曼珠沙華04
月白です。前作もご閲覧いただきありがとうございます!!!!!
今回はアクションシーンを頑張ってみました。
楽しんでいただけると幸いです。
翌日
凛蓮は螢灼に言われた通り、警察署へ足を運んだ。
勿論、用心の為にカラーコンタクトを付けて。
「(相変わらず、殺風景な所…)」
署内を見回しながら螢灼の後を大人しく付いていくと、会議室とプレートの掲げられた部屋に入るよう促される。
螢灼が中に入ると、捜査チームのメンバー数名が一斉に視線をドアに投げかける。
「螢灼…その人が今回の協力者か?」
「あぁ、そうだ。」
螢灼がはっきりと肯定の言葉を発し、一同は口々に思った事を率直に述べていく
「……本当に大丈夫か?いかにもか弱そうな、普通の人にしか見えないけど…」
「確かに。外見はモデル並だけど、弱かったら足手まといになるだけだし。」
「この際、顔や外見は我慢して相当強そうな奴に頼んだ方が無難じゃないか?」
口々に言われる内容に、凛蓮の額には幾筋かの青筋が浮かび上がり。
真横で立っていた螢灼は「何事も起きませんように…」と内心で呟いた。
「……ケイ。」
「は、はい?」
「此処に練習場とかある?」
「あ、あぁ……一応。…って、まさか……」
「今文句言った人たち“全員”連れてきて。」
にっこりと、有無を言わせぬ笑みで告げる凛蓮に螢灼は頷くしかなく
凛蓮を案内がてらメンバー全員を引き連れて練習場へ移動する事となる。
「さてと………皆さん、私に十二分に文句があるようなので実践してみますか?」
「実践?どういう事だ。」
「だから、私が強ければ問題ない事でしょう?あなた方から攻撃して、私がやり返せば認めますか?」
「おいおい。女に手をあげられるかよ。」
一人がそう言い、そうだそうだと同意する者が増えていき
凛蓮は苛ついた口調で、冷ややかに告げる
「……あんまり、差別用語ばかり使うと此方からしますけど?」
「やれるものならどこからでも?」
「……言った事、後で悔やんだって知りませんからね?」
ブラックスマイルと言う名が相応しいほど、螢灼の目から見た凛蓮の笑顔は怖く
見るからに油断している同僚に思わず憐れ…と思ってしまった。
螢灼が考えに耽っている間に、凛蓮は手始めにと近くで構えすらとっていなかった刑事の腕を掴み一本背負いを鮮やかに決める。
一瞬の出来事に螢灼以外の一同は呆然。
予想済だった螢灼はとっくの前に避難済で傍観を決め込んでいる
「やっぱり忠告しておくべきだったか…」
余程先程の言葉の数々に腹を立てていたのか、はたまた運動不足の解消であるのか。
どちらとも取れる勢いで、凛蓮は自分よりも体格の良い男性を次々と伸していく
そして数分が経過…
「これでもまだ、同じ事を言いますか?」
最後の一人の胸倉を掴み、軽々と上に持ち上げながら笑顔で問うと
刑事は半泣きで首を左右に振り。残った刑事らも同じように首を振って降参を示した。
「レン、すっきりしたか?」
「多少はね。本当は一人5回ずつくらい手合わせしてくれたら良いんだけどね。」
アハハと笑いながら簡単に恐ろしい事を口にする凛蓮に、刑事達は文字通り震え上がり
顔面蒼白になって二度と同じ事は言うまい…と心に深く刻みつけたようだった。
「もう一度聞きますね。私も、捜査に加わっても良いですよね?」
凛蓮が何処からか黒いオーラを纏いながら問うと、男達は首をガクガクと振って投げ飛ばされるのを未然に防ぐ
「捜査の詳しい内容については俺から説明する。取り敢えず、今日は射撃訓練もやってみるか?」
「え?良いの?」
目を輝かせて訊く凛蓮に、螢灼は苦笑し
共に練習場を後にして射撃場へ向かう。
二人の姿が見えなくなると、残された面々は深く息を吐き出し
口には出さないが凛蓮と対等に話せている螢灼が恐ろしくも勇ましく見えたとか。
その後射撃の確認を終えた二人が会議室へ戻り
主催される会場の地理を捜査員の誰よりも詳しく知っていた凛蓮が内部の地図の欠点を事細かに指示し
誰がどの場所に配置し、潜入するかを打ち合わせる
数時間後…
足取り重く帰宅した凛蓮と螢灼はソファに腰掛け溜め息を吐く
