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『聖母の意志を紡ぐ王太子 〜裏切りと呪いの王宮で、僕は真っ直ぐ生きると誓う〜』  作者:


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第六話 月下に暗躍する影

お読みいただきありがとうございます。

第四話 です。

話数変更しました。


シャルロッテの「宣託の儀」が終わり、グランベルム侯爵とノックス家当主の二人は、重苦しい無言のまま廊下を歩いていた。

向かう先は、第一側室であるマティルデの宮殿――**『月下宮』**の一室である。

二人が部屋に入ると、待ちわびていた二つの声が彼らを迎えた。

「お父様、おかえりなさいませ」

第一側室マティルデと、第二側室エルヴィラである。

扉が静かに閉まるやいなや、マティルデが痺れを切らしたように矢継ぎ早に尋ねた。

「宣託の儀は、一体どうなりましたの!?」

グランベルム侯爵は落ち着き払った様子で重々しく椅子に腰掛け、低い声を響かせた。

「ただいま、マティルデ。そう慌てるな。……聖女の神託自体は下された。だが、その直後にすぐ気を失ってしまったよ。あれでは到底、使いものにはならんな」

続いて、どこから発せられているのか分からないような、不気味で冷徹な声が重なる。魔導家筆頭、ノックス家当主だ。

「その通りです。あの様子では魔術の行使どころか、まともな発現すら覚束ない。いくら強大な魔力があろうと、宝の持ち腐れでしかないでしょうな」

客観的で正確な分析を淡々と口にするノックス家当主の言葉に、マティルデは満足そうに口元を歪めた。

「まあ! なら、本当にただの『ポンコツ』確定なのですわね。これまでは単なる噂に過ぎませんでしたけれど、これで堂々と周囲に言い散らすことができますわ」

勝ち誇ったように扇を揺らすマティルデの横で、エルヴィラが静かに身を乗り出す。

「これからはどうするおつもりなのでしょうか? たとえ聖女と認定されたところで、使い物にならないとなれば宮殿に置いておくわけにもいかないでしょう。……やはり、教会にでも預けられて追いやられるかしら?」

「それなら好都合ではありませんこと! 尻尾を巻いて王宮から逃げ出してくれるということですもの!」

マティルデが歓喜の声を上げるが、グランベルム侯爵は重々しく首を振った。

「そう簡単にはいかんだろう。向こうにはまだ、生まれたばかりの赤んヴィルヘルムもいる」

「そんなにあの赤ん坊が大変なら……もう、今のうちに手を進めてしまえばよろしくなくて? ねえ……」

マティルデが物属な提案をほのめかすと、エルヴィラが冷ややかな視線でそれを制した。

「それはダメですよ、マティルデ様。今動けば、どれほど精緻に仕組もうと真っ先に疑われます。証拠があろうとなかろうと、王家と公爵家に付け入る隙を与えるだけです。」

「それもそうですわね……。じゃあ、一体どうするのよ?」

不満そうに口を尖らせるマティルデに、ノックス家当主の娘であるエルヴィラが、くすりと陰のある笑みを漏らした。

「まずは、向こうがどう動くかを静観しましょう。逃げ出せば良し。もし逃げずに王宮に居座るというのなら……居座ったところで、宮中に居場所などなくしてしまえばいいのですから。ねえ、お父様?」

「そうだ。どこに身を置こうとも弾き飛ばされ、誰も信じられなくなるよう、徹底的に追い詰めてやればいい」

そこでグランベルム侯爵は、思い出しかのようにノックス家当主に視線を向けた。

「それに……あの『呪い』は、確実に発動しているのだろうな?」

「ええ。イウローネの命はあと5年。そこからは、すべて我らのものです」

「ふふ、そうですわね。この5年ほどは好きにさせてあげましょう。そこから先は……生まれてきたことを後悔しながら生きてもらいましょう」

エルヴィラの冷徹な言葉に、グランベルム侯爵は満足げな不敵な笑みを浮かべ、静かに立ち上がった。

「なんとも恐ろしい話だが、確実だな。我が騎士団としてできることは、警備強化という名目でこちらから人を出そう。宮殿内にさらに息のつかった人間を送り込むのだ」

――コンコン。

その時、密談の部屋の扉が控えめに叩かれた。

「失礼いたします、マティルデ様。……先ほど、鈴蘭宮を監視させていた者から報告が入りました。シャルロッテ様、ヴィルヘルム様のお二人とも、このまま宮殿にてお育てになるとのことです」

扉の向こうからの報告に、室内が一瞬静まり返り――直後、グランベルム侯爵が不敵に口元を吊り上げた。

「ほう……そう来たか。逃げずにおるとは、勇敢と無謀を履き違えたか、我らが王は」

「そうですな。あるいは、あの生意気な公爵家が入れ知恵をしたか……」

ノックス家当主が忌々しそうに吐き捨てると、マティルデが優雅に扇をパチンと閉じた。

「本当にいまいましいわね、公爵家って。……まあ、いいわ。逃げずに残るというのなら、徹底的にやって差し上げますわ。『貴族的に』ね」

「ええ、やると決まったなら徹底的に……『魔導家として』刻んでさしあげましょう」

エルヴィラの冷酷な囁きに調和するように、四人の低く不気味な高笑いが重なり合い、離宮の闇の中へと溶けていった。

少しずつ物語が動きはじめました。

まだ王子は出てきませんが。

少し訂正行いました。

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