表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この病院、治ります。ただしーー  作者: アル治


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

第3話  入れない理由

いつも読んでいただきありがとうございます。

 昼下がり。

 病院の前には、静かな日差しが落ちていた。

「……なあ、ほんとにここで合ってんのか?」

 建物の陰でしゃがみ込んでいる男が1人。

 キャップを深く被り、工具箱を抱えている。

「合ってるって。ここだよ、“なんでも治る病院”」

 隣にいるもう1人は、やけに自信満々だった。

 胸には適当に作った“水道局”のバッジ。

「いや、そのバッジ絶対偽物だろ」

「バレなきゃ本物だよ」

 泥棒AとB。

 どちらも、まともな職には就いていない。

「いいか?こういうとこはな、金持ちしか来ねぇんだよ。

 つまり——中に“金になるもん”がある」

 Aはニヤリと笑う。

「で、俺たちは水道局のフリして潜入。

 適当に中見て、良さそうなの盗む」

「いや普通にヤバそうだろここ……」

 Bの視線の先には、名前のない病院。

 静かすぎる。

 人の出入りが、ほとんどない。

「行くぞ」

「マジかよ……」

 2人は立ち上がり、堂々と正面入口へ向かった。

 自動ドアが、静かに開く。

 受付には、白衣の女性が1人。

「いらっしゃいませ」

 泥棒Aは胸を張る。

「水道局の者でーす!」

 即答だった。

「当院は契約しておりません」

「……え?」

 想定外の返しに、Aが固まる。

「いや、あの……最近、水質がちょっと……その……危ない感じで」

「問題ございません」

「えっと……」

 横でBが小声で言う。

「契約してないのに水質って何だよ……」

「うるせぇな!」

 Aは咳払いを1つ。

「じゃあガス!!ガス漏れの点検で!!」

「当院は電気設備のみです」

「……」

「……」

 沈黙。

「もう帰ろうぜ」

 Bが小声で言う。

「まだだ!!」

 Aは無理やり食い下がる。

「ネズミ!!ネズミ出てますよね!?」

「出ておりません」

「……ネズミ……ガス……」

 Aがぽつりと呟く。

 受付嬢は微笑みを崩さない。

「ご用件がないようでしたら、お引き取りください」

「……」

 完全敗北だった。

 2人はそのまま外へ出される。

 自動ドアが閉まる音が、やけに静かに響いた。

「なんだよあそこ……」

 Aは舌打ちする。

「絶対なんかあるだろ」


「だからやめとけって言ったじゃん……」


「いや、逆だろ」

 Aは建物を見上げる。

「“入れない”ってことは、入られたら困る何かがあるってことだ」


「それはそうかもしれないけど……」


「裏口探すぞ」


「えぇ……」

 2人は建物の側面へ回る。

 そこには——

 監視カメラが1台。

「うわ、めっちゃ見てるじゃん」

 Bが引く。

 Aは構わず手を振る。

「お疲れ様でーす!!」

 その瞬間。

 カメラが、ゆっくりと動いた。

 ギギ……と音を立てるように、2人を追う。

「……今の自動だよな?」

 Bの声が震える。

「……ああ」

 だがAの目は、どこか楽しそうだった。

「いいじゃねぇか。面白くなってきた」

 その頃、病院内。

 受付の女性の前に、1人の男が立っていた。

 スーツ姿。

 手にはメモ帳。

「噂を聞いて来ました。記者です」

 女性は無言で視線を向ける。

「どんな病気でも治ると?」

「お答えできません」

「では、治った人がいるのは事実ですか?」

 一瞬だけ、間。

 そして——

「はい。治ります」

 記者のペンが止まる。

「……その代償は?」

「お答えできません」

「患者はどこに?」

「お答えできません」

 すべて、同じ答え。

 だがその中で1つだけ確かな言葉が残る。

 治ります。

 記者はゆっくりと顔を上げた。

「……なるほど」

 その目は、すでに確信に近い光を帯びていた。

「これは——“記事になる”」

 外では、泥棒たちが裏口を見つけていた。

「ほらな、あっただろ」

 非常口のような扉。

 鍵は、かかっていない。

「……やめとけって」

「来たんだから入るだろ」

 Aは躊躇なくドアに手をかける。

 ギィ——……

 静かに、開いた。

 中は暗い。

 人の気配はない。

「ほら、余裕じゃん」

 Aは笑う。

 その奥に、細い廊下が続いていた。

「なあ……戻ろうぜ」

 Bの声は、もう完全に弱気だった。

「ビビりすぎだって」

 Aは1歩、踏み込む。

 その瞬間。

 背後で、ドアがゆっくりと閉まった。

 バタン。

「……」

「……今、風だよな?」

 返事はない。

 ただ、廊下の奥から——

 規則的な“ピッ……ピッ……”という音だけが聞こえてくる。

 心電図の音。

 その音に導かれるように、2人は歩き出す。

 知らずに。

 “選ばれる側”に入ったことも知らずに…

3話読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