第一章 星々はまだ見ていない 第十話 素晴らしい絵
その日の夜
高層階から見える東京の街
ベランダから、月明かりが入り込んでくる。
新島美紗都
「今日は、習い事が少なくて助かりましたわ」
「そうですわ!あの絵師さんのSNSでも見ましょう!」
薄黄色の綺麗な髪をお団子にして、顔にはスキンケアパックを付けてスマホを弄る。
楓牙からメッセージで送られて来た「偽物の仮面」のSNSのリンクを押して、「偽物の仮面」の絵を見る。
美紗都の顔が、自然と明るくなる。
「偽物の仮面」には、アナログ、デジタル、水彩画、油絵、アクリル画、日本画、版画などなど多種多様な技法・画法で描かれた絵が、一日に3枚ほど、多い日は7枚ほど投稿されていた。
全ての絵が、プロ級だと一眼見れば分かる。
だが、プロフィールには、「アマチュア絵師兼画家です」と書かれてあった。
投稿された絵のコメント欄には…
「絵がとても上手ですね!」
「こんな上手い絵を描けるなんて、プロフィール詐欺じゃ〜ん!」
「アマチュア画家兼絵師なんてでしゃばんじゃねぇよ!こんな上手い絵をアマチュアって!アマチュアに失礼だろ!」
など、少しキツイ言い方のコメントはあったが、基本的に賞賛するコメントが多い。
美紗都は、すぐにプロフィールを確認して、慌ててフォローする。
新島美紗都
「もうすぐ、スマホの使用制限に掛かりますわ」
「今日は、ここまでですわ」
美紗都が、スマホの電源をきろうと電源を押そうとすると…
ちょうど、「偽物の仮面」の通知が入った。
美紗都は、即座にSNSの画面を開く。
其処には…
「今日は、アナログで描いた千本桜の風景画を投稿する予定でしたが、描いてる途中に紅茶を溢して絵を濡らしてしまったので、今日のこの時間の投稿出来ません。」
「申し訳ございません。」
と、同時にアイコンのキャラがペコリと謝罪してる絵が一緒に投稿されていた。
美紗都は、少し落胆してしまうが、切り替えて電車を切って、ベッドの中に潜り込んで、部屋の電源を落とす。
________________
午後22時…
様々な絵描き道具が、少し雑に置かれてある。
トイレとお風呂が別の部屋にある10畳ほどの部屋
其処には、リビングには、ベッドや小さな机、簡素なキッチン
最低限のものしか置かれていなかった。
机の上には、学校のお昼休みの時間に描いていた、群馬県前橋市の‘ 赤城南面千本桜 ’の風景画が色鉛筆を使用した写真の様な絵がスケッチブックに書かれてあった。
神鏡虚無
「ふぅ…描き終えた」
「疲れたぁ…色鉛筆は、筆圧とかでも変わるから疲れやすいんだけどね」
虚無が、立ち上がり、リビングの電気を消す。
窓の月明かりを頼りにベッドに潜り込んで、眠りにつく。
深夜2時
時計が、深夜2時をさしていた。
ベッドには、誰もいなかった。
誰かが、眠りについていた跡だけがあった。
ベランダから、黒髪の少女が月を見ていた。
その顔は、少し寂しそうな目をしていた。




