曼珠沙華01
初めまして!月白柚悸と申します。
今回はご閲覧いただきありがとうございます!
今作は初めて手を出すSFものになっております。
設定を上海にしておきながら、似非中国語で名前をつけているので、その点はご容赦ください。
不慣れな所が多いとは思いますが、宜しくお願いします!
西暦二×××年
上海のとある地区で、路地裏街で誰かが走っている。
新月だった事が起因してか外見は暗闇で伺えず、しかし女性だという事は判断が出来。
その女性を追い詰めるように背後から数人の男性が
乾いた音を周囲に響かせながら近付いていた。
*
「コイツら、ホントにしつこい……」
足を止め、人数を確認すると相手は四~十人程度。
全員手には武装された武器が握られている。
一々相手にしていたらきりがないと、再度、踵を返し路地裏へ逃げ込む。
追ってきている奴等は案の定というか数を打てば当たるとでも想っているのか銃を乱射。
勿論、周囲は闇に包まれ光もない。
適当に道を走っていたら袋小路に入っていたのか行き止まりになり
振り返ると三名ほどがニヤリと笑いながら銃口を向けているのが感じ取れる。
そもそも、どうして追われているのか。
自分の名前の記憶しか残っていないのに身体が無意識に逃げているから助かっているけど
本当のところは顔だって知らないし、どういう素性なのかも知らない。
だから本能が命じるままに動いている。
『コイツら裏組織とか、そんな感じ……』
心の中で呟いて、壁を背中にすると脚に何か武器は無いか探ってみる。
すると冷たく硬い感覚が指先に伝わり、見てみると太股あたりにホルスターが巻かれ二丁の小型拳銃が収まっていた。
「………やってみるしかない…か……」
取り出した拳銃は両方とも軽くて、握り心地もまあまあ良い。
片方は安全装置が無いようで向かってきた相手の頭部に二発ずつ撃ち込む。
「へぇ……使いやすい…」
でも、弾があまり装填出来ない型でもあるようで弾を使い切るともう片方の銃に持ち直す。
弾がそれなりに装填出来ているのに、重さはきっと従来の他のモノに比べて軽くて。
安全装置を外して、別方向に散って戻ってきた残りを片づけた。
「でも……何で、こんなに使い慣れてるんだろ…?」
自分でも使って驚いてしまった。
普通なら戸惑うであろう安全装置の位置や、引き金の引き方。それに加えて狙いの的確さ。
逃げ足も相当軽いし、あんな連中に追われているのだから似たような所にでも居たのか……
「分かんないから、取り敢えず何処かに隠れよう……」
上を見上げると洗濯物を干す紐のようなのが張り巡らされていて、それを伝って上の方に昇り
丁度明かりのついていない空き家のような部屋に飛び込んだ。
すると…
「お前は誰だ?」
真っ暗な室内から声が聞こえて、思わず
「……こんなボロに人なんか住んでたんだ…」
素直に思った事が口から出ていた。
「きちんと中を見てから言え!」
「こんなに暗くて見えるわけないじゃん」
どきっぱりと答えると、会話の相手は溜め息をついて照明を付ける。
「これでもボロって言うか?」
中をよくよく見ると、コンクリート剥き出しの内装で家具も少ない。
まぁ、清潔感があると言えばそうだけど。
殺風景とも取れるし、本当に金ナシかとも思える。
「ボロじゃなく、あんたが金ナシに見える」
「お前なぁ……女の割に相当きついな…」
苦笑気味に言われて、ちょっとムカついたから思ったまま言い返す。
「それ、差別用語。それに、男に媚びるなんて真っ平」
「そう言う飾り気のない女の方が話しやすい」
「それより、煙草持ってない?」
「此処で吸う気か?と言うか、初対面でそこまで図々しいのもなかなかいないぞ」
煙草を探りながら聞くと、目の前の男にもの凄く嫌そうな表情をされてもう一度聞く事にした。
「そう。なに?持ってないの?」
「俺は喫煙しないんだよ。だから持ってない」
「珍しい……男でもそう言う潔癖みたいな奴いるんだぁ…」
「お前、相当毒吐きだな…」
「お前お前ばっか言わないでよ。ちゃんと名前があるんだから」
「だったら早く名乗って此処から出て行け」
そう言って話してる相手は部屋の中にあったパソコンの電源をつけ、椅子に座る。
「うわぁ……男なのに、こんな夜間に逃げ込んだ女追い出すんだ…最低」
「窓から易々と入ってくるような女は、危険人物として見なして追い出しても何も言われない」
「あ、そ……でも今夜くらいは匿って」
「どうして?」
「多分……裏組織かなんかに追われてるから?」
「はぁ?!」
「だから、いまから話すって。あ…アンタの名前は?」
男は相当言うかどうか迷ったみたいだけど、溜め息を吐いてから自分の名前を名乗った。
「………夾 螢灼」
「螢灼……じゃあ、ケイでいいや。」
「お前の名前は?」
「彗 凛蓮。レンで良い。」
「じゃあ、レン。話して貰おうか?」
身体を私の方に向けて聞く体勢をケイは取るけど、今度は私が苦笑する番だったらしい。
「話すって言っても、本当は知らないんだもん。」
「………は?」
「だから、記憶喪失みたいなんだよねぇ…」
「何だよ、それは…」
思い切り脱力するケイを見て、これが普通だったのかあっさりと言い返す。
「記憶喪失ぐらい知ってるでしょ?それとも、それぐらい知らないほど馬鹿?」
「そうじゃない。自分の名前しか覚えていない奴をどうやって匿えって言うんだ!」
「ん~……頑張って?」
