曼珠沙華02
月白です。前話をご閲覧いただきありがとうございます!
今作も宜しくお願いします!
何処からか自分の名前を呼ぶ声が聞こえる……
「レン……凛蓮…」
それはとても愛おしい人の声で
「なぁに?お母さん。」
私は母に駆け寄って抱きついた。
母は私をしっかりと抱き留めて、頭を撫でながら訊く
「凛蓮は、お母さんの事好き?」
「うん!大好き!」
「じゃあ…お父さんは?」
「…あの人なんて大ッ嫌い!!」
途端に不機嫌になった私に対し、母は苦笑したが宥めるような口調で言う
「いい?凛蓮。お父さんはね、凄い人なの。だから、逆らっては駄目よ?」
「………うん。」
「お母さん、お父さんのこと大好きだからね……少しでも好きになってあげて?」
ね?っと、大好きな母に言われては頷くしかなくて
「……分かった…」
渋々首を縦に振った。
母は頭を撫でながら、少し哀しげな表情で呟いていた
「約束よ?お母さんに何があっても、お父さんを恨まないで……」
確か……
それが、母とまともに話した最後だった気がする…
+ + +
「お……か…ぁ…さ………」
「ん…?」
凛蓮が小さく呟き、一筋涙が伝っているのを螢灼はパソコンの電源を落としてから気が付いた
「泣いてる…のか……」
指の腹で涙を拭ってやり、螢灼は深く溜め息をつく
本人に自覚は無いが、男性の目から見れば美女の部類に入るほど凛蓮は綺麗だった。
長くて綺麗な黒髪
白い肌
今は閉じられているが綺麗な色違いの瞳
それに……
「スタイルが良いってのに…」
プロポーションが良く。
そのため、先程、突如として凛蓮が服を脱いだ時螢灼は心臓に悪い事この上ないと思った。
「俺だからまだ良いものを……」
暢気に眠っている凛蓮を恨めしそうに見つつ、螢灼は自分も寝室へ向かう
窓から凛蓮が入ってきた時、正直螢灼は彼女を初めて見るようには思えなかった。
自分の覚えていない所で会ったような……
形容しがたい感覚がつきまとっていた。
「まさかな…」
頭を振り、螢灼はベットに入り微睡み始める
翌日、凛蓮は朝食の匂いで目を醒ます
「……ん………良い匂い…」
「やっと起きたか。おはよ。」
「……ぁ…おはよ……」
「飯、起きたばっかだけど食べるか?」
「勿論。てか、ケイって料理できたんだ。」
「普通は出来るだろ…レンは出来ないのか?」
「料理とか家事は一切無理。」
「……何が出来るんだよ?」
「ん~~……殺し?」
ケロリと返す凛蓮に螢灼は頭を抱えたくなった。
「何でそう、あっさり言えるんだよ…」
「だって本当だし。」
「………兎に角、食べるか。」
「そうだね。」
朝食の間中会話は無し。
少々気まずさを感じながらも、凛蓮は内心で料理の巧さに感嘆していた。
『ケイって、家事得意なんだ……』
食事が終わり、螢灼は二人分の食器を片づける為キッチンへ
凛蓮は食後の一服を堪能する。
暫くして、螢灼が片づけを終えたのか凛蓮に声を掛ける
「そう言えば、昨日どうやってお前は相手を殺したんだ?」
「銃でやったに決まってるでしょ。」
「その銃は?」
「確か……」
凛蓮は昨夜着ていたチャイナドレスを探り、二丁の拳銃を螢灼に渡す。
「ふぅん……SAUER P230とGLOCK 17か…」
「なんですぐに分かんの?拳銃マニア?」
凛蓮の発言に、螢灼は椅子からズルリと落ちる
「そうじゃないって!!俺が警官だって何回言えば分かるんだ!?」
「だ~か~ら!全然真実みがないんだってば!!」
「少しは信じようとしろよ!」
「無理。」
キッパリと凛蓮は言い切り、螢灼は重苦しい溜め息を吐く
「なんで簡単に言い切れるんだよ…」
「だって、見るからに警官に見えないんだもん。証拠は?」
「ホラ…」
螢灼は自分の警察手帳を凛蓮に見せる。
「一応持ってるんだ……でもねぇ…」
「もう俺の事は良いだろ。それより、何か思い出したか?」
「あんまり。」
「でも、昨日呼んでただろ?『お母さん』って。」
「………言ってたの?私が。」
信じられないような表情で訊く凛蓮に、螢灼は首を縦に振る
「あぁ。君の家族は?」
螢灼の問いかけに凛蓮はゆっくりと言葉を紡ぐ
「………両親がいた……でも、父は居なかった……」
「…………。」
「お母さんは、すっごく優しくて……大好きだった…」
「……その人はどうなったんだ…?」
恐る恐る訊かれた内容に凛蓮はヒュッと息を吸い込み
一言、暗い声で述べる
「………殺された。」
「え………」
「絶対、殺された。だって……」
俯いてしまった凛蓮を覗き込むようにして、螢灼は続きを促す
「だって…?」
「………憎むなって…」
「?」
「父の事、絶対に恨むなって……笑っていった……」
夢の中で見た光景を思い出し、凛蓮は無意識のうちに涙を流す
「レン……」
「絶対にそうだ……だから……」
だから絶対に許さない。と、凛蓮ははっきりと螢灼に向かって言い放つ。
「……その父親は彗元帥か?」
「分からない……思い出せない……」
辛そうな表情で首を振る凛蓮の頭をポンポンと叩き、螢灼は努めて優しい声で言う
「………ゆっくりで良い。思い出したら教えてくれ。」
「……それって…」
「仕方ないから匿ってやるよ。ただし、記憶が戻るまでの条件付きで。」
「有り難う、ケイ。」
満面の笑みで言われ、螢灼は懸命に表情を作る
「も、もしその父親が彗元帥だったらどうするんだ?」
「決まってるでしょ。殺してやる。絶対に……」
「……誰が止めても、か?」
「人の指図は受けない。私は、母さんを奪った奴が憎いだけ。」
「……そうか。」
「でも、ケイの言う事なら聞くかもね。」
苦笑混じりに言われ、螢灼も同じような表情で反芻する
「かも、か。」
「そう。約束は出来ないよ。」
「それでも充分譲歩したほうだろ?」
「まぁね。これくらいなら良いでしょ?」
「そうだな……」
+++
それから約一ヶ月ほどの時間が流れ…
二人は恋人というよりは良きパートナーと言う雰囲気で生活を共にしていた。
凛蓮が一緒に住む事になってから数日後、螢灼は凛蓮にあるモノを買ってきた。
「何コレ?」
凛蓮は螢灼から受け取ったモノをまじまじと見ながら問う
「カラーコンタクト。もし、お前の事誰かが知ってるか見張ってたら拙いだろ?
