プロローグ
妄想を形にしてるシリーズです。
ところどころ至らぬ点があると思いますが、頭空っぽにして見てくださると幸いです。
神大高等学校内部
本校1階ー廊下にて
異界化が進み、鎮圧部隊に被害が出始めた頃ー
「九重隊長!!!!」
部隊の一人から、悲鳴に近い声が上がる。
「くっ…。しまった…。まさかここまでの怪異が出るとは…。 」
九重隊長と呼ばれた男は、腕を怪異に潰されてしまい武器を失ってしまった。
「まさか、大鬼が出現するとは…。ここは俺が身代わりになる!早く撤退するんだ!」
「嫌です!隊長!!!皆で逃げましょう!」
そう叫ぶ部下たち。
このままでは、部隊が全滅してしまう。
足手まといの自分が身代わりに…。
ーその時、一瞬にして空気が凍てつく様な冷たさを醸し出した…。
誰も声が出せなくなった。
あまりにも異質な空気感、そして奥から漂ってくる体の奥底に刻まれたような恐怖が場を支配していた。
「(何だこの恐怖…。凍てつく空気と絶対に出会ってはいけないものと対面するようなこの感覚は)」
目の前の大鬼や部下たち、そして自分でさえ動けなかった。
そう、いうのであれば動けば死ぬ。
廊下の奥の暗がりからコツコツと子気味のいい音が鳴って、こちらに近づいてくる。
誰も動けず、誰も話せない。
撤退したいのにうごけない。
対面すれば待つのは、「死」であるのは、頭で理解しているのに動けない。
生き物に刻まれた恐怖は、蛇に睨まれた蛙ように動けなくなるのだと頭ではなく体で理解した。
とうに、腕が潰された痛みは彼方へと消え去り、意識を失いそうなほどの恐怖を意地で耐えてる。
「(こんなレベルの怪異が出現するとは…。部下たちだけでも何とか…!)」
そう思い、気力で動こうとしたそのときー
コツコツとなってる音は近づいて、音を立てた者が姿を表した。
その者は、黒く長い絹のような髪。貌には狐の面。誰もが見とれるような体型。気品溢れる黒を基調としたドレスのようなワンピースを纏い、足元はヒール。
狐の面の奥の瞳は、虹色の輝きをもってこちらを俯瞰していた。
見た目は、高校生程度。存在感と彼女が放つプレッシャーは異次元級。
「(なんなんだ、この子は!)」
誰も恐怖によるパニック状態になっていないのが奇跡なレベルであった。
少女は静かに口を開く。
「なんなの、この体たらくは。この程度の泥人形に遅れを取るとは人間というのはそうも脆いものなの?」
凛としたすずのような声。
そして、投げかけた質問に誰一人として答えられない。
恐怖で言葉が出ないのだ。
少女は、すこし考えた後。
「なるほど、恐怖で声が出せないのね。
これでいいかしら。」
突然、恐怖で麻痺してた体に自由が戻った。
慌てて、大鬼を見るが未だに動けないように見える。
「しかし、何かしらこのありさま。この泥人形に対して苦戦するなんて。おおよそ、この泥人形を倒せるような戦力がないか、そこの貴方が負傷しているがゆえの戦力ダウンってところかしら。」
右手の人差し指を上空に向けた。
なにかの予兆を感じ、回避行動に出ようとしたそのときー
少女の上空に向けた指から、鍵のようなシルエットの光が表れ、虚空にガキ穴の紋様が浮かび上がった。
鍵穴に、鍵を差し込み、光の鍵を浮かべたその指で鍵を開けるような動作をした後、虚空から本が落ちてきた。
少女は、落ちてきた本を拾い上げ、読み始めた。
「識別名:大鬼。階級:超級。討伐推奨人数:10人。
お前たち人間は、星の数ほどいる泥人形を、一々識別しているのか?