「……はぁ………じゃあ、何か記憶の手がかりになりそうな事は?」
「銃の操作に異様になれてたのと、足が速い。あ…肝心な事だけど、まだ記憶無くなってから時間経ってないみたい。」
「如何して断言出来るんだ?」
「だって、自分の外見知らないんだもん私。」
「………洗面所に鏡があるから見てこい…」
ケイに言われた通り、洗面所を探して鏡を見つけ自分の姿を写す。
「へぇ……こんな感じだったんだ…」
長めの黒髪にあまり焼けていない肌。
服は黒系が好きだったのか黒のチャイナドレス。
まぁ、所々血で変色してるのが残念。
後は…目がオッドアイだった。
「誰が親かも覚えてないし……」
おまけに自分の年齢すら思い出せない辺り、相当酷い事でもやらかしたのか……
考えていても何も解決しないから、仕方なくケイの居る部屋に戻る。
「お前、目…オッドアイなんだな……」
「お前じゃなくてレン。」
「あ、レン。茶色と他の色のオッドアイだったら結構いるけど、漆黒と蒼って珍しいな……」
「自分でもそう思った。」
「黒に蒼が栄えて凄く綺麗だ……」
「褒めても何も出ないけど?」
「素直な感想だ。ありがたく受け取っておけよ…」
「はいはい……」
服を探ると煙草が出てきて、マッチも一緒に見つかったから火を付けて堪能する事にした。
「吸うなら窓で!」
「……分かった。」
窓際に移動して煙草を堪能してると、ケイが近付いてくる。
「なに?」
「腕、怪我してるぞ?」
「え?嘘?」
「気付かなかったのか?」
「全く。」
「一応、女なんだから身体に傷付けるなよ…」
「ん~~……アイツらの弾、当たったのかなぁ…」
「アイツら?」
「ウン。此処に来る前まで命がけの追いかけっこしてた相手。」
「………そいつらはどうしたんだ?」
「全員殺した。」
「なっ……」
「向こうがこっちを殺す気満々だったんだから仕方ないでしょ。」
「……………。」
「なに?問題でも?」
「あぁ……俺の職業をまだ言っていないだろ?」
「そうだけど……」
このナリでまさか…と思って、一瞬頭の中を過ぎった単語を発する。
「……警察官?」
「正解。正しくは、上海警察特別捜査班。」
「………どっきり?」
「どうしてそうなる…」
「だって……見るからに警官でも平で金ナシにしか見えない…」
「金ナシばっかり言うな!!」
「だったら、もう少しマシな部屋にすれば?」
「わざとこういう部屋なんだって………手当してやるから、腕見せて。」
「はいはい…」
大人しく腕を差し出すと、ケイは脱脂綿に消毒液を含ませて傷口に当てる
「っ………いったぁ……」
「我慢しろ……ん?」
「なに?何かあった?」
「このタトゥ……」
「タトゥ?」
ケイが凝視している箇所を見てみると、昇り龍のタトゥが左肩に入れられているのが見える。
「確か…このタトゥは………!」
「???」
ケイはパソコンで何やら作業を始めだして、仕方なく自分で残りの手当を済ませる。
「一体これがなに?」
「…………やっぱりだ……」
「だから、何が?」
「そのタトゥと、レンの名前。」
「私の?それが何の関係があんの?」
「お前……彗元帥の娘なんじゃないか?」
「彗元帥?誰それ?」
「………彗 吏皇。裏社会のトップに立つ男だ。」
「吏皇?顔写真とかないの?」
「今はな……もし、仮にお前が元帥のあの娘だったら納得がいくんだけど…」
「どうして?」
「噂で何だけどな、その娘が格闘や銃器に関してはもの凄く強いらしい。」
「ふぅん……それで。」
「あくまで憶測だけどな……」
「別に怒ってるワケじゃないんだけど…」
気まずい沈黙が漂ってきて、時間も時間だったからソファを借りて眠る事にしようと思って服を脱ぐ。
「!!!?お、おまっ…何脱いでッ?!!」
「??寝るんだから脱ぐに決まってるじゃん。」
「だ、だからってその格好で…」
「仕方ないでしょ?着てる服これしかないし、着替え持ってないもん。」
「だったら、その服のまま寝ろよっ!!」
「皺だらけになるでしょ?そしたら着れないし、洗濯したいし。」
「だからって……」
「なに?………あ……もしかして…」
「なんだよ?」
ケイがムッとした表情になってこっちを凝視するから思わずにやついて
「この程度で恥ずかしいの?ケイ。」
「~~~~~ッ!!」
微かに頬が赤くなっていたから、どうやら図星らしい。
「ケイって意外とウブなんだ。かっわいー」
「うるさいッ!!服なんて幾らでも貸すからその格好で寝るな!!」
「え~なんで?」
「そんな……そんなストリップみたいな格好で居るなって事!」
確かに……今は付けてる下着のみだからストリップって言われても仕方ないか…
「そんなにムキにならなくても良いのに…」
肩を怒らせて寝室へ行ったケイを見ながら言っても本人には聞こえてない。
頭に完全に血が上ってそうだし、大人しく借りて眠った方が良いのかもしれない……
「ほら、着替え。Tシャツとこれでいいだろ。」
「ん。ありがと。」
ケイから服を受け取って着替え、ソファに横になる。
「そこにタオルあるだろ?それ掛けて寝ろよ。」
「ん……」
言われた通り、タオルを掛けて深く身体を沈めて瞼を閉じる
どうしてこんなに落ち着いているのか、自分でも分からない
記憶がないのに…
安心感があるのはどうしてなんだろう…?
次回は8/31の11時くらいに投稿予定です。
Xもやっているので、興味をお持ちの方は是非どうぞ!