「まさか……オークション内で伺えって…」
「私なら顔が割れてるのに…」
「俺なら大丈夫だろうけどな。」
疲れ切ってしまったのか、凛蓮は早々とシャワーを浴びると寝室に籠もって眠りに身を委ねた。
父・凌灼の為にも、螢灼は吏皇の事が許せなかった
その娘である凛蓮も父親を憎んでいて、何処かで兄妹のような親友のような感覚をいつしか覚えるようになる。
それも一時的な事だと、あまり深くは考えずに螢灼は準備を整えていく
それから何日か経って
「なぁ、レン。少し時間あるか?」
「??あるけど……どうかした?」
「潜入する時に着る服、あの服ぐらいしかないだろ?だから、他のやつ買ってやるよ。」
「………嘘…」
「何でそうなる…」
「だって!ケイがそんな事言うなんて信じらんない…」
「お前なぁ……兎に角、行くぞ。」
「でもお金は?」
「だからあるって。」
「……闇金から借りたり?」
「じゃなくて!!ちゃんと俺の金だから!」
「………マジ?」
「大マジ。別に要らないなら行かないけど、どうする?」
「行きたい!」
「それで良い」
凛蓮と共に服を買いに行くと、螢灼は店員と何やら交渉し
店員は頼まれたモノを凛蓮に渡す
「これは…?」
「お連れ様から、これを試着するようにと…」
「ケイが?」
手渡されたのは白のチャイナドレスで
凛蓮は当惑した表情で螢灼を見る
「試しに着てみろよ。」
「でも……似合わないよ…」
「良いから良いから。似合うかどうかは着てからで良いだろ。」
凛蓮を試着室に押し込み、凛蓮は深く溜め息をつくと渋々ドレスに袖を通す
数分後
凛蓮ははっきりと戸惑った表情を浮かべたままカーテンを開け姿を現す
「あ、終わった………」
螢灼が凛蓮の方を見ると、思わず絶句してしまう
黒の髪に対照的な白が良く映えて、本当に凛蓮は綺麗だと実感してしまった。
「やっぱり似合うな……」
「似合ってないって……私に白なんて…」
「いや、似合ってる。偶には良いんじゃないか?あんまり着ない色を着るのも。」
「けど……」
「大丈夫だって。本当に綺麗だから。」
「………ホントに?」
「勿論。嘘じゃない。」
「……そう言うなら、信じる…」
微かに頬を赤らめて微笑む凛蓮に螢灼は暫し見惚れ
つい思った事を口に出す
「………ウエディングドレスみたいだな…」
「え?」
「あ、いや……その、本当に綺麗だから……」
「ありがとう……」
はにかむように笑う凛蓮を見て、螢灼は頬に血液が集中しているのを頭の片隅で感じ取る
「(どうして急に、こんな……)」
少し前までは本当にパートナーの様な存在としてしか捉えていなかった
なのに、今では……
「(拙いな……捜査が終わって無いって言うのに…)」
一人の女性として見ている自分に気付いてしまった。
しかし、どうしても任務を怠るわけにはいかないと
螢灼はあえて気持ちを誤魔化し、平常心を保つように努める
「絶対に、成功させようね…」
「…そうだな。」
それからは訓練や確認などで慌ただしく時間が過ぎ
気付けば捜査を前日に控えていた。
今更慌てても仕方ないと
凛蓮はソファで使う拳銃の点検を、螢灼は手順の確認をする。
点検を終えたのか、凛蓮は螢灼に視線を移し
長い間続いていた沈黙が耐えられなくなり、適当に話題をだす
「ケイは『死人花』って知ってる?」
「死人花?………あぁ、曼珠沙華のことか…」
パソコンから視線を凛蓮に向けると、凛蓮は不思議そうな表情で訊く
「曼珠沙華?あの花、そう言う言い方もあるの?」
「正しくは彼岸花って言って、別名で曼珠沙華、死人花、捨て子花とも言われる。」
「物知りだねぇ……」
「それぐらい辞書にも載ってるだろ?」
「だって、死人花としか教えて貰った事ないんだもん。」
「そうなのか?でも、なんで曼珠沙華の話になるんだよ。」
どうしてあんな花の話になるのか、疑問に思った螢灼は凛蓮に問う
「あの花って、すっごく赤い血みたいな花でしょ?」
「あぁ……確かに。」
「あの花、凄くスキなんだよね…」
「どうして?」
「自分が死んで、その花になったら気味が悪いって言われても一生懸命見られたくて咲き続けるでしょ?
