過去の話って、なんかエモいよね?使い方が違う?そうか
過去編いち?
ー数年前
「はぁ…はぁ…」
「渉!こっちだ!!!」
「美優!行くぞ!」
「おにぃ…。待って…。」
霊脈の暴走により、怪異が溢れ出し自分の家も周りの街も燃え上がり地獄のようになっている。
怪異は、逃げ惑う人々を嘲笑うかのように嬲り、殺し、飽きればおもちゃのように投げ捨てる。
数日前に挨拶したお隣さんも、教室で話していた学友も死んでいった。
少しでも生き延びるため、逃げ続けている。
この現象は後に、百鬼夜行として後世へ語り継がれるが、それはまた未来の話。
体格の大きい怪異が多いため、細道を使って逃げてきた。
ただ、まだ中学生である自分や小学生の妹では、体力にも限界があり、1回の移動で移動できる距離がどんどん少なくなってきた。
「渉!美優!あと少しよ」
母の声が聞こえ、妹の手を引っ張り走っていく。
突然の事態により、制圧部隊の到着がおくれ、死者の数を増やしていく。
なんとか数日逃げ切っていたが、簡単に逃げ切れるほど現実は甘くなかった…。
「はぁ…。はぁ…。」
「囲まれた…。母さんと渉、美優だけでも…!」
「だめよ!あなた!あきらめないで!」
ぎゅっと父の裾を掴む母。
何も出来ない自分に嫌気を指す。
前方には、大鬼。後方には、酒呑童子。
ニタニタと気持ち悪い笑を浮かべながら、こちらへとにじり寄ってくる。
振りあげられる棍棒…。
妹だけでもと庇おうと抱き寄せると。
「危ない!」
大鬼、酒呑童子へと飛んでくる銃弾。
不意の攻撃により、よろける大鬼たち。
突然現れたお姉さんは、自分の手を引っ張り父と母、美優を連れて脱出した。
「ありがとうございます。」
「とりあえず安全地帯へ行きましょう」
「美優、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ママ」
大鬼達に追いつかれないよう走るが、大鬼は先程の攻撃に怒り心頭となりものすごい勢いで突進してくる。
その攻撃の予兆を感じ取ったのか、お姉さんは俺を母の方へ放り投げ、防御の体制をとるが勢いがすざましく、塀へ飛ばされてしまった。
「ぐはっ…!」
身体の中の空気が漏れるようなくぐもった声。
「お姉さん!!!!」
「私を置いて、早く行って!君たちだけでも!!!!」
「嫌だ!自分のせいで誰かが死ぬの嫌だ!」
「私の事はいいから、早く逃げて!」
お姉さんを置いていくことが出来ず、妹もお姉さんへと駆け寄ってくる。
その妹の後ろから、棍棒を振りあげる大鬼。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
全力で走り出し、妹を抱き込み自分を盾にする。
痛みに耐えるように、思いっきり目をつぶる。
が、衝撃も痛みもこない。
数分待つが、何も来ない。
というより、周りの雑音さえ聞こえない。
ゆっくり目を開けると
時間が停止していた。
そうとしか言いようがない。
後ろの大鬼も振り上げた棍棒を持ったまま動いておらず。
離れた所にいる両親も、走り出す直前の状態で停止している。
「なんだこれ?」
「おにぃ…。怖い…。」
ぎゅっと服を掴む妹。
「2人とも大丈夫かしら…。」
「お姉さん!お姉さんこそ大丈夫?」
「ええ、私はとりあえずね…。なんとか動けるわ」
「これはお姉さんの異能?」
「いえ、私は対怪異兵隊の訓練生だけど、異能持ちではないわ」
「じゃあ、なんでこうなったんだろう…。」
『間に合ったようね』
唐突に聞こえる声。
そして聞こえてくるぐぐもったフルートとオーボエ、野蛮な太鼓の連打の音。
聞こえた方向へ銃を向けるお姉さん。
「誰?出てきなさい!」
『安心して、敵ではないわ』
十字路の物陰から出てきたのはー
名状しがたき形の異物だった。
黒い塊のなにか。
そして、異質的威圧が場を制圧した。
その姿、その存在感が自分の正気度を削ってくる感覚が襲いかかり、歯を食いしばる。
『あ、ごめんね。私、人類の前に出ることないから配慮にかけてたわ』
そういうと、目の前の物体は、みるみるうちに人型へと変形し、聞こえてたぐぐもったフルートとオーボエ、野蛮な太鼓の連打の音は鳴りやんだ。
『これでいいかしら』
ブロンズの長い髪をポニテにして、グラマラスな体型。カウガールのような服装をした美少女が現れた。
絶句とは、このことを言うのか…。
『あれ?あそこの男性の趣味嗜好がこの姿だったんだけど…。なにか間違えた?』
顔を抑える俺。
絶句し、軽蔑の目を父に向ける妹。
苦笑いで誤魔化すお姉さん。
キョトンとする美少女。
数分後、気を取り直すように、話しかけるお姉さん。
「ごほん。とりあえず助けていただきありがとうございます」
『いえいえ』
「その…助けて頂いた手前、聞くのもあれなのですが、貴女は味方なのでしょうか」
『そうねぇ。味方といえば味方かな』
「どういうことでしょう?」
『落ち着いて話をしたいし、この場を収めたいのだけど』
「わかりました。といいたいのですが、私には、あれを倒すほどの力がないのです…。」
『ふふふ、私が力を一時的に貸してしんぜよう!』
胸を張る美少女。
その言葉を聞き
「俺も…。俺でも戦えますか?」
「私も!」
『いいけど、覚悟できてる?戦うってことは、それ相応の覚悟が必要だよ?今なら、助けてもらった一般人という立場に甘えられるよ?』
「何も出来ない自分が嫌なんです!傷つくお姉さんも家族も見たくない!」
「私も!庇われるだけでいたくない!」
「だめよ、怪異との戦いは犠牲が付き物よ。私が戦うから!」
「俺も戦います!お姉さんに守られるだけでなく、守れる立場になりたいんです!」
「何言ってもダメそうね…。わかったわ、無理だけはしないでね」
「はい!」
『話はまとまったかな。一時的に、3人に力を与えるよ。とりあえず、敵の殲滅と安全地帯の確保。それが出来たらこれで呼んでね』
お姉さんに、不気味な形の笛を手渡す美少女。
「わかったわ。」
『では、始めようか』
唐突に額に触れられ、ヒンヤリとした感触にゾクとした。
そして、自分の中に流れ込む不快な感覚に耐えてると
『一時的に力を与えたよ。君たちに貸した力は、この世界で言う神化と同系統の力。男の子の君は、私との親和性が高いのか、私達の力と似たものを扱えるよ。小さい君は、情報操作系統。あらゆる情報の解析、改ざんができる。そして、夢の世界への侵入さえできる。そして、そこのお姉さんは、圧倒的な力と魔力を扱えるよ。いうのであれば、星間を飛びまわる風の神々の首領といったところかな』
「確かに、今まで以上に力を感じるわ。制御がむずかしそう」
「私も万能感に支配されて、油断しそう…。」
「俺も…。けど、なんか変な感覚が…。」
『もしかしたらと思ったけど、皆、私達と親和性高いね。いい拾い物をしたかな』
「私達?」
『それはおいおいね』
「わかった」
『では、この領域を解除するよ。君たちは時間が止まった時と同じ状態から時間が動き始める。さっさと大鬼と酒呑童子を消し去って私を安全なところで呼んでね!』
「「「はい!」」」




