2.俗っぽい女神様
「おーい。起きてる?」
どこからともなく聞こえてきたその言葉で、瞳は瞼を開けた。
…あれ、私何分寝てた?
「あ、起きたね」
目の前には金髪で赤い目をした女性がいた。
彼女が纏う服は全体的に白っぽく…天使っぽい。
背景には星に埋め尽くされた夜空のような、そんな空間が広がっている。
「あ、え…?すみません。私…今何分寝てました?」
すっかり混乱した様子で、瞳は金髪にそう問う。
「…何分だろう。まぁ…そんなことはどうでも良いの。貴女はもう死んだの。だから、そんな仕事とか気にしなくて良い」
「え…私…クビになったんですか?」
瞳はだんだん萎縮していく。
まるでとんでもないやらかしをしたかのように。
「……はぁ…?旧帝大卒の癖にまだ状況が呑み込めてないの?」
金髪はそうぼやき、そして何かに気づいて、瞳の頭に触れた。
瞳は次の瞬間、久しく忘れていた『健康』という身体の状態に様変わりした。
それと同時に、今の状況が段々把握できてきた。
「…ねえ、頭は冷えた?」
「あ、はい…えっと……はい」
「はぁ…やっと落ち着いて話ができるわ」
瞳は金髪の前に正座をして、黙って話を聞く体勢をとった。
「とりあえず、私は貴女の担当をやることになった女神よ。はぁ…学歴的にもっとこう…物分かりのいい子が来ると思っていたのだけど」
金髪…女神は目頭を押さえながらそう言う。
「…本当に申し訳ございません」
瞳は女神相手にナチュラルに土下座をした。
「いや、怒ってる訳ではないわよ。で、アンタには幅広い転生の選択肢があるわ。死んでしまった年齢、学歴、徳なんかを総合的に加味した結果ね」
女神は頭を下げ続ける瞳相手に、上からそんな言葉を浴びせた。
「……え、私が…転生ですか?」
顔を上げ、瞳はそう聞き返す。
「そう。転生。あぁ…もしあれなら元の世界に霊として戻って、アンタの職場の上司を呪い殺すとか、そういう選択肢もあるけれど?」
瞳は上司の『課長』の顔を思い浮かべ、そして小首を傾げた。
呪い殺す?あんなに社会人として立派な人を?何故?
「…はぁ…軍人にでもなればよかったんじゃないかしら」
「……ええと…私ごときがなれる職業ではないですから」
今度は女神が小首を傾げた。
…何を言っているんだ…コイツ。
女神はだんだんイラついてきた。
今回の仕事は実質ボーナスステージみたいなものだと思ってたのに、こんなヤツが送られてくるなんて…
ただ、彼女とて女神である。その感情は表に出さず、とりあえず要望を聞くことにした。
「アンタ、転生先の希望は?特殊能力でも付ける?」
「……ええと…転生……私如きにそんな資格は無いと思うので、できればその権利を他の人にあげてください」
…めんどくさい!!
女神は完全にカチンと来た。
「…もういいや。アンタ、自分で決められないんなら私が全部決めるから。今日からアンタは…そうだ。不老不死よ」
女神がそう言うと、瞳の意識は再び深い所へ落ちていった。




