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Memorial Symponia〜メモリアル・シンフォニア〜  作者: 桜庭つむぎ


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17/21

死の守唄(ベルスーズ)

崩れた噴水の上に腰掛け、退屈そうに銀のフルートを指先で回していたフィアが、ゆっくりと顔を上げた。

「……あーあ。みんな静かになっちゃって、つまんない。ねえバルド、僕もっとこう……心臓が跳ね上がるような『悲鳴』が聴きたいよ」

フィアはそう言うと、傍らに転がっていたバイオリンを無造作に踏み潰した。バキリ、という不快な音が広場に響く。

「焦ることはありません、フィア。間もなく、君の渇きを癒やす『最高の不協和音』がやってきます。……ほら、そこに」

広場の中心、夜会服を一点の乱れもなく着こなしたアルトが答える。そこへ、ヴィクターを先頭にロゼアとミリルが駆け込んできた。

「フィア、それにバルド……! 貴様ら、街の人々に何をした!」

ヴィクターの怒声を聞いた瞬間、フィアの顔にパッと花が咲いたような笑顔が浮かぶ。だが、その瞳だけは全く笑っていない。

「あはっ! おじさんだ! ねえ見てよおじさん、僕、教わった通りに『演奏』してるよ。……でも、ここの人たちはみんなすぐ壊れちゃうんだ。つまんないよねぇ?」

フィアは軽やかに飛び降りると、ロゼアの喉元にフルートの先端を突きつけた。

「ねえ、君がおじさんの新しいお気に入り? だったら、前の僕よりも、もっと『いい声』で泣いてくれるよね?」

「……っ、そんなことのために、ヴィクターの教えを使ったの……!?」

ロゼアがタクトを握る手に力を込める。その時、広場全体の「音」がふっと吸い込まれるように消失した。

「……やめろ、フィア。彼女は『最後の一曲』のための、大切なソリストだ」

大聖堂のバルコニーから、ゆったりとした足取りで漆黒の軍服を纏った男——レオンが姿を現した。彼が言葉を発するだけで、場の空気が重圧となってロゼアたちを押し潰す。

「久しぶりだね、ヴィクター。君が拾い上げたその『ノイズ』……私のタクトで、美しく調律してあげよう」

レオンの命令に、フィアは不満げに頬を膨らませながらも、残酷な笑みを崩さずフルートを唇に当てた。

その瞬間、広場の空気が凍りついた。

フィアが短く鋭く息を吹き込む。奏でられたのは旋律ではない。大気を断裂させる不可視の衝撃波が、ロゼアの頬をかすめ、背後の石柱を一瞬で切り裂いた。

「さあ、開演だ。……君の心臓をバラバラに刻む音……聴かせてよ!」


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