アーツフェスティバル
トムがナタリアに引っ張られ、理事長室前まで来ると言い争う声が聞こえてきた。一つは、理事長であるライラの声、もう一つの男の声は、以前参加させ有れた職員会議で聞いた声だった。ナタリアがノックする。
「理事長、トムを連れてきました」
「入って頂戴」
トム達が中に入ると眼鏡をかけたちょび髭の男性が立っている。
「理事長!まだ話は!」
「何があろうとアーツフェスティバルは開催します。安全は私たち講師陣が確保すれば良いだけの事です。生徒たちが楽しみにしている行事をこんなことでは潰せません」
「何かあった時は分かっておりますな!」
「良いでしょう。何かあれば職を辞します」
「そのお言葉、忘れなきよう」
そう言うと、トムの脇を肩を怒らせと通りぬける。その際、自分に向けられた敵意の視線を、トムは見逃さなかった。
「ライラ叔母様、良いんですか?」
「良いのです。もう決まったことをぐちぐちと……」
「ていうか、誰ですか?あの人」
トムの言葉に、理事長は頭を抱える。
「アカデミーの副理事長です。以前の会議にもいたでしょう。そんな事よりもあなたを呼んだ理由ですけど、トムにはアーツアーツフェスティバルに出てもらおうと思いまして」
「アーツフェスティバル?」
トムがさらに首を傾げていると、隣にいるナタリアが説明してくれる。
「アカデミーの生徒限定の闘技大会よ。学校の用意した基準に沿って、用意してもらった大会用の武器を使って、普段の授業の成果を披露するためにトーナメント方式で一対一で戦うの優勝者には景品も出るのよ」
「へー。それにオレが出るんですか?全員蹴散らす自信しかないけど」
「あなたにトーナメント出場なんて認められるわけないでしょう。出るのは教導戦です」
明かに理解していないトムの顔に苦笑しながらも説明する。
「教導戦って言うのは、教師陣と生徒の試合の事。生徒はこの人と戦いたいっていう人を指名して、試合を行うことが出来るの」
「へー別に良いけど、俺を指名する奴なんていなさそうですけど」
偉人とほぼ互角の実力を持つトムに挑む人材がいるようには思えなかった。
「そうね、だからあなたには当日、これをつけてもらうわ」
そういうと、ライラは机の引き出しから、黒光りする腕輪と足かせを取り出した。
「それって、重力鐶か」
「あなたには通常の四倍の過重力状況で戦ってもらいます」
「面白そうだな。承知しました」
「そう、良かったわ」
ライラがホッと胸を撫でおろすと、トムは追加の条件を追加してきた。
「四人以上のパーティーでの挑戦に限定してほしい。上限はそうだな、十人までで」
「それは、いくらなんでも舐め過ぎじゃないかしら」
「舐めてるわけじゃない。これも授業の一環なんだろ?ならせっかくだ、ダンジョン内での戦闘を想定したい」
ダンジョン内での戦闘では、基本一人で戦う事は無い。パーティー内での連携が需要になる。そのことを教えるいい機会だと思ったトムは、この条件を付けたした。
「んー、それはちょっと……少し考えさせてちょうだい」
ライラもこれが生徒の教育につながるといわれると考えざるを得なかった。
「用事って、それだけですか?そろそろ戻っても?」
トムの問いかけで戻ってきたライラがトムに爆弾を落とす。
「あぁ、それとね、これはもう決定事項なのだけど、明後日のダンジョン学に国王様ご一家が見学にいらっしゃるわ」
「は……?」
目を点にするトムの間抜けな表情に、ナタリアもライラもクスリと笑う。数秒して我に返ったトムは首を横に振る。
「むりむりむり!絶対無理だから!」
「でもねこれ、王命なの、書状もあるし断ったらいろいろ面倒よ」
「何であの人はこういうどうでも良いことに権力を使うんだ……」
トムは大きなため息と共に、がっくりと肩を落とす。
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