41章 パチ
持久走大会があった。
俺はかなりの好成績を収めることができた。
部活ではいつも球拾いか筋トレしかやらせてもらえなかったので、いつの間にか体が鍛えられていたようだった。
自分でも気付かなかった。
そして学年で9位に入ることができた。
初めての「成功体験」だった。
俺は大いに喜んでいた。
―奴らだ。
奴の一人が俺に近づき話しかける。
「ぼく君何位だった?」
俺は包み隠さず9位であることを伝えた。
すると…そいつは切れた。
「パチこいてんじゃねえよ」
…嘘ついてんじゃねえよという意味だ。当時は「嘘をつく」ことを「パチをこく」と俺の周りで呼ばれていた。
どうやら自分より順位が上だったのだろう。
俺は渡された順位表を黙って出す。
そして奴は
「うぜえんだよ」
と言い破り捨てた。
俺が9位である証拠は消えた。
教師は持っているのだろうが、俺が頼んだところで改めて証明はしてくれないだろう。
そして「パチこき僕くん」と周りがはやし立てる。
どうやら強引に俺が嘘をついていることにしたいようだ。
そして奴ら以外にも広まる。
女子などが近づいてきて
「うわ臭い」
と言ってくる。走り終わったのだから汗臭いのは当然だろう。
それに「臭い」と言うのはよく効く悪口なので当時はいろんな奴がいろんな奴に言っていた。
その調子で他の奴らも「パチをこいて自分の成績を盛っている俺」に対し
自分の知ってる一番強い言葉を浴びせてくる。
それが正義の行いで俺が悪者になっていた。
奴らは自分たちが正しいことをしている、ということにするために俺を悪人にする。
そして周りの奴らもそれに乗り俺を攻撃する。
俺の成功体験は思い出したくない行事の一つになり、以降本気で走ることはなくなった。




