光
ルドルフ殿下に、殺されるかもしれなかったところを『みんな』に助けられ、煙の匂いとルドルフ殿下の恐怖に追われながら無事に城から逃げだせた。
腰が抜けたように座り込んで、落ち着いて見上げた顔は…「レッド様」
ドキドキが止まらない。
心の中で、割れそうなほどに鐘が連打される。
ときめきが止まらない。
不思議な確信が生まれた。
勘違いかも知れない。
それでもいい。
…私の人生は祝福されたんだ…と。
だから、レッド様に私の人生を掛けた。
(お願いだから…)心が叫ぶ。
「私を連れて逃げて下さい」
私を…ここ(生き地獄)から連れて逃げて。
黒い夜空を背景に、火の粉の流れ星が飛び交い、熱く赤く燃え落ちる城。
逃げ出した人達の悲鳴が聞こえてくる。
「今、なんて…?アリステア様」
「レッド様」の戸惑う声と、躊躇う表情が炎で赤く染まっている。
「レッド様」の表情を見ていたら…私のときめきが薄れていった。
そう…だよね。
…迷惑だよね。
知らない女…それも王家の嫁に「連れて逃げて」は、自身の死活問題になる。
さっきまで「レッド様」と話していた団長が、座り込んでいる私にうやうやしく礼をして言った。
「アリステア様。レッド達の指揮官のブレアと申します。少しだけレッドと話をして参りますので、今しばらくお待ち頂けますか?」
頷くしか…ない。
ブレア団長と「レッド様」は私達から少し離れた所で、2人で話し込んでいる。
…私の事だろう。
「アリス様、これを着て下さい」
エミィは、どこからか持って来てくれたローブを私にかけてくれた。
今は気づかれていないけど、いずれ私が助かった事は城の人間達に知れてしまう。ルドルフ殿下やお母様に見つかってしまう…。
そうなる前に…ここから離れたい。
そっと回りを見回す。
私達に付き添っているカナン様。
カナン様は、前にエミィが「好ましい」と言っていた…人。確かに、良く見れば優しそうな人に見える。
「好ましい人」の横にいるエミィが普通の態度をしている…。普通、好きな人の横にいれば違う気がするのに…。
私には、解らない事がある…のかな。
団長と俺はアリステアを見える位置で、周囲に誰もいない事を確認してから話を始めた。
自分達が、アリステア嬢の私室に入った時の事、ルドルフ殿下の言動や、アリステア嬢の事を見たままに報告した。
右手で顎を支えるように考え込む団長。これは団長が本当に試行錯誤中の行動だった。
時間が長く感じる。心配そうにこちらを見るアリステアの表情が見えない。
やがて「行こう」とだけ言うと、団長はアリステア嬢の元へと歩き出した。




