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『聖母の意志を紡ぐ王太子 〜裏切りと呪いの王宮で、僕は真っ直ぐ生きると誓う〜』  作者:


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第二十八話 陣幕の裏側、思い描く希望

いつもお読みありがとうございます。

第28話投稿しました。


第28話 陣幕の裏側、思い描く希望

――時は少し遡る。王宮の庭園で、ベゼラとヴィルヘルムが転移魔法陣で攫われた事件の直後。

「ベゼラ様とヴィルヘルム様を必ず見つけだすんだ!! 北の立入禁止付近であると、魔導師団長からの言葉もある! 王国騎士団の名誉にかけて、お二方を必ず探し出せ!」

 王宮に集結した討伐隊の前に立ち、グランベルム侯爵は声を張り上げた。

「必ずこの一件を仕組んだ奴も近くに潜んでいるはずだ! だが気をつけろ。王宮で召喚されたあの魔物は、この私でもかわしきれない程の強敵であった! みな、心してかかれ!!」

「「「おおおおおっ!!」」」

 兵たちが散開し、陣幕の裏に数人だけが残されると、その場の空気は一変した。

「まあ、何とも見事な激励ですな。魔導師団の兵すらやる気になっておりますな。流石はグランベルム侯爵様でございます」

「見え透いたたわごとを。……向こうの準備は?」

「ご安心を。人数は整いました。後は、あの結界をくぐるだけですよ」

「あの結界は進入不可ではないのか? 抜け道でもあるのか?」

「あれは我がノックス家で張ったものでございますから。私がいけば通れます」

「そういう事か。……どこまでも茶番だな」

「では、全体の指揮は侯爵様にお願いいたします。私はあちらへまいります」

 立ち去る男の背中を見送りながら、グランベルム侯爵は一人ごちる。

「どこまでも気味の悪い……違うな……趣味の悪い奴だ。まあ、儂もこうやって王に媚を売ってるし……同じ穴のムジナだな。それにしても、なんとも気の弱い男が我れの王とはな。我らが悲願か……もしくは……」

 一方、陣幕を離れた男は、暗がりに潜んでいた傭兵たちへ向けて口元を歪めた。

「はてさて、筋肉バカと臆病者の相手は疲れますね。せいぜい私の手のひらで踊ってもらいましょう。さあ、みなさん、お待たせいたしました。お楽しみの時間ですよ」

「おいおい、そんな言い方していいのかよ。天下の師団長様がよ〜」

「ホントだ、俺たちはもらえるもんはもらえたらそれで良いけどな」

「お前ら、その辺にしとけ。大事なご依頼主様だぞ」

「で、報酬の件はホントに良いのかい」

「ええ。もちろんですよ。後、エルフの女と男の赤子もいますが、お好きなように。まあ、いらなければ私が処理しますので。使い道は、いくらでもありますので。ああ、こちらは前金です」

「……ああ……わかった。おい、お前ら行くぞ!」

 ノックス家当主から離れ、準備にかかる傭兵たちがヒソヒソと口を開く。

「お頭、あれは大丈夫なんですかい?」

「まあ、あれは確かに頭のネジはもうねえなあ〜。お前ら、ヤバくなったらすぐずらかるぞ。でねえとこっちがヤバい。金より命だ。……まあ、エルフの女は、なあ〜」

「ああ〜また、お頭の病気がでてらぁ」

「まあまあ、俺らも……なあ……」

「とりあえず準備するぞ! かなりヤバいとこらしいからな」

「へい!」

 ――一方、その頃。王宮では、執事長が賢者へ魔法通話を繋いでいた。

「けん……賢者……賢者様……聞こえますか?」

「珍しいね、魔法通話なんて。何かあったのかい?」

「はい。姫様とヴィル様が転移魔法陣で攫われました。申し訳ございません」

「それで、術式は?」

「おそらくベゼラ様の魔力に反応する時限式かと考えられます」

「なら、仕方ないね。……姫達の場所はわかっているのかい?」

「イウローネ様曰く、王都北の昔の処刑場との事です」

「ああ……あそこか……。確かにあそこならエルフを攫うには良いところだね。なら、そっちに向かうよ。森の入り口で会おう。急いでね」

「かしこまりました。私がまいります」

 ――そして、王宮の一室では。

「なあ……ベゼラ様は?? ヴィルは……どうして帰って来ないんだよ!? なあ……マリー……何があったんだよ!?」

「ヴィルくん……かあさん……どっか行っちゃった……」

「ミリアン様、落ち着いてください。ヘレナ様、ソフィー様も……大丈夫ですから……」

 パニックに陥るマクシミリアンと、不安に押しつぶされそうな幼い姫たちを、マリーは懸命になだめていた。そこへ、静かに扉が開く。

「みなさま、大丈夫ですよ。お菓子とお飲み物をお持ちしましたよ」

「婆や!」

「マクシミリアンさま。大丈夫でございます。ベゼラ様とヴィル様は絶対大丈夫でございます。爺やと賢者様が、二人のところにお迎えに行ってくれます。何の心配もございません」

「ホントに!? ホントだな? ホントに大丈夫なんだな!?」

「マクシミリアン殿下。婆やは、殿下に嘘をついたことがございますか?」

「……いや……ない……」

「そうでございましょう。ですので、安心して二人の帰りを待ちましょう。……ヘレナ様、ソフィー様、婆やと一緒にいましょうね」

「シャル姉さん……ヴィル……は……ホントに大丈夫だよね?」

「ミリアン……大丈夫よ……」

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