だから……私も死んだらそうなりたい。」
「……縁起でもない事言うなよ…」
身体をパソコンにむき直し、凛蓮は淡々とした口調で言う
「ねぇ、ケイ。一つだけお願いしたいんだけど……」
「何だよ?」
「もし、私が死んだら死人花……曼珠沙華の下に埋めて欲しい」
「なっ……」
突然告げられた内容に、螢灼は思わず凛蓮を凝視する
「あの男なら、裏切ったらどんな手を使ってでも殺しに来ると思う。だから……死んだら、亡骸を埋めて?」
「………俺はブラックジョークは好きじゃない」
無意識に声が低くなり、怒っている事は感じられても
凛蓮は苦笑混じりだが真剣な目で告げる
「本気だって。約束…だからね……?」
「……………考慮しておく…」
「有り難う。ねぇ……ケイはどうしてあの人を捕まえたいの?」
「……父さんが追っていた奴を捕まえたいっていうのもある。でも、本当はただ単に復讐したいんじゃないかと思う時もある。
だから、実際はどうなのか自分でもよく分かってないんだ」
「そうなんだ…」
「お前は?前に話してくれた事そのままなのか?」
「うん、そうだよ。それに……ある人と、約束してるから…」
「ある人?」
「ケイには内緒」
「どうして?」
「知ったら……きっと驚くし、哀しむと思うから…」
「?どういう事だよ…」
「言えない。それに、きっと思い出せないだろうし……」
「???」
頭に大量の疑問符を浮かべている螢灼を見て、凛蓮は
「兎に角。明日、頑張ろうね。」
「あ、あぁ……そうだな…」
何処かはぐらかされたと思いながら、螢灼も深くは追求しなかった。
そして、作戦当日
凛蓮と螢灼はパーティー会場の中に居た。
「こんなに凄い会場だったのか……」
「そりゃ大富豪とかが裏で糸引いてるし。」
「な……本当か?それ。」
「うん。アイツ、ちょっと年寄りで長生きしたがってる連中が泣いて喜びそうな研究してるから…」
「?どんな研究なんだ。」
「あんまり知らない方がイイよ。バレたりしたら、そいつらのSPに殺されるから。」
サラリと言われた内容に、螢灼は少しだけ顔から血の気が引く
「大丈夫。私はアイツの実の娘だから。私から訊いた事にすれば、何もされない。」
「そんなに顔が広いのか…?」
「まぁね。さて……じゃあ、オークションが始まる前に部屋の案内するから付いてきて。」
「あぁ……」
凛蓮の後を付いていくと、完全なプライベートルームの様な空間に通されて
螢灼は思わず内装をじろじろと眺めてしまう
「そんなに珍しいモノでもある?壊したら弁償額が何千万にもなる骨董品はあるけどさ。」
「その時点で珍しいって分かれよ……」
「見慣れちゃったからかな?それより……ちょっと遊ぼっか、ケイ。」
周囲の部屋からガードマンがぞろぞろと姿を現し
螢灼は凛蓮と背中合わせになる
「遊ぶと言うよりは、闘うじゃないのか?これは。」
「遊びの一つだって思えば良いの。」
そう言い終わらないうちに、凛蓮は床に手をつき近くにいたガードマンに足払いをかけ
身体が傾いた男に、螢灼は頭部に強かに拳を入れる
「ケイって何か得意なのある?」
「格闘技かな?父さんに教えて貰ったからな……」
