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38.

数ある小説の中から閲覧していただき、ありがとうございます。


翌日は雨。

こんな天気だが国王様への嘆願書はアルトール辺境伯とアルトとバッカートの協会長の連名で朝1番に早馬で送られたとのこと。

午前中は明日から別行動となるリンネとノーレムの補給物資の買い物に。まぁ外は雨だし、買うのも食料くらい。宿舎にある購買部で揃ってしまったんだけどね。


午後からはそれぞれ部屋で資料を読み込んだり、計算問題を解いたり、と勉強。

そんな中でもやはり嘆願書の国王様への影響が気になり、ずっと俺はモヤモヤしていた。たぶん顔や行動に出ていたんだろうな…それを見かねてリンネが話しかけてきた。


「ユキト。ボクは国王様は公正な人格者って聞いてる。そして、力を持つ者には寛大とも。あくまで届く噂だけど間違ってないと思うんだ。気になるのは仕方ないけど…気にしすぎるのも良くないよ?」


「うん、わかってるよリンネ。天気が悪くて部屋に閉じこもってるせいかなぁ…つい、いろいろ考えてしまって…」


「あぁ…確かに、天気に左右されるのわかるかも。」


「うーん…訓練所って空いてるかな?ちょっと協会受付に聞いてくるよ。」


「「「行ってらっしゃい。」」」


どうやら、みんなは部屋でまったりモードらしい。

ここ、バッカートの受付は宿舎の1階から繋がっているので雨を気にせず向かえる。


「すみません。今日ですけど訓練所って空いてますか?」


「ごめんなさい。今日はこの天気でしょ?全て埋まってるのよ。」


「いえ。なんとなく…そうじゃないかと思ってたんで。失礼しました。」


やっぱり訓練所空いてなかったか…部屋に戻って魔力循環しながら瞑想でもしよ。あ、キリュウさん達が食堂で酒盛りしてる。ん?手招き?


「おぅ、ユキト。1人でどうした。」


「こんにちは、キリュウさん。訓練所が空いてるか受付に聞きに行ったんですが…満員でした。」


「この天気だしなぁ。バッカートの探索者は真面目な奴が多いんだな。で………ユキト何かあったか?」


「…っ。……キリュウさん。」


「昨日、お前達だけ執務室に呼ばれてたからなぁ…で、今のユキトは昨日より思い詰めた顔をしている。と、なると何かあっただろうって予測はつくわな。良ければ話してみ?」


「はぁ…実は貴族絡みの厄介事が。しかも王都の協会長まで貴族側なんです。」


「王都の協会長…って事はフルトラング伯爵家か?」


「はい。そのフルトラング伯爵家です。そこの嫡男がシホの噂を聞き、会って娶りたいと…そこに王都の協会長が融資を受ける代わりにシホにフルトラング伯爵家の嫡男に会うように命令書を発行したみたいで…」


「その命令書は完全に協会規約違反だな。命令書は本来、ランクB以上の探索者に国災となりうる大型魔物討伐に国から依頼があった時のみ発行されるものだ。ランクC以上の探索者に課される強制依頼の一つだな。」


「規約違反…それならその命令を無視しても?」


「いや、貴族…それも伯爵家が絡んでいるのが厄介だ。協会長は融資に目が眩んで独断で命令書を発行したのだろうが…これだけなら王都協会に近づかなければ無視して問題ない。ただ伯爵家が絡んでくると貴族特権…その貴族家にとってその命令を出すことが重要だと主張してきたらランクを問わず、従わざるを得ない案件になってしまうんだ。

今回、すでに命令書が発行されてるのがな…伯爵家以上の権力から取り下げの声が上がらない限り、逃げ道がない。」


「キリュウさん…一応、国王様への嘆願書は今朝早馬で送って貰ってます。アルトール辺境伯とアルト、バッカートの両協会長の連盟で。」


「それでユキト、シホ、リュカは明日の出発から外れたのか。…嘆願書は出した…そうなると後は国王様次第だな。どんな嘆願にした?」


「決闘です。求めたのはシホの自由意思。」


「シホちゃんの自由意思…内容は聞かないが、貴族の婚姻絡み…シホちゃんのスキルが桁違いなんだな?ユキトとシホの関係…そして決闘の内容は?」


「シホとは婚約者…すでに神に誓っています。そして、スキルが桁違いなのは事実です。知れ渡ったら誰でも欲しがるでしょう……決闘の内容は生死不問、降参無し、代理人不可…です。」


「すまんな、メンバーの秘密を喋らせるような真似して…しかし、決闘の内容がエグいな。しかし、神誓った婚約者を横取りか…確か相手は伯爵家嫡男だろ?嘆願が通って決闘になったら御前決闘だろう。そこで嫡男は死亡、ランクFの探索者に負けた伯爵家…確実に失態で力を失うな。」


