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その日の夜
≪ガチャ≫と静かに音が鳴った。
人影が静かにベットへと近ずいて来た。
そしてその人影は懐からナイフを取り出そうとしてバラバラになった。
床にはその人影のキレイにバラバラに分解された死体が転がっていた。
朝、私はいつもの時間に目を覚ました。
昨日の夜に私達を殺そうとした死体の片付けをしなければいけなくて面倒くさいなと思いながら片ずけていた。
全く、人の寝ている時を狙ってくるだなんて。おかげで少し寝不足じゃないか!
私があれ程度の気配が分からないだなんて思わないで欲しい。寝てたって反応できるのだから。まあ、昨日来たのは全くの素人だ。
昨日王様は黒国を認めると言ってたけど中には認めていない人がいるに違いない。そうじゃなきゃ相手国の王族を狙うだなんて馬鹿みたいな事思い付かないだろう。まあ、国と認めてなくてもそうでもこんなことをするのはタダの能無しの馬鹿か、命知らずの馬鹿だろう。どちらにしても馬鹿だ。国の為とか言っておきながら国を窮地に立たせることになることを分かっていないのだろう。下手したら帝国についている国も帝国も黒国の敵になるものは全てこの世界から排除されることだろう。
まあ、知ったこっちゃないが、あの王様はやけに父にご執心のようだしあの人は有り得ないだろう。有り得るとしたら、その息子や娘、貴族だろうか?王様の部下は王様自身が信頼できる人材を配置しているようだし、それには父にも意見を貰っていると言っていた。だからその部分はあまり心配いらないだろう。
それに今回はあくまで魔物、魔獣退治を依頼としてここに来たのだからあまり首を突っ込むべきではない。
そう思いながら死体を片ずけ終わり、着替えて兄と姉が起きるのを待った。
「雪、おはおう。やっぱ出たか」
「雪~、おはよう!どんな人が出たの?」
「おはようございます。侍女の格好をした暗殺者でした。まだ暗殺者をして5年程度といった所でしょうか?あまり5年にしては気配を消すのが下手糞でしたがナイフの構え方は普通でしたので5年ほどだと判断しました。きほん、戦うタイプの暗殺者なのでしょうね。暗殺者と言っておきながら気配が消せないって私からしてみればとても腹立たしいことこの上ないです。とんだ素人でしたよ。まあ、こんな仕事を受けるだけで素人ということはわかりますがね。恐らく黒国に対して反感を持っている貴族共の仕業でしょう。もしも、王族ならばこんな馬鹿なことやるとは思えません。私なら完全に息の根を止める作戦を考えますからね。こんな事やるとしたら馬鹿な貴族でしょう」
少し経って兄と姉が起きて誰が来たのか聞かれたのでどのような人か伝え、自分の推測を言った。
「あぁ、そうか。一応任務中に起きたことだからな。父上に帰ったら報告しよう。それより朝の組手だ!火蓮、雪外に行ってやるぞ」
そう言った兄に付いっていって廊下を歩いていると前から昨日門のところまで迎えてくれた騎士団長のアレックス・フォークスに会った。
「・・・!?黒国の皆様ではありませんか!どうなさいましたか?」
「いえ、朝の組手をする所を探していましてね。どこか良い場所は知りませんか?」
アレックスは一瞬私たちの姿を見てギョッとしていた。それもそのはずだ。私の格好は足にはブーツ、下に短パンを着て上に半袖の服の上にさらにフードの付いた足首ほどまであるマントを羽織っており、、腰の周りに収納に便利なバックをかけてあり太ももの周りにはナイフ用の収納ケースをしっかりと巻いており今にもナイフを投げれるようにしてある。そして手には手袋を常にはめている。
火蓮も短パンに半袖、ブーツで、背中に細い槍が2本あり腰には折り畳み式の槍が左右に3本ずつ刺さっていた。また、マントを武器が隠れるようにその上から羽織っていた。。
龍騎は長いズボンにブーツ半袖を着ており、腰には刀が左右3本ずある。またその上にマントを羽織っていて、そのマントの内側に小刀を何本か仕込んでいた。
すべて黒色統一されており、アレックスからはきっと黒ずくめの怪しい集団に見えたのだろう。
ちなみに龍騎と火蓮の武器は黒だけど私の糸は黒じゃなくて透明だよ。そりゃあ私のは見えないのが売りだからね見えてたらよけられちゃうでしょ。
私達だと気づくと彼は警戒を解いた。
いや、解いちゃダメでしょ。いくら客人だと言っても用心することに越したことはないんだから。
「それならば中庭はどうでしょうか?」
私の心配を知ってか知らずかアレックスは中庭をすすめてくる。
「いえ、中庭だと狭くてとても出来ませんし、それにあそこには緑がいっぱいあってよく整備されてます。それだと地面を破壊してしまう恐れがあるのでどこか頑丈なところを探してるんです」
「・・・・・・・・・。そうですか。あそこで狭いとなると・・・我々騎士団が使っている練習場はどうでしょうか?あそこならばある程度壊れても修復できるし、なにより広いので」
「本当ですか!?有難うございます」
「では、案内いたしましょう」
アレックスは兄の言葉を聞き凄く吃驚していた。まあ、それもそうだろう中庭は決して狭くなくむしろ広い方だ。私達の組手では狭いというのと折角整えられた庭を破棄してしまうというのは事実なので口は挟まなかったが普通なら有り得ないと考えるだろう。私だって転生する前はそんな事聞いても全然ピンとこないだろう。そのぶん、彼のこの反応は私達の父を見ているだけましというものだ。
アレックスについて行くとそこには朝のランニングだろうか、騎士達が走り回っている。
「全員集合!!」
アレックスが大きな声で行った瞬間走っていた人達がこちらに向かってきた。
「お前達は幸運だ!!今日は黒国の方々の組手を見ることが出来る。心して見るように!!」
「あの・・・、よろしいんですか?」
「ええ、私の部下たちもとても有意義な時間になるでしょう」
申し訳ないといった感じで訪ねてみるととても良い返事が返ってきた。
うん、大丈夫そうだ。
「それじゃあ今日は俺と火蓮で行こう。雪にはさっき働いてもらったばかりだからな。雪、審判頼むよ」
龍騎はそう言って火蓮と共に練習場の中央へと向かった。
アレックスの言った通りそこは広かった中庭が学校のグラウンド二つ分ぐらいだとして、練習場はその2倍はあった。
これから始める組手のルールは簡単、まず一つに自分の普段の武器をつけたまま戦う。その二、武器はつけたままであり、使ってはいけない。その三、相手を完全に仕留めれた方の勝ちとみなす。だが、その三のルールについては仕留める前の態勢でストップしてもらう。実際に死んでもらっては困るからだ。
「皆さん、もう少々下がっていただけませんか?風圧で倒れてしまうかもしれませんので」
私はそう言って後ろにいる騎士達にそう言った。
そして・・・、龍騎と火蓮が向かい合って戦闘モードに入った。
「では!!これより龍騎対火蓮の組手を始めます!!」
「両者向かい合って!!始め!!」
この合図により組手という名の暴力が始った・・・。