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72章 ゆとり乙
中学の頃、親が貰ってきたノートパソコンを家で使っていた。
ネットにも有線で繋がっていた。
俺は学校の苦しみを世間に求めた。
―しかしネットの声は冷たいものだった。
「ゆとり乙」
この一言がまず発せられ、俺の味方をしてくれる人は一人もいなくなった。
「自業自得」
「どうせ嘘」
「顔写真を上げれば信用する」
「痛いガキ」
「これだからゆとりは」
―大多数の、おそらく大人のネットのコメント一つ一つで息が止まった。
ゆとりとはゆとり教育のことだろう。俺はその世代である。
ネットでは、ゆとり世代は叩いていいものとされていたのだ。
生まれた時代で差別されても俺にはどうしようもなかった。
俺が何を言っても何を説明しても
「ゆとり乙」
の一言で誰も相手してくれなかった。
俺の居場所がないのは学校だけではなかった。
どこへ行っても俺の存在は否定された。
35歳の今でも
「ゆとり乙」
と稀に煽られる。そのたびに胸が苦しくなる。




