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お茶会狂想曲  作者: 鹿島きいろ
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25. 彼女と私と私の事情

本編12話

殿下が積極的になるちょっと前位の殿下の心情です。

ジョアンナは、私の初恋の相手だ。


でも、彼女には、その気持ちを伝えた事はない。

いや、結婚してくれと幼い頃に言った事はあるが、その幼き日を除外すると、自分の思いを伝えたことはない。


彼女は、私の乳兄弟の妹で、良く三人で遊んだ。

乳兄弟のアンドリューは、活発で、私とも良く気が合った。彼女も同じくお転婆で、三人泥だらけになるまで遊んでは、良く怒られた。


彼女が私と距離を置き始めたのは、思えば、昔からある侯爵家の令嬢と私が婚約した頃だろう。


兄に連れられて、いつも一緒に来ていた彼女だったが、徐々に回数が減り、最終的にはアンドリューのみ、私の元へやってきて遊んでいた。


「なぜ彼女が来ないのか」とアンドリューに聞いたが、苦笑いするばかりで、明確な答えは返ってこなかった。小さい時は、男女関係なく遊べるものだが、大きくなれば興味も変わってくるし、とても寂しいが、そんなもんかなとも思っていた。


そして、彼女が僕を呼ぶ名も「オーディー」から「殿下」へと変わったのも、この頃だ。なんだが、ひどく彼女との距離を感じてしまい、とても寂しかった。



私は、王族であるから、政略結婚は当然のことである。

当然のことであるからこそ、なんとなくジョーへの自分の気持ちに気がついてはいたが、あえて名前をつけてこなかった淡い彼女への気持ちは奥底へと仕舞い、許嫁である侯爵令嬢と関係を築くことに努力をしていた。だが、結婚まで、あと数年と言うところで、侯爵令嬢は、流行病に侵され、治療もむなしく、あっけなく亡くなってしまったのだった。


喪が明けるやいなや、周りの大人からは、次の婚約者はどうするかと話されるようになったが、自分の気持ちは、まだ直ぐに切り替えられるものではなかった。十年間婚約者の彼女と結婚するものだと思っていたのだ。そんなに直ぐに切り替えられやしない。


母は、私の気持ちを慮ってか、しばらく結婚の話は遠ざけてくれた。幸運にも私は、王太子ではないし、内外共に政治情勢も安定していた為、急ぐ必要がなかった私は、母の采配に甘える事にしたのだった。




再び私の心が動いたのは、ジョアンナが文官になって、数年たった頃だった。


しばらく会う事のなかったジョアンナ。


彼女は、下級貴族の為、私たち王族が出席するような社交界には、顔を出さない。彼女のデビュタントの時に、確かに会ったが、あの時は、まだ婚約者が存命だった。自分の婚約期間中のあの気持ちはどちらかといえば妹に対するソレだと思い込むようにしていたし、あの晩餐会でとても綺麗な女性に成長していた彼女に心が揺れたのは、気のせいだ。と思うようにしていた。


そして、文官として、一生懸命に頑張る彼女を、王宮内でたまにではあるが、見かけていた。そして、見かける度に、彼女を目で追っていたことに気がついた時、なぜ目で追っていたのか考えた先の思惑にビックリし、しばらく自分の気持ちに正直になれなかった。


彼女への気持ちが確実な物となり、自分でも、その気持ちが認められるようになったのは、私をサポートする部に彼女が配属になる頃だった。


だが、浮かれていたのは、私だけだったらしい。


配属の挨拶をしに、私の執務室に訪れた時には、彼女はすっかり文官らしくなっており、私に対する態度も口調も、そして、目線もあの頃とは全く違う。もうあの幼き日のような関係ではない事に、私は気づかされたのだった。



私は、彼女が仕事をしやすいように、良き王族として振る舞うべきなのだろうか。と悶々と考える事、数年。やはり彼女への気持ちが抑えきれず、いざ、彼女の気持ちを手に入れようと動こうと思ったが、全くどうして良いのか分からなかった。


自分なりに頑張っていたが、彼女には全く響いておらず、どうにも彼女には、良い上司としてしか見られていない気がする。だが、私は、王族だ。あまり無理じいをしてしまうと、命令になってしまう。彼女の気持ちがこちらに向かないまま、命令で結婚するようなことは、したくない。


塩梅が難しい。



そうこう手をこまねいているうちに、私の集団見合いの話が上がってしまった。私の気持ちが癒えるのをずっと待っていてくれた母が言い出した事で、どうにも断り切れなかった。母としては、臣下に下る前に、身を固めてほしかったのだろう。


しかも、ジョアンナが統括だと知った時は、頭を抱えてしまった。なんという巡り合わせなのだろう。なぜ、心を寄せている女性に、自分の結婚相手を選ぶ会の全力支援を受けないといけないのだ。


だが、私は考えた。彼女は下級貴族。このまま、恋仲になったとしても、貴族社会では風当たりが強いはず。であるならば、彼女を守る為にも、このお茶会を利用して、高位貴族でも該当なしとなれば、下級貴族である彼女にも問題ないと言われるのではないかと、愚かにも思ってしまったのだった。


しかし、この時、私はすっかり忘れていたのだ。彼女は魅力的な女性で、彼女にも結婚する可能性があるという事を。考えてみれば、文官は男ばかりではないか。同僚に上司に後輩と、男ばかりじゃないか。


それに、縁談だって家宛に来ているはずだ。むしろ、何で今まで嫁に行かなかったのだ!その事をそれとなく、彼女に聞いてみたら、「文官の仕事が好きで、気がついたら、こんな歳になってしまいました。」と言っていた。


そうか、彼女は仕事が好きなのか。それでは、私が臣下に下り、領主となったら彼女に好きなだけ仕事をさしてあげようじゃないか!むしろ、一緒に仕事ができる!なんてすばらしいんだ。彼女と手と手を取り合って、領地を経営する!考えただけで、数日は寝ないで仕事が出来そうだ。


あれ、殿下、意外とヘタレ?

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