光
パイプオルガンと楽隊の演奏の中、ラッパ音とともに聖堂の重そうな少しづつ扉が開いていく。
外の世界から眩しい太陽の光が入り、放たれた道は白く遠く身廊を走り、会衆席に立つ人々を仄白く照らしていた。
レッドが目を見張ったのは、その後だった。
父親らしい男性(?確か、公主は亡くなったはず)に付き添われて、花嫁のアリステアが入ってきた。
肩から胸元のフリルとレース、丸い半袖の下から伸びる細い手をレースで包み込んでいる。ドレスいっぱいについている飾りやレースが重そうで可哀想になったくらいだった。
肝心の花嫁は少し俯き、柔らかそうなウェーブの髪を結いあげて、真っ白なベールで顔も後ろ姿も、全てを…隠しているように見えた。
まるで、捕らえられた『人魚姫』のように見えるのは、自分の思い過ごしであってほしい。
…と、心の中で願った。
音楽と男性(?)に促されて、歩みを進める花嫁。窓から入る色とりどりのステンドグラスの光が、花嫁を無機質な床の上に白く浮かびあがらせ、歩くたびに裾の幾重にも重なったレースが揺れている。
少しづつ進む花嫁がレッドの前を通りかかった時に、自分達騎士団を伺っていたような気がした。そして、確実に目が合った。
自分を見つけた。
ほんの数秒…だけど、気のせいなんかじゃない。
忘れられない数秒。
目の裏が熱くなった数秒。
この気持ちがなんなのか…自分で理解できない。
もう、この場にいる自分が許せなくなっていた。追いかける事も逃げ出す事もできない。
…この気持ちに説明もできない。
通り過ぎる『花嫁』を見送りながら、心の暗闇に芽生えた微かな光の揺らぎに瞳を閉じた。
祭壇の前に着いた花嫁を花婿のルドルフ殿下が迎え、式は着々と進んで行く。
見たくない『誓いのキス』の場面。
花嫁は怯えて、身を固くしている。どうする事もできなかった。
見守り続ける観衆の前で、ルドルフ殿下は花嫁の薬指にはまった指輪にキスをして、式は終わった。
怯える若い乙女に対する年長者の態度としては、満点なのだろう。
誰も不快にならない決断だった。
だから誓った。
自分の『内情は隠してお護りする』と。




