んだ。


 思った通り。正面にあった渦は、背中側には無い。


「背中がガラ空きだ!!」


 化け物を背中から持ち上げ、田んぼ道の方角へ投げ飛ばした。このままでは田んぼ道まで届かず、建ち並ぶ建物に落ちてしまう。


 だが、大事なのは化け物が空中にいる事だ。


「コイツで押し飛ばす!!」


 通常の両腕に溜めてからでは間に合わない為、右腕に力を溜めた。本来は両腕で放つのを片腕のみに集中させる為、右腕が破裂しそうな危機感を感じる。


 だけど、それを跳ねのけて放つ!


 そしてコレで化け物を倒す!!


「プラズマ光線!!!」


 右腕を突き出し、光線を放った。光線は化け物の背中側に今度こそ直撃し、化け物は光線の勢いで更に先の方へ飛ばされ、田んぼ道の上空で爆散した。


「ハァ……ハァ……なんとか、倒せた……!」


「おーい!!!」


 大声で僕を呼ぶ声を耳にした。病院の入り口を見ると、母親を背に乗せたヨウスケが僕に向かって手を振りながら大声を上げていた。

 

「ありがとなー!!! お前は俺達のヒーローだー!!! ありがとー!!!」


(だってさ。少年) 


「……なんか、照れくさいですね」


 変身が解ける予兆がした。


 どうしてか分からないが、変身が解ける前に、ヨウスケとその母親に何か返さないといけない気がして、とりあえずガッツポーズをした。

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