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短編集  作者: 七瀬乃


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6/7

別れた彼女は

 駅のホームにあるベンチに腰掛け、健吾けんごは線路を見つめていた。


「ねぇ、何で私達って別れるんだっけ……」

 隣に座っている麻美あさみが言った。


 健吾はぎゅっと拳を握った。

「だから……遠距離になって会えないのがお互いつらいって話したじゃん」


「つらいけど、好きなの。つらいけど、別れたくない」

 麻美が健吾の手を握った。

 健吾はその手を振り解かなかった。

 

「この話何回もしただろ? 好きだけど……もうお互い限界だよなって言ったじゃん。俺は仕事をやめてこっちには帰ってこられない。麻美も仕事辞められないって」


「うん」

 鼻をすする音が聞こえた。その音を聞いた健吾も鼻をすすった。


「二番ホームに電車が参ります」とアナウンスが流れ、電車がきた。

 二人が鼻をすすっている音はかき消された。


 乗るはずの電車を何本も見送って、麻美と健吾は手を繋ぎ続けた。


 今日最後の電車がホームに入ってきた。

 健吾は手を離した。


「今までありがとう。大好きだった」

 

 健吾は麻美の顔を見ることなく電車に乗った。



 一年後、麻美と別れた駅のホームに立っていた。

 今でも思い出す。

 麻美のことが好きだった。


 健吾はふと横を見ると、抱っこ紐で子供を抱っこしている母親が目に入った。

 

 よく見ると、麻美だった。麻美の横には男性がいる。


 健吾は気づいたら、「麻美!」と呼んでいた。

 健吾の声に反応した麻美は、目を見開いている。


「久しぶり」と健吾が言った。

「ひ、久しぶり」

「旦那さん?」

 健吾は麻美の横に立っている男性を見る。

「う、うん」

 麻美の旦那が軽く頭を下げる。

「赤ちゃん何ヶ月?」

「あ……今三ヶ月」

 健吾は違和感を覚える。

「何月生まれ?」

「十……月?」と言って麻美が目を逸らした。


 健吾の頭の中では計算が繰り広げられていた。


 健吾は重い口角を思い切り上げ、「そ、そっか。お幸せに」と言ってその場から立ち去った。


 健吾はスマホを取り出し、『十月に出産、いつ妊娠』と検索する。


 検索結果、一月。

 別れる約二ヶ月前。


「ということは?」と健吾はつぶやいた。

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