表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お茶会狂想曲  作者: 鹿島きいろ
26/30

26. とある侍従のおぼえがき(抜粋)_氷の月~桃の月

【オトゥール暦532年 氷の月 3日】

陛下に呼ばれて、戻ってきた殿下の様子が変だった。

見るからに気落ちしている。

話をきくと、殿下のお妃候補を選ぶお茶会が決まったらしい。

確かに、殿下は、いい年だ。

王太子殿下には、オージアス殿下の歳には、既に二人子供がいらっしゃったはず。


王族として生まれたのだがら、政略結婚の意義をわかっているはずの殿下だが、私は知っている。殿下には、心を寄せる女性がいる事を。本人は隠しているようだが、長年殿下の傍で侍従として仕えている私には、殿下のお気持ちはまるわかりだ。


だが、彼女は確か下級貴族の出。今の殿下ではちょっと家格が開きすぎて、難しいのでは。だが今は外政も内政も安定しているし、王太子でもないから、まだ望はあるかもしれない。


それよりも、彼女はおそらく殿下の気持ちには、全く気づいていない。これは、家格の差よりもむしろ、彼女に振り向いてもらう方が、大変なのではないだろうか。



【オトゥール暦532年 氷の月 15日】

本日、彼女が、殿下の好みの女性を聴きに来た。

あまりにも唐突で、殿下のお気持ちに気づいている私としては、思わず吹いてしまい、彼女には不審がられ、殿下には睨まれてしまった。


そういえば、先日、お茶会の統括が決まったとの事で、統括担当者が挨拶に来るというので、殿下と執務室で待っていたら、その担当者は、なんと彼女だった。それを知った時の殿下の顔ったら、もう!本人は、上手く動揺を隠しているつもりのようだったが、私には、充分その動揺が伝わりましたよ、殿下!


そうそう、好みの女性。

殿下は、彼女をやさしく見つめながら、彼女の特徴を言い、一生懸命伝えようとしているのだが、肝心の彼女は、殿下のお言葉を一言も聞き漏すまいと、必死に書き記している為、殿下の真意には、全く気づいていない様子だった。



【オトゥール暦532年 桃の月 2日】  

連日のように、彼女は、お茶会の確認やら決定事項やらで、殿下の執務室にやってくる。その度に殿下は、彼女の滞在時間を引き延ばそうと、お茶やお菓子を餌に釣ろうと頑張っているが、仕事に一生懸命な彼女は、殿下の意図には全く気づかず、考える間もなく即断り、直ぐに執務室を辞してしまう。憐れ、殿下。



【オトゥール暦532年 桃の月 14日】

今日の殿下はちょっと違う。いつも仕事に一生懸命な彼女を見越して、市井で最近話題だというお菓子をわざわざ取り寄せ、彼女が持ち帰れるように、予め包んでおく作戦に出た。そして、ようやく彼女に渡す事に成功したのだ!良かったですね、殿下!



【オトゥール暦533年 桃の月 19日】

今日は、お茶会の衣装デザインの打ち合わせの日。彼女に選んでほしかったらしく、殿下は、頑張って彼女に話を振るが、彼女は、王妃様と揃えた方が良いという理由で、殿下の衣装を薦めていた。殿下がしょげているのが、離れていても良くわかる。

      

そして、なぜか殿下は、予算が余っているのであれば、使用人の服も新調するよう指示を出す。きっと彼女の“揃えた方が綺麗”という案を尊重したかったのだろう。しかし、彼女は聞いた瞬間、青ざめていた。おそらく、頭の中で予算の事を、高速で計算しているのだろう。外部の人間がいる中、予算がないとも言えず、これは、ちょっと彼女が可哀そうだった。



【オトゥール暦532年 桃の月 24日】 

本日、彼女が執務室にやってきて、先日殿下が送ったお菓子の詳細を聞きにきた。彼女に気に入ってもらえたらしい…と思ったが、どうやら違うらしい。殿下の差し入れという事で、全て第三部の文官達が全て食べつくしてしまい、肝心の彼女は一つも口にしていないらしい。


せっかく殿下は、彼女に渡せたというのに!

まあ、一人で食べるには、ちょっと多いなとは思ったけど。


その事を聞いた殿下は、私に、お店の情報を彼女に渡すよう指示すると共に、あのお店の全商品を綺麗に包装して、彼女に贈るよう追加で伝えてきた。“全ての品”という点で引っかかったが、殿下の希望通りにすることにする。しかも、即日贈る念の入り用。すぐさま、対応すべく作業をしていると、隣の仮眠室から、「なぜだー!」と叫び声が聞こえた気がしたが、たぶん気のせいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