76章 ペン吸い
当時、通学路に生えている花をちぎって吸うのが流行っていた。
甘い蜜が出ているのだ。
中学生にも何をやっているのか…と思った。
奴らもクラスの奴らもなんでも口に入れ吸う。
それだけなら気持ち悪いし嫌悪感が湧くだけなのだが
奴らは人にも、口に入れ、吸わせるのを強要する。
―また俺だ。
奴らは
「これ吸ってみろ」
と差し出した。
ボールペンだ。
意味が分からない。
ボールペンを吸う?
奴らはボールペンを分解し芯を取り出した。
「吸ってみてよ」
俺の芯の上の方を咥えさせられた。
怖かった。
インクが入るのではないかと。
こんな体験したことも聞いたこともない。
少しだけ吸って何も起こらなければ満足するだろう…
そう思い俺は少しだけ「吸った」
すると…
なんと少し吸っただけなのに
一気にインクとインク止め?の透明なジェルが口の中に雪崩寄せた。
思わず吹き出し吐き出す俺。
すごい量だ。
奴らはゲラゲラ笑っている。
服も吐いたインクで真っ黒になった。
ボールペンのインクは密度がこんなにもあるのか。
俺は青ざめ、すぐさま手洗い場で何度もうがいをした。
何度も何度もしてもインクが落ちた気がしなかった。
毒を飲んでしまったような気がし、具合も悪くなってきた。
死ぬのでは…と当時は考えてしまった。
習字でもやったかの真っ黒な服。親は何も聞かなかった。
翌日、ボールペンの持ち主が俺に「損害賠償」として
1000円を要求してきた。
お前も奴らに持ち物を奪われた人間だろうが。
なぜ俺には強気になるのか。
俺は悔しく、俺の前でだけ悪になり、普段は善人になっているこの男にも怒りを覚えた…




