第十五話 闇夜に誓うエルフたち
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第十五話 投稿いたしました。
「また、失敗だと!? 貴様ら、一週間だぞ!」
「この一週間、貴様らは遊んでいるだけか!?」
「そんなに怒るものではありませんよ……原因は?」
「……申し訳ございません……爺さんと婆さんが……その、化け物じみていまして……申し訳ございません」
「化け物じみてとは、どういうことですか?」
「そのままでございます。二人とも、人間かと思うほどでございます。我ら全員でかかりましたが、生きて戻れたのはここにいる二人だけでございます」
「確か、傭兵十人と暗殺者ギルドから十人の、合計二十人でしたね」
「それが、二人しか生きて戻っていないだと!?」
「侯爵様、二人に心当たりはございますか?」
「爺さんと婆さんで公爵家となると、大方、執事長と侍女長の二人だろう。……それがどうかしたのか?」
「分かりました。相手は二人だけですね。……もうしばらく続けてください。お願いしますよ」
「それがどうかしたのか?」
「いえいえ、確認です。そのうち分かりますよ」
◇
誰もいないはずの公爵邸に、いくつかの影が蠢く。
「またですか」
「あっ……」
刃を交えるかすかな音ののち、影は崩れ落ちた。
「これで今夜も3人目ですね」
「こうも毎日毎日来られますと、老体には響きますね」
「ホントにね。ここをどこだと思っていて、なおかつ私たちがいるのを知ってて来るんだから。遣わされるこの子たちも可哀そうな話だよ」
「また……誰かが来たようですよ」
「この気配は……!? 賢者様……? それにベゼラ様……!?」
不意に現れた気配に身構えた二人だったが、その姿を確認して目を丸くした。
「賢者様に、姫様。どうしてこちらへ??」
「もう……私は姫ではありませんよ」
「そんな事はございません。私たちにとっては、姫様はどこまでも姫様でございます。もちろん、公式の場では『ベゼラ妃』と呼ばせていただきますゆえご容赦ください。……して、一体どうされたのですか?」
「王宮では誰の目があるかわかりませんので、こちらでお話ししようかと伺わせていただきました」
「そうでしたか。では、よろしくお願いします」
二人が深く頷くと、姿の変わった賢者が静かに口を開いた。
「私から話そう。私の見た目の説明は特にいらないと思うが、単純に若返っているだけだからね。そのほうが何かと動きやすい」
少し小さくなった手足を軽やかに動かしてみせた後、賢者の瞳に鋭い光が宿る。
「ここからが本題だ。姫は気づいたみたいだが、イウローネ妃とご子息全員が呪いを受けている。もっとも、姫のお子さんのソフィーは軽くしか受けていないみたいだがね」
「ソフィーのは私が外しました。ただ、完全に外すと術者に悟られてしまうので、表面上はかかっているように見せかけています。ノックス当主のあの祈りでしたから、かけられてすぐだったので私でも対処できました」
「流石は姫だね。そこまで気づいて対処したんだ。……だが、他の者たちは魂まで呪いが定着している。特にイウローネ妃にはかなりキツイ呪術がかけられているよ。……あと5年の命だ」
賢者の語る残酷な真実に、執事長と侍女長は息をのんだ。
「王のご子息全員に呪い……。しかも、お嬢様の命はあと5年だなんて……! 何とか、何とかならないものなのですか!?」
「普通には、無理だよ。あれは……」
賢者は静かに首を振り、夜の闇を見つめた。
「私たちエルフ、しかも『古代エルフの禁呪』だよ。私でもすぐには外せない」
「……外し方は、あるのですか?」
縋るように問う侍女長に、賢者は低く、重い声を落とした。
「あるにはある……が……誰かがその代わりに死ぬことになるよ……」
「……では、お嬢様に関しましては『手段がある』と思っておいてよろしいですな」
執事長は一切の迷いを捨てた瞳で静かに首肯すると、続けて問いを重ねた。
「では、ご子息様方はどのようなものでございますか?」
「シャルロッテとヴィルヘルムは力を抑えられている。他の二人も、それぞれ違う形で呪いを受けているはずだ」
「そちらに関しましては、外せますかな?」
「外すだけなら問題ない。ただ、完全に外すと術者に悟られる」
「かしこまりました。……この件、お嬢様には内緒にしておきましょう。後でお館様にも話を聞いておきます。策略を巡らせるのは、あの方の得意分野ですからね」
「……相変わらずだね。だからこそ、君たちに話そうと決めたんだ」
「恐れ入ります。お任せください」
賢者は小さく頷くと、ベゼラと共に闇へと姿を消した。
残された執事長と侍女長は、互いに一度だけ視線を交わす。
「ようやく、お嬢様へ恩返しができますね」
「ええ、今度こそ必ずお嬢様方をお守りしましょう」
「では、まずはここにいる招かれざる方々にお帰りいただきましょう。それからお館様にご報告に参りますよ。王宮内部では話せないとのことでしたからね」
「そうですわね。どこでお話をしましょうかね?」
「大変でしょうが、うちのお館様の悪知恵なら何か思いついてくれるでしょう。お嬢様のためです。思いついていただきます」