「御前決闘……ですか?」


「あぁ、アルトール辺境伯が目を掛けている探索者だ。国王様も力を持つ者には興味を持つだろうよ。そうなると自分の目でその探索者を見たい…なら御前決闘にしてしまおう!って理論だな。ユキト達の推薦試験は延期になるかもな。御前決闘となれば、そっちが優先されるからな。」


「試験中止ってことは無いですよね?」


「それは無いから安心しろ。けど…王都協会長が金のために独断で命令書か。噂になってなかったからまだ上層部で口止めしてやがるな。あえて噂を流すのも面白そうだ。」


「キリュウさん?」


「あぁ、ちょっと思いついた事があってな。行くところが出来た。じゃあな、ユキト。」


そう言ってキリュウさんはメンバーを引き連れて協会の方へ消えて行った。

キリュウさんに相談してモヤモヤも少しは形になったかな?

うん、お茶買って帰ろ。




翌日は久しぶりに晴れた。そろそろ雨季も終わりなのかな?

俺、シホにリュカは見送りで協会前に居た。リンネとノーレムが荷物を積んでいる。


「リンネ、ノーレム。情報収集は無理しないでね。2人共、ランクCがかかってるんだから試験に集中で。」


「ありがと。でもボク達も無理はしないから安心して。ちょこっと周りの探索者に聞きながら協会長の違反を吹聴するだけだから。」


「そうですよ。たとえ貴族絡みでも、融資と言う金での行動は人身売買と変わりません。協会長の信用を底まで落としてやります。」


「お、嬢ちゃん2人もやる気だなぁ。俺達もその方向で動く予定だ。すでにバッカートでは話をばら撒いてきたからな!」


「キリュウさん…もしかして昨日のやる事って…」


「あぁ、あえて受付で周りに聞こえるように相談してみた。俺達もランクCチームだ。それなりに顔は売れてるから近くに居た探索者達はずっと聞き耳立てていたぞ。」


準備が終わって馬車が出発して行く。


「ユキト、嘆願書の結果が出るまでは大人しくしておけ。…あと、王都では協会からは距離を取って宿舎には泊まるな。俺達で宿を見つけておく。」


キリュウさんはそう言って馬車と一緒に門を潜って見えなくなる。


「ユキト、みんな行っちゃったね。はぁ…3か月も経ってゴドリック商会の厄介事が再燃するなんて予測外だったよ…」


「そうだな。しかも貴族が絡んだ特大での再燃とは…」


「シホ姉様、ユキト兄様。ゴドリック商会が潰れたのはリュカも知ってましたが…そこに関わっていたんですか?」


「あ、そういえばリュカちゃんには話してなかったか。じつは…」


「シホ、話すなら部屋に戻ってからに。ここでは誰が聞いてるかわからん。キリュウさん達が噂を流したみたいだし、俺達は嫌でも注目されるかも。」


「確かに。リュカちゃん、話してあげるから部屋行こっ。余り面白い話ではないけどね。」


2人は手を繋ぎ部屋へと戻って行く。

俺も大人しくしておけって言われたし部屋に閉じこもっておくかな。

シホはリュカにゴドリック商会との顛末を話し、その経緯を含めて弟子にした事も伝えていた。

結局は我儘で傲慢な権力者の存在が原因だと…


それから2日は完全に引きこもり生活。

途中、馬車の出発の確認に受付に行ったのだが周りの目が…お前達の噂の真相は?って語っていて怖かった。確認終わったら捕まる前に速攻で逃げたよ。




出発は8時。天候は晴れ。王都まで移動するのは一頭立ての小型の幌馬車、もちろん協会印が幌に。御者は2人だ。協会員のおじさんに受付嬢?そして、ガルファルド協会長自ら見送りに。


「ユキト、シホ、リュカ。キリュウに王都での宿と王城とのやり取りは頼んでいるから…頼るんだぞ?早ければお主達が王都に着いた時点で嘆願書が受け入れられ勅命が出ている可能性もある。」


「はい。ガルファルド協会長、失礼な物言いをしてしまったにも関わらず…いろいろと手を回して頂きありがとうございます。」


「先日も言ったがワシの言い方も悪かったから、気にするな。気をつけて行ってこい。」


馬車が動きだし、王都へ向けて出発。

今日は野営、川を渡って、明日は宿場町…そして王都には明後日の夕方到着予定。


馬車は並足で軽快に進んでいく。





お読みいただきありがとうございました。


読んでみて、面白かったと思ってくれて評価してくださると嬉しいです。


不定期になるとは思いますができる限り書き続けていきますので、よろしくお願いします。

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