だから黒のカラーコンタクト入れとけば多少は誤魔化しが効くし。」
「成る程……そしたら買い物とかにも行けるしね。」
「ただし、問題は起こすなよ?」
「分かってるって。信用ないなぁ……」
苦笑混じりに言うと、螢灼は溜め息をついて最もらしい事を述べる
「お前の行動と言動が信じられない要因だって自覚しろよ…」
「はいはい。取り敢えず、ありがとう。」
「視力は入れてないけど、大丈夫だよな?」
「相当目は良いから大丈夫。」
「外に出て、少しでも思い出せたら良いな。」
「そうだね……」
それでも、その間に凛蓮の記憶が戻ったのはほんの僅かで
螢灼は少しでも手助けになればと情報を集めていた。
そんなある日
外は天気が良く、暖かい日差しが柔らかく室内に降り注ぎ
凛蓮はソファの上で微睡んでいた。
眠りは徐々に深くなり
凛蓮は母親の夢を見た時と同じく、夢で記憶の断片を垣間見る
その内容に彼女は飛び起き。
仕事中だった螢灼は驚きの表情で凛蓮に声を掛ける。
「レン?どうかしたのか?」
「………思い出した…」
小さな声で、寝汗を拭いながら凛蓮は呟く
「?何を。」
「父親の顔……」
「!?………そいつはこの顔か…?」
螢灼はやっと入手した彗吏皇の顔写真を凛蓮に見せる。
凛蓮は写真を見ると力強く頷く
「コイツだ………やっと思い出した…ッ!!このクソ爺っ!!」
拳でソファを思い切り叩き、態度が急変した凛蓮に螢灼は驚きを隠せない
「れ、レン…?」
「許さない……絶対に許さないっ!!」
「落ち着けって!何かあったのか?」
「コイツ……母さんを利用して、私を産んで……自分の手で母さんを……」
顔を手で覆い、凛蓮は落ち着こうと深呼吸を繰り返す
「………お前は、それを見てたのか…?」
螢灼の問いに凛蓮は頷き、話を続ける
「そう……その後に、このタトゥをいれられて…」
左肩に存在する昇り龍のタトゥに爪を立て、凛蓮は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「最初から入れられたんじゃなかったのか…?」
「違う。母さんはアイツの側室…と言うか、愛人だったから。正妻はもう死んでる。」
「死んでる?」
「正しくは、アイツが殺した…」
「!!?自分の妻をか?!」
自分の言葉に一々驚いている螢灼を流し、凛蓮は思い出した内容を一部言うのを躊躇い
話せる範囲で告げる
「アイツは………色んな人体実験をしてる。だから、必要なくなったら簡単に殺すの。」
「………よく知ってるな。そんな事…」
「………アイツの顔が一致したら、色んな事が浮かんできて……」
「……それだけ憎いんだな…」
「誰よりも憎い……あんな……あんな男が自分の父親だなんて思いたくもないッ…」
苦々しげに告げる凛蓮の姿は誰の目から見ても憎悪が感じられ
螢灼は言おうとしていた事を凛蓮に言う
「レン。実は、今度彗元帥が主催の闇オークションが開かれる。そこに潜入捜査の指令が入ったんだ。」
「………それで?」
「それには男女のペアでの入場が鉄則で………お前が良ければで良い。協力してくれないか?」
「………あの男を殺しても良いなら…」
「………じゃあ、交渉成立って事で良いな?」
「うん。」
握手を交わし、螢灼は一層捜査に打ち込み
凛蓮は肩のタトゥに触れながら哀しげな表情になっていた。
「(ケイには知られたくない………知られるワケにはいかない……)」
二人の潜入捜査まで
残された日は長くはなかった……
次回は9/7の11時くらいに投稿予定です。
Xの方に潜っている事が多いので、こちらもよろしくお願いします!