どういう基準だ…?人間側の戦力が低迷して…?」
少女は、色々思案したのち、読んでいた本を落とした。
そして、その本は虚空へと消えた。
「人間側の情報を取り出したとて分かりはしないわね。異界側の情報と見比べるべきね。後ほど、tauluにまとめさせましょう。」
この子はいったい。それよりも、早く部隊を撤退させなくては…!
部隊へ、指示を出そうとしたそのとき。
おもむろに少女が大鬼の前と出た。
「この泥人形は、私が片付けよう。」
大鬼へ手のひらを向けた瞬間、手のひらから鍵のような光が表れたと同時に大鬼の体に鍵穴の紋様が浮かび上がり、その鍵穴へ鍵を差し込んで言った。
「往ね!この学園は、明日私が通うことになる学園だ!異物はお帰り願いましょう!」
何か聞き捨てならない単語が聞こえた気がしたが、彼女の行動が読めず、動きに注視した。
おもむろに少女は、鍵を捻るような腕の動きをした。
その瞬間、大鬼の体に浮かび上がった鍵穴の紋様が光放ち、大鬼の体が物理的に真ん中から、扉のように開かれていった。
その瞬間、突然吹き荒れた吹雪に目を覆い、目を開いた瞬間…。
目の前には、氷漬けの廊下。
そして、体が半分に開かれたまま氷漬けになった大鬼。
そして、この結果は当然といったような態度の少女。
「この程度なのね。せめて、気概を見せてほしいところよ。」
「なんなんだよ…。これ」
誰ともなくポツとこぼした一言。
「私の夢の邪魔をしようとするものを潰したのみ。夢を叶えるためのテリトリーを侵害されて許すほど私は優しくはない。」
少女は当然だと言うような態度で言い放った。
少女は、腕が潰された隊員を見た後
「そういや貴方、腕を潰されてたわね。ふむ…。」
少女は、おもむろに右手中指を、腕の潰れた隊員に向けた。
その兵隊に、鍵の紋様が浮かび上がる。
「隊長を離せ!!!」
大鬼に起きた事象が、脳裏から離れず同じ現象が隊長に起きるのではないかと1人の隊員が少女に向かって、発砲しようと銃を構えた。
他の隊員も、続くように武器を構えたが…。
少女は、怒気を含んだ声で
「邪魔をするな!」
たったその一言で、萎縮し動けなくなった。
隊長も逃げようと体を動かすが…。
「(動けない!大鬼もなぜ動かないのかと思ったがまさか、この紋様が浮かび上がったら終わりだとは)」
この先の未来は確定してしまった以上、できることは…。
「隊長命令だ!全員逃げろ!生きてここで起きた出来事を伝えてくれ!」
決死の覚悟で叫んだ。
その行動に少女は驚き、
「なんという気概。素晴らしい!
ただ、部隊のトップとしては素晴らしいけど、生物としては生きるために抗うべきね。」
少女は、嬉しそうな声音でころころと笑い
「貴方を害するつもりでもない。トップを失って統率の取れない部隊を率いてこの空間から出るなどという面倒事に関わりたくないわ」
そういって、鍵穴の紋様へ鍵を差し込み捻る動作を行った。
鍵穴の紋様が開かれ、紋様が消えた後、隊長の腕がみるみるうちに元通りになっていった。
それはまるで、この異界化した校舎に入る前のような状態へと。
何が起こったのか理解ができず、潰されたはずの腕を見ていると、隊員のひとりが隊長へと抱きつき
「よかった…。よかったです…。」
と、涙声で喜んだ。
他の隊員も、つられて泣きながらよかったと口々に言った。
隊長は、少女にむかって
「すまない、助かった!そして、部下たちの非礼にお詫びがしたい」
「いえ、結構です。ただ、憐れだと思って助けただけなので」
毅然としたものいいで言った少女に、隊員の一人が激昂し、銃を構え
「隊長にむかって、その物言いはなんだ!」
「その玩具で脅し?貴方は、力の差が分からないほど無知なのかしら?」
少女と兵隊の間に割り込み、少女へ激昂した隊員を片手で制止させ
