プロローグ前の話というかなんというか
プロローグ前の話です。
この世界は、怪異と科学が共存する世界。
怪異とは、霊脈が吸い取ってしまった穢れ。要するに生き物の負の感情を溜め込み過ぎたが故に、外にその穢れを追い出す。その追い出された穢れが怪異となり、地上をさまよい始める。
一つ一つは、大した力もなくすぐに消えてしまうのだが中には、強い力を得るものが現れる。
それが、都市伝説やらホラー作品等に描かれる化け物として、出てくるのだ。
また、脅威度により、討伐ランクが定められ、EXからDランクまである。
脅威に晒される人類は、対抗手段を得た。
それが対怪異用兵器ヴァルキュリアス。
ヴァルキュリアスとは、怪異が現れる原因となる、霊脈。その霊脈を分析することで、霊脈から現れる怪異に対抗できるのではないかと仮説。その霊脈の力を科学的観点とオカルト的観点から、対怪異向けのアプローチを模索。あらゆる実験の結果、あらゆる怪異に対抗できる武器ヴァルキュリアスが生まれた。
ただし、ヴァルキュリアスは、誰にでも扱えるわけではない。扱える人間が限られてるのだ。
そして、そのヴァルキュリアスを扱える人間を保護並び対怪異戦士として育成する機関として、神大高等学校が生まれた。
ただ、ヴァルキュリアスだけが怪異に対抗できる手段というわけではない。
時として、人には異能が生まれる。
そして、異能の中には怪異に対して有効な異能も存在する。
その異能者のうちの一人、俺、神崎 渉は自室にて人生最高ともいえる瞬間を味わっていた…!
「神大高等学校 合格…。」
志望校であった高校の入試試験の結果をPCで確認しており、何度見ても出てくるのは『合格』の文字。
神大高等学校とは、対怪異兵器ヴァルキュリアスの使用者の育成機関であり、対怪異戦士の育成機関の側面を持つ学校だ。
異能者の出現により、対怪異兵器だけでなくとも怪異に対抗できることが分かり、ヴァルキュリアス使用者だけではなく、異能者も受け入れるようになった背景がある。
ただし、誰でも入れる訳ではなく素質があるものしか入れないと聞いており、最初は夢かと思った。
しかし、何度も見返すが光り輝く合格の文字が表示される。
そして現実を実感する…。
「いやっほぉぉぉぉぉぉぉ!合格したぞォォォォォ!!!!!」
「おにぃ!うるさい!!!!」
唐突に開け放たれるドア、ドアの先にいるのは、妹である神崎 美優ことマイエンジェル。そして、高速で放たれる枕。
回避する猶予もなく、俺にクリーンヒット!
「ぶべぇら!?」
あまりの衝撃により、吹き飛ばされる俺の体。そのまま床に着地。
「ごほっ…。これは将来、野球選手だな…。ってごふ…。」
俺の体を吹き飛ばした枕がそのまま顔面に落下してきた。
そして枕から漂う女性の甘い香り、そしてこの香りの奥に潜むラストノートは…。
「おにぃ、なにしてるの?」
「枕から漂うマイエンジェルの香りを楽し…」
バカ正直に答えなければいいものを、マイエンジェルの前では嘘をつけず、そのまま口にした。しようとした。
言い終わる前に、放たれるマイエンジェルの正拳突き。
見事に鳩尾にクリティカルヒット。
「ごほっ…。もう少し手加減を…!」
「ホント、信じられない!枕をぶん投げた私に非があるけど、匂い嗅ぐことある!?普段は、そんな事しないのに私のことになる時だけ、デリカシーなくなるのどうにかならないの!?」
どうにか起き上がる俺。
「マイエンジェルの匂いだ。五感六腑滲み渡らせないと!」
「このっ…!」
羞恥のあまり顔を真っ赤になり、ふるふる震えるマイエンジェル。
可哀想に。変態に目をつけられたばかりに。
「とりあえず返して!」
枕を取られた。悲しい…。
「ご殺生なぁ!」
マイエンジェルの枕をどう入手しようかと算段をつける。
え?何故、妹にこんなにご執心なのかって?
当たり前だ!マイエンジェルは、遺伝的なブロンズの髪!絹のような美しい髪!そして、ギャルのような格好!何より、誰に対しても優しい!
倫理的、論理的に違反してる趣味には、個人的な範囲であればどうでもいいと言う。害をなすなら容赦はしないと。
要するに人道的に外れることでなければ、サブカルチャーにも、理解を示す。
何を隠そうマイエンジェルは、世にも珍しいオタクに優しいギャルを体現したような娘なのだ!
こんな絶滅危惧種、保護して可愛がる他無いだろ!
もう1人、マイエンジェルと同種の我が主にて我が女神でおられるマリア様もいるのだか、それはおいおい。
マリア様にも、神大高等学校の合格通知の件、報告しに行かないとな。
1人でうんうんと悩んでると、マイエンジェルは俺のPCを覗いたらしく
「お、おにぃ合格したんだ!おめでとう!ママとパパにも言わないとね!」
自分の事のように喜ぶ、マイエンジェル。
心が綺麗なマイエンジェルの笑顔はやはり素敵だ。
「ああ、そうだな。」
「おめでとうございます。これで念願の時空の狭間の調査に向かえますね」
「Taulu、ありがとう。これで本格的に調査できるな」
こいつは、taulu。
諸事情により、家に居候してる付喪神的存在。
普段は、俺や美優のスマホに取り付き、俺らのサポートをしてくれてる。
現在は、家庭内で普及してる家事ロボットに憑依してるようだ。
家には、父の趣味で、女性型メイドロボットがいるのだが、そいつに取り憑いてる。
父はいい趣味をしてるらしく、金髪ポニテの出るところは出ているグラマラスなボディーのギャルメイドモデルを買ったのだ。
もちろん、母には怒りの鉄槌を叩き込まれたのはご愁傷さまって感じだ。
「やっとこさ、あの神に恩返しする機会がきたな」
「そうだね、早く解決しないと」
「我が主様も困っております。この世界の特異点を修正しなければ、あの時の百鬼夜行が再来し、異次元の記憶が逆流してきてしまいます」
百鬼夜行とは、霊脈が暴走し、怪異が溢れ出す現象。霊脈が一定の周波数を保ててれば発生しないが、稀に膨大な魔力が地上に流れた時、霊脈が暴走し異界化せず、様々な怪異が暴れ回る現象のことをいう。
「ああ、あの時は神様が力をくれたからどうにかなったが、もう一度あのような奇跡が起こるはずもない。早く時空の狭間の封印をしないとな」
何故、俺が神大高等学校に拘っていたのか、時空の狭間とはなにかを語るには、過去の出来事を語る必要がある…。