「そうなんだ…」
ガードマンが数人がかりで二人に襲いかかって来ると
凛蓮は太股のホルスターに装填されたSAUER P230とGLOCK 17を構えると、太股と肩に狙いを定めて撃ち弾を出来るだけ減らす
螢灼はと言うと、格闘技と剣術を使って相手を伸していく
「(なんか……格好いいかも…)」
傍目で螢灼を見、凛蓮はそう思ったが
相手の数が数だったのでこの場を終わらせる事に専念する
誰の目から見ても凛蓮と螢灼の方が不利に思えていたのだが
向かっていったガードマン達は螢灼によって気絶させられているか、痛みに悶えているかのどちらかだけだった
「さて……アンタには訊きたい事があるの。」
螢灼が格闘技である程度痛めつけた男に向かい、凛蓮は言う
「何でしょうか、凛蓮様。」
「正直に答えなさい。アイツは何処にいるの?」
「それは答える事が出来ません。凛蓮様。」
「…………十秒。十秒以内に答える気にならないなら…」
凛蓮は手にしていたSAUER P230を尋問しているガードマンの咥内に銃口をねじ込み
引き金に指を添える
「このまま吹き飛ばすけど?……十……九…八……七…」
冷笑を浮かべたままカウントを続ける凛蓮に、ガードマンは本能で死を感じ
懸命に首を縦に振り、教える事を示す
「……それで良い。アイツは何処にいる。」
「…吏皇元帥は……広間にて、お待ちに……」
「そう……」
凛蓮は立ち上がると、ガードマンの脚の腱に標準を合わせて発砲し
思い切り腱が焼き切れたのかガードマンは断末魔をあげながら身悶えた。
眼下で息も絶え絶えになっている人間を見ても無表情なのが変わらない凛蓮を見て
螢灼は彼女が裏組織で育てられたのだと、改めて痛感する。
「ケイ?どうかした?」
「え、あ、いや……何でもない……」
やや声に蔭りがあるのが感じられ、凛蓮は苦笑を見せ
「早く行こう?」
「あぁ………」
自分でもどういう反応を示すべきなのか分からない螢灼は、凛蓮の後について広間へ向かっていく。
走って移動している間、凛蓮は一度立ち止まり螢灼の方を見て口を開く
「……ケイ。お願いがあるの。」
「何だ…?」
「正しくは、お願いというより……私の願望なんだけど…」
「???」
よく分からないと、表情に書いてある螢灼に凛蓮はまた苦笑し
いつもより覇気のない声で、切れ切れに言葉を紡ぐ
「………ケイのお父さん……凌灼さんの事、今は思い出さないで欲しい…」
「……どういう事だ…?」
「ケイは……凌灼さんが亡くなった時の事、はっきり思い出せてる?」
凛蓮の問いに、螢灼は俯き加減になり眉に皺を寄せて返す
「……本当は、少し曖昧な状態で覚えてる」
「それなら良かった……」
「レン…?」
「もし、アイツにあって……何もなかったら、ちゃんと話すから。だから………今は、何も聞かないで?」
何処か哀しげな笑顔で念を押す凛蓮に、螢灼は頷くしかなく
何故この時にはっきりと聞かなかったのか
どうして無理にでも言わせなかったのだと
数時間後に彼は悔やむ事となるなどと、この時考えもしていなかった…
次回は9/21の11時くらいに投稿予定です




