光
暮れかかる前の秋の黄金の陽が、一段色を増した空から遠くに見える街に、細かな粒子を降り注いでいる。
粒子を受けて輝く教会から聞こえてくる鐘の音と、地平線に向かう舗道と、色とりどりの屋根並み。
アリステアは自室の窓辺に立ち、空と遠くの街を見ていた。
もうじきに日が暮れる。
季節を問わずに大好きなこの時間。
春の眩い夕焼けと夏の赤い夕陽。秋のオパールの宝石のように輝く雲と夕暮れ。冬の、夜の前の時間。
いつも私は、自室の窓から大好きな空を見上げていた。
…。
最近も…そして、今日は…。
今日は、ただ『レッド様』を見たかった。
ルミエールの騎士様達は、この時間にいつも私の窓の下を通って行く。
宿舎に戻るのか食堂に行くのか、空を見上げる私の目の端に入っていた。
彼らから聞こえてくる笑い声と、『レッド様』を呼ぶ声。ふざけ合ったり、真剣な表情だったり、それに答える『レッド様』の笑顔。
細かな表情は分からないけれど、優しい笑顔。
恋とか愛とか…、そんな理解できない物ではなくて、私とは切り離された世界を生き、私にとっては手に入らない『青春』を垣間見ている感じだった。
だけど、今日は違う。エミィが話す『レッド様』と、私が見つめていた『彼』は同じ人なのか…知りたかった。
私には叶わない、名前の付かない気持ち。行き先ない気持ち…。
(見たところで…)どうにもならない現実だけが目の前にぶら下がっていて胸が苦しい。
やがて、開け放された窓の外から、楽しそうな彼らの靴音と話し声が、何かのメロディのように…私を包みこんだ。
見つからないように窓の半分までカーテンを引いて、柔らかいカーテンの陰から下を覗きこんだ。
震える胸音と色づく頬。
彼らは楽しそうに、私の窓の下を通り過ぎて行った。
ほんの数秒だった。
やっぱり、エミィが教えてくれた『レッド様』だった。
それだけで満足だった。
だから、胸の奥がチクチク傷むの…。




