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この病院、治ります。ただしーー  作者: アル治


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4/7

第4話  3人目

いつも読んでいただきありがとうございます。

 裏口から入った廊下は、やけに長かった。

「……なあ、戻れるよな?」

 泥棒Bが何度言ったか分からない同じことを聞く。

「戻れる戻れる。ビビりすぎだって!」

 Aは軽く笑いながら歩く。

 だがその足音は、どこか落ち着かない。

 廊下の奥。

 薄暗い光の先に、ドアが1つだけあった。

 プレートには番号。

 「A-18」

「……いかにもって感じだな」

 Aがドアノブに手をかける。

「待てって……」

 Bの制止を無視して、ゆっくりと開く。

 中は——

 静かな病室だった。

 ベッドが2つ。

 1つには、誰もいない。

 もう1つには——

 意識不明の患者。

 呼吸器の音が、一定のリズムで鳴っている。

「……なんだよ、普通じゃん」

 Aは拍子抜けしたように言う。

「いや……普通じゃねぇだろ」

 Bは後ずさる。

「こんなとこ勝手に入って……」


「だから何もねぇって」

 Aは部屋の中を物色し始める。

「金になりそうなもん……っと」

 引き出しを開ける。

 何もない。

「ちっ……」

 その時。

 背後でドアが閉まった。

 バタン!

「……おい」

 Bが振り返る。

 ドアは完全に閉まっていた。

「さっきから勝手に閉まるんだけど……」

「オートだろ」

 Aは気にしない。

「それよりさ——」

 ふと、ベッドの患者を見下ろす。

「これ、もしかしてアレじゃね?」

「アレって何だよ」

「1晩で治るってやつ」

 Bの顔色が変わる。

「……やめろよ」

「いや、考えてみろって」

 Aはニヤリと笑う。

「普通は2人でやるんだろ?」

「……多分な」

「じゃあ3人ならどうなる?」

 沈黙。

「……は?」

「3人なら、死ぬ確率減るんじゃね?」

「いや、そういう問題じゃ……」

「つまりさ」

 Aは肩をすくめる。

「俺たち、死なねーんじゃね?」

 その言葉に、Bは何も返せなかった。

 代わりに——

 ピッ……ピッ……という音が、少しだけ乱れた。

 2人の視線が、同時に患者へ向く。

「……今、動いたか?」

 患者の指先が、わずかに震えた。

「やめろって……」

 Bの声が震える。

 Aは1歩近づく。

「……面白ぇじゃん」

 その時。

 部屋の電気が、一瞬だけ暗くなった。

 チカッ——

 そして、戻る。

「……今の何だよ」

 Bが呟く。

 返事はない。

 ただ、心電図の音が——

 さっきより、わずかに早い。

 ピッ、ピッ、ピッ……

「なあ……やっぱ帰ろうぜ」

「まだ何もしてねぇだろ」

「いや、なんか……おかしいって」

 Bはドアに手をかける。

 ガチャ。

 開かない。

「……は?」

 もう1度回す。

 ガチャ、ガチャ。

 開かない。

「おい、開かねぇぞ!」

「壊れてんだろ」

 Aが適当に言う。

「壊れてるってレベルじゃねぇって!!」

 その時。

 患者の目が、開いた。

 ゆっくりと。

 だが焦点は合っていない。

「……っ!!」

 Bが息を呑む。

 患者の口が、わずかに動く。

「……ぁ……」

 声にならない声。

 Aは逆に笑う。

「おいおい、マジで起きたじゃん」

 だがその瞬間。

 Aの身体が、ピクリと止まった。

「……?」

「どうした?」

 Bが聞く。


「……なんか……」

 Aは自分の胸に手を当てる。

「……息、しづら……」

 言葉が途切れる。

 同時に——

 患者の呼吸が、安定し始める。

 ピッ……ピッ……

 ゆっくりと、落ち着いていく。

「おい、やめろよ……」

 Bが後ずさる。

 Aの顔色が、目に見えて悪くなる。

「ちょっと待て……これ……」

 Aは何かを言おうとして——

 そのまま、膝をついた。

「おい!!」

 Bが駆け寄る。

 だがその時。

 患者が、ゆっくりと上半身を起こした。

 呼吸器が外れる。

 音が止まる。

 静寂。

「……は?」

 Bの視界が、揺れる。

 目の前には——

 立ち上がろうとする“患者”と、倒れていく“仲間”。

 どちらが生きているのか。

 分からなくなる。

 そして。

 患者の口が、ゆっくりと開く。

「……なあ」

 その声は——

 どこか……



Aに似ていた……


4話も読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。

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