第二十九話 迫る足音、屈せぬ光
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第二十九話 投稿しました。
「何なんだこの森はよ。日は入らねぇわ、歩きづれぇわ、魔獣は出るわ……お頭、これ割に合わねぇよ。そりゃお頭はエルフが欲しいから良いんだろうけどよ。俺たちゃ損だろ」
「まあ、そう言うな。前金でそれなりにもらってる。魔獣の分でプラスになるんだ。ごちゃごちゃ言ってねぇで歩け。ちゃんと剥いだもんは持ち帰るぞ」
「へいへい。ったく、人使いが荒いお頭だよ」
「何か言ったか?」
「何にも言ってません!」
「ハハハッ!」
そこへ、樹海の暗がりからノックス家当主が滑り出すように現れた。
「おやおや、みなさん、遅かったですね」
「遅かったか。もらった地図を見ながら来たんだ、こんなもんだよ。早く来てほしいなら地図と一緒に道もちゃんとしてくれ」
「それはそれは、申し訳ございません。この森には色々と罠が仕掛けてありますので、皆様にはそれを避けて通っていただいておりました。……では、帰り道は真っ直ぐにいたしましょうか。皆様が普通に辿り着けるかは分かりませんが」
「……それならいい。帰りも安全な道で頼む」
「わかっておりますよ。では、私についてきてください。ここの結界を素通りしますので。ここからはもう一本道ですので、ご安心を。では、また後で」
男の姿が掻き消えるように消えると、手下が唾を吐き捨てるように呟いた。
「ホントに気味が悪い奴だ」
「黙ってろ。姿が見えなくなっても、奴は近くにいるんだ。……このまま行くぞ!」
◇◇◇
「ベゼラ様〜!! ヴィルヘルム様〜!! ……隊長、ここの森はいったいどうなっているんでしょうか? ほとんど人が入った形跡すらないような感じですね」
「仕方がない。ここは禁足地の周りだ。人が入る方が珍しい。魔獣は狩り放題だがな」
「なるほど、魔獣狩りをする冒険者には良いところなんですね。しかし、ここは来てないようですね。……っと!」
「シャァッ!」
「あっぶね!」
「言ったろ、魔獣は出ると」
「気づいてたんなら言ってくださいよ……しかし、ベゼラ様とヴィルヘルム様はいったい……どこに……」
「今は悩むな! 探し出して見つけることだけを考えろ!」
「ベゼラ様〜! ヴィルヘルム様〜!」
「……!!」
隊員の一人がハッと立ち止まり、奥の木々を指さした。
「隊長!!」
「どうした!? 何か見つけたのか?」
「あっちの方で何かが動いたように見えた!」
「ん?? あっちか? なんだ……姿は見えないな、もういないのか? しかし、あっちは……?? 地図を貸せ!」
「隊長、どうしました!?」
「いや、あっちは処刑場のはずだ! 結界が張ってあって入れないはず……」
「行ってみましょう、隊長!」
◇◇◇
木々の梢の上からは、二つの影がそのやり取りを静かに見下ろしていた。
「誰かが気づいたようだね」
「そのようですな。少し足跡を残しておきましょう。そうすれば追ってきてくれるでしょう」
「だといいね。格好からして彼らは騎士団員だろうから、こっちに来られるかどうかも怪しいね」
「それはそうですが、彼らの思いを信じて残しておくべきかと思われます」
「フフッ、そこまで言うなら残してあげて。ついでに、結界も通れるようにしとこうか」
「ありがとうございます」
「そうだね、彼らには味方になってほしいね。あの違和感に気づいただけでも大したものだよ」
「そうでございますな。後ほどお声をかけてみましょう」
「さて……そろそろ結界だよ」
◇◇◇
結界の奥深くに隠された処刑場跡。
「何だか、森がざわついてきていますね。……人がたくさん来ているようです」
冷たく湿った処刑場跡の最奥。幼いヴィルヘルムを抱きかかえたベゼラは、静かに呟いた。
「おやおや、何ともエルフとは恥知らずな生き物だ。こんなところで……もう3日も経つというのに、まだ死なないとは。詫びて死になさい。私が楽にして差し上げますから」
闇の中から姿を現したノックスは、蔑むような嘲笑をベゼラへ向ける。
「詫びる必要があります? あなたがヴィル様に詫びるというならいいですよ。それなら私が赦しましょう。それに、私が死んだら、ヴィル様を守れる人がいなくなります。……それは困ります!」
三日この場に縛られていようと、その背筋はまっすぐに伸びている。抱きかかえた腕にしっかりと力を込めたまま、ベゼラは静かで鋭い眼光をノックスへ向けた。
「何の心配ですかな、それは。あなたが死ねば、あなたの腕の中にある『それ』は私のものになりますよ。ですので、さっさと死になさい。でないと……これからあなたは大変な目にあうのですから……ね」
「……それは、脅しのつもりですか? あいにく、まだまだ死ぬ予定はありません」
ベゼラは不敵に唇の端を持ち上げてみせる。余裕すら感じさせるその瞳の奥には、力強い光が揺るぎなく灯っていた。
「……減らず口だけは達者ですね」
「よく言われます。なので、さっさと解放してください」
「嫌ですよ。あなたの苦痛に歪む顔が見たいんですから。せいぜい良い声で鳴いてください。私は特等席で見せてもらいますから。……それにしても器用なものです。そんな木の枝一つで赤子の世話をするとは」
「私たちは森に住むエルフですよ。これくらい出来て当たり前です」
「そうですか。まあ、それが最後の遊びとなるのですから、しっかりと堪能してください」
次回、ヴィルくん大活躍??




