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63章 印鑑付きボールペン
美術で賞を取り、印鑑付きボールペンをもらった。
太いボールペンで、上のほうに自分の名字の印鑑がついている。
高いものかはわからないが、高級感がありとてもうれしかった。
クラスの奴らは俺の受賞に誰も興味を示さなかったがどうでもよかった。
むしろ絵に文句を言われると思ったので安心した。
―しかし奴らの興味は俺でなくボールペンにあった。
中学生からすれば画期的で面白い「おもちゃ文具」であろう。
俺もわくわくしたが、奴らもそのようであった。
俺からボールペンを奪い、あちこちに印を押す。
俺の名字が落書きに使われる。
そして奴らは飽きた後、ペンに噛みついたりつばを吐いたりし…
―トイレに捨てた。
俺はゴム手袋を付け拾い懸命に洗った。
だがいくら洗っても、気持ち的に奴らの臭いや付着物が取れる気がしなかった。
水洗いしたので印鑑は使えなくなってしまった。
俺は手元に奴らの何かがついているものを置いておきたくなかった。
―絵も捨てて、一連の流れをなかったことにした。