「すまない、助けてもらった手前、部下が失礼なことを言い」
少女は少し驚き、
「貴方は、私の挑発にのってくださらないのね」
「ああ、制圧部隊である俺たちが苦戦した相手をものの数秒で倒されてしまえばな。実力もわかるってものだ」
「そう」
「ちょっとすまない。連絡をとっていいか?」
「ええ、構いませんわ」
許可をいただき、無線で他の制圧部隊へと連絡をいれた。
連絡を終えた九重隊長は、少女へと向き直った。
「すまない、他の部隊に加勢に行きたいのだが」
「その前に聞きたいことがあるのだけど、少しお時間頂ける?」
「他の部隊も被害が出てるんだ、すぐに合流したい。制圧完了後でもいいか?」
異界には、ごく稀に人間に友好的な怪異が現れることもある。
彼らを友好怪異と呼び、彼らは助けた見返りとして好奇心を満たす為なのか質問をしてくる。
大抵、制圧後の異界崩壊前に回答するという対応でも友好怪異は納得してくれるのだがー
目の前の少女は、凍てつく恐怖を発した。
また、恐怖が身体をつつみ、行動を封じる。
「(友好怪異と思ったが、対応を間違えた!?)」
少女は、おもむろに右手を前に突き出し
「情報解析」
数十秒のち、少し驚いた顔をしたのち、ポーカーフェイスに戻り
「人間の個体数が20。内5体が目の前ということは、4部隊編成ね。負傷者が3。泥人形が153。
私からすると、さっきのぐらいの泥人形かが3体しかいないのに苦戦する意味がわからないわ。
思わぬ発見もありましたし、さっさと終わらせて質問させて頂きましょうか」
少女は両腕を突き出すと、手のひらから大きい光の鍵が出現し、虚空から光の鍵穴が出現。
無線がやたらと騒がしくなり、怪異や、負傷者の体に光の鍵穴が突如出現したことによりパニック状態となっていた。
そのようなパニックを知らずか、少女は詠唱を始めた
「一は全に。全は一に。我が夢の跡地を踏み荒らすもの。我が眠りを妨げるもの全てを等しく灰へ…」
少女詠唱により、少女の足元には、赤黒くうねる魔法陣が展開され、あらゆる空間に鍵穴が出現した。
「ー汝、許しを乞え。
多次元空間事象変異」
詠唱完了と同時に、無数の鍵穴が開かれ、怪異は死滅し、負傷者は全部位回復するという超常現象が発生した。
「こんなものかしら」
「各部隊、状況を報告せよ!」
『こちら1番隊。周囲の怪異およびユニーク個体の消滅を確認!負傷者がいましたが、現在光の鍵穴の影響か回復を確認。』
『こちら2番隊。1番隊と同様消滅を確認。異界化閉会の予兆も確認しました。』
『こちら3番隊。1、2番隊同様消滅を確認。負傷者ゼロ。』
「了解だ。4番隊も怪異の消滅を確認。先程の事象は、4番隊と接触してきた友好怪異が起こした事象の可能性大。報酬を渡してないため、対応を行う。」
『了解』
「話は終わったかしら?」
少女が話しかけてきた。
「ああ、すまない。質問に答えよう。」
「その前に、他の人たちをここに連れてきてくれないかしら?確保した人たちを誘導するのを任せたいわ」
「…っ。了解した」
友好怪異が、巻き込まれた一般人を助けることはほぼない。
怪異である以上、力のない一般人を助けることがない。これが通説だからだ。
まさか、異界の特異化によりここにいた友好怪異もイレギュラーになってるのか?
可能性を考えながら各部隊をこちらに来るように連絡。
友好怪異の特異化の可能性もあることを考慮し、指示に従うよう通達した。
「そろそろいいかしら?」
「ああ、なんだ?」
「ありがとう。今年からこの学園に入学なのだけど、制圧部隊?がこの体たらくで治安守りますって言われても信用ならないの。その程度の実力で治安を守れますの?」
「はっ…?」
これが彼女との初遭遇であり、この後の頭痛の種となる「神崎 渉」との出会いであった。




