ラーメンの隠し味
そっとベッドに娘を寝せ、音を立てないように部屋を出た。リビングに入り、ため息をつく。手が震えてきた。腕が限界だ。
時計を見ると、二十二時を回っていた。
洗濯も干したかったし、ご飯も作りたかったし、お風呂にも入りたかった。
キッチンに行き、シンクに溜まっている食器から目を逸らして、お湯を沸かす。
棚からカップラーメンを取り出した。蓋を開けようとして、手が何度も滑ってなかなか開けることができない。
またため息をつく。
リビングにお湯の沸く音だけが響く。
お湯を沸かしている間に、食器を食洗機の中に入れたらいいのだけれど、ただただお湯の音だけを聞いていた。
お湯が沸いたので、蓋をどうにか開けてお湯を注いだ。
時計の針の音が部屋に響いている。
ラーメンができるまであと一分。
うわーん、と娘の泣く声が聞こえた。ベビーモニターを見ても、娘は泣いていない。
タイマーが鳴った。
椅子に座り、ラーメンの蓋を開けた。
うわーん、とまた鳴き声が聞こえる。今度本当に泣いている。耳を塞ぎたくなった。
助けて。
誰も助けなんか来てくれない。あの子には私はしかいない。
娘が寝ている部屋へ近づくにつれ、泣き声が大きくなる。
部屋に入り、娘を抱きかかえた。
すぐに娘は泣き止み、また眠りへと落ちる。
しばらくして、また娘をベッドに寝せ、リビングへと戻る。
テーブルの上には、冷えて汁を吸ったラーメンがあった。
私はそのまま麺を啜った。目から溢れる涙がラーメンに入った。
これは隠し味だ。
そう心の中でつぶやいて、自分で鼻で笑った。
ベビーモニターを見ながらラーメンを啜る。
娘が、母乳を飲んでいる夢でも見ているのか、口を動かしながら寝ている。
そんな姿に口元が緩む。




