75章 話すの禁止
当時俺によく何度も話しかけてくる女子がいた。
ただ、俺に好意があるわけではなく、
命令で話しかけているのか、
俺に話しかけることが一種の度胸試しなのか、
自然とそんなことを考えてしまう。
しかし、別に直接悪口を言われるわけでもないため
俺は自然と好意を抱くようになった。
―ある日。
―奴らだ。
奴らは俺が女子に話しかけられていることが不満らしい。
「しゃべられても無視しろ」
と脅しをかけてきた。
どんな理由でも俺が女子と接することは許されないらしい。
哀れな奴らだ。
しかし俺は断れず、圧の強い言葉に肩をこわばらせうなずくしかなかった。
女子が話しかけてきた。
俺は話せない理由も話せず、ただ黙って逃げるしかなかった。
それを見て、奴らも他の女子も…
―その女子も笑っていた。
悪い予感は当たっていたのだ。
俺は今後、自分を嫌う人間だけでなく、嫌わない人間まで疑わなければいけなくなった。
35歳の今は、嫌う人間はいるが嫌われない人間はいない。
俺が人を拒絶し、人も俺を拒絶して誰も話しかけてこなくなった。
あの時、信じられる人がいれば…
35歳の俺は少し変わっていたのだろうか。
大学へ行ったり、
正社員になったり、
車を買ったり、
家を買ったり、
彼女が出来たり、
結婚出来たり、
していたんだろうか。
俺は、あの時から、何もない。




